前回、僕がこのコラムで読者の皆様にお話しできそうなこととして、「建築と不動産愛」と書きました。今回はもう少し具体的に、大家さんが不動産愛を具体的なサービスに落とし込み、成果を出している事例を紹介します。
先に結論を言ってしまうと、物件や入居者さんに愛をかけると、クレームが減る代わりに楽しい時間が増えて、お金も儲かりますよ!
■賃貸サイトの構築 SMI:RE不動産=スマイル不動産:不動産愛
僕の会社では、2014年から自分たちで設計したお部屋をブログ形式で案内する不動産サイト【SMI:RE不動産=スマイル不動産】http://smi-re.jp/
を始めました。
このサイトでは土地の段階から建築ができるまでのレポート、入居者インタビューや、設計者/大家さんだからこそわかる地域や街の情報等を記事にして、紹介しています。
サイト経由で入居の問い合わせが来ると、設計担当(ビーフン社員)が自ら案内して、設計の意図や特徴をお伝えし、申し込みをいただければ入居までのサポートと入居後の管理までを行います。
内見の時は、近日予定しているイベントに誘ったり、共通の趣味や仕事の話をしたり、友達を案内する時のような雰囲気になります。物件では、住み始めた後のイメージができるようなトークを心がけています。
スタッフが入居案内を行うだけでなく、入居者さんとは全員、対面面談を行います。鍵を渡すのもスタッフです。そうやって関係を構築(オンライ面談の時もありますが鍵渡しは対面)していきます。
お友達やご近所さん、仕事場の仲間のような気持ちで大家と入居者が向き合う。入居者は「相談できる関係がある」と安心して暮らしていける。そんなお互いにwin winの関係を作っていくためです。
■ブログやHP経由でオーナー自ら入居募集を行っている事例
【SMI:RE不動産】を始めて10年になりますが、最近は新築物件の半分以上がこのサイト経由で契約できるようになりました。やはり、愛情をかけて建物にたずさわることがキーワードだと思います。
サイトが大変ならSNSで情報を発信する方法もあります。他にも、建物の掃除をしたり、入居者さんとコミュニケーションとったり、いろいろ愛情の掛け方があると思います。
今は大家さんが自分で入居者を募集できるサイトも増えました。募集を管理会社に任せっきりにせず、こういったサービスを利用することで、写真や文章などで、大家の愛情を示すことも一案と思います。
〇ECHOES
https://s-echoes.jp/
〇ウチコミ!
https://uchicomi.com/
■大家さんが運営するサイト
大家さんがサイトを通じて、入居者さんを募集したり、コミュニケーションを図ったりしている事例は幾つもあります。僕が参考にさせてもらっているものを幾つか紹介します。
1)Bicyclette SEIJO(ビシクレット成城)
https://ameblo.jp/bicyclettesumida/entry-11421414226.html
2)Récolte cinq(レコルト・サンク)
https://recolte.sub.jp/pg17.html
3)COMFORTABLE(コンフォータブル中島→中原)
http://www.hm-company.jp/
4)ひだまり不動産ブログ
https://u-hidamari-2.seesaa.net/article/502181456.html
どのサイトも、とても丁寧に物件や物件に関する様々な情報を紹介しており、住んでからの生活のイメージが湧きやすくなっています。
大家さんが情報発信をすると、その情報を気に入ってくれた入居者さんが集まってくれます。そういう方は建物を大切に丁寧に使ってくれて、退去の時もきれいに清掃されていることが多いです。
設計者や大家さんは建物の親(建物は子供、子供が育つ)みたいな感覚なので、とても嬉しい気持ちになります。
気持ちの問題だけでなく、昨今の東京ルール(大家さんが修繕をする事が多い)を考えると、良い入居者さんに入っていただくことで健全な経営となり、目に見えない利益を生んでいると思います。
購入時の利回り等、表面的な利益の話をする大家さんが多いですが(投資効果がわかりやすい)、実際は入居後のメンテナンスや原状回復にかかる費用、短期退去による利益損失こそが収支に大きな影響を与えると思います。
大家さんは入居者さんとの交流や、趣味を物件に生かして価値観の合う人に住んでもらうなど、楽しいチーム作りに励んでみると良いと思います。僕の知っている大家さんたちは、不動産を介して、楽しく生きる!を実現しています。
キーワードは「住んでもらいたい人のターゲット」です。良い人に住んでもらい、入居者さんが楽しくすごせる賃貸経営をすると、面倒が楽しさに代わり、お金も残ります!
■なぜ大家から管理会社になったのか?
大家として自主管理をしていた僕は、その延長として賃貸管理会社を始めました。自分の物件だけでなく、設計させていただいた物件等の管理も請け負うようになったのです。
管理会社はクレーム産業だとよく言われますが、僕の管理会社ではSNSでのグループメッセージ運営など、前向きなコミュニティー管理を行うことで、物件に関わる皆が良い関係でいられることを目指しています。
自分の物件だけでなく、オーナーさんの希望があれば、管理物件の入居者さんを対象としたBBQイベントや屋上での隅田川花火イベントなども企画します。
前向きに楽しい(FUN)人間関係を築き、管理していくことはとても有意義(友達づくりのような感覚)です。クレーム対応への時間も減り、結果的にお金が儲かる管理になっていると思います。
僕は2006年〜2010頃、赤井誠さん(僕の恩師、神様)のアパートを設計させてもらったのをきっかけに、大家さんの会や大家さんセミナーで勉強するようになりました。その時の経験が今の私の賃貸経営、設計、管理の原点です。
参照:私が15年間で取り組んできた投資物件のまとめ(1)-今までの経験をシェアします!-(赤井さんが僕の物件について書いてくれているコラム)
入居者さんファーストを心がけると、「クレームでなく相談をうける関係をつくる」ことができるので、電話に出るのが怖くなくなります。
僕は将来は(消す)、勝ち組(愛情いっぱい大家)と負け組(任せっきり大家)に分かれる時代が来ると思っています。5年、10年と手をかけて勝ち組大家さんになり、結果的に儲かる大家さんになりましょう。
■本当に愛が必要か?
愛される物件を作るためのポイントは「共感」です。入居者目線でしっかりとした特徴のある「絶対に住みたい賃貸」を計画し、入居管理していきます。ソフトとハードの両立は必須です。
・経営者、起業したい人をターゲットにした賃貸
・シェアキッチンを使う人しか住めない賃貸
・猫コミュニティー
・SNSで入居コミュニティーをつくる賃貸
・住みながら、小商できる賃貸
・宿泊のコンシェルジュしながら家賃を稼ぐ賃貸
極端な事例かもしれませんが、潜在的にあったらいいな!と思う賃貸をつくりましょう。面白い賃貸に面白い人が入居し、面白いコミュニティーができる。入居者さん同士でも色々な出会いがあり、オモロイ賃貸になります。
物件にこういったコンセプトを持たせると、広さや駅からの距離、賃料などの一般的な基準以外の価値が生まれます。実際、近隣家賃の約1.8倍でも「安い」と言ってもらえている物件もあります。
僕自身も最近は入居者さんと一緒にイベントをしたり、経営者交流飲み会を企画したり、シェアキッチン で晩ご飯をご一緒にしたり、老後の老人ホーム計画の話をしたり、オモシロ入居者は本当に将来のお友達だと実感しています。
不動産、建築愛を利用して老後の友達ができるといいな!!と妄想中です。(もう実現しているかな)
■設計、管理、大家業で50歳から目指す道のはなし
15年前にアパートを設計していた時、デザイナーズマンションが人気でした。その後、色々なデザインの賃貸ができました。最近はデザインが良いのはあたり前です。
その上で、物件にしっかりとしたコンセプトや特徴を持たせる賃貸、つまりソフトをデザインするような物件が増えてきています。(今後は全国的に広がっていく確信あり)
こんな話をすると、「え!それ東京だけやん!」と思う方がいると思います。でも実際は、東京は人が多すぎて、面白い事も分散して、すぐに消費されてしまいます。
■街を愛する仲間を増やしたい47都道府県元気作戦(別名1724プロジェクト)
市町村数 1,718市町村(市 792 町 743 村 183)※北方領土の6村を含めると1,724となる。
ここ数年、全国各地のセミナーやイベントにお邪魔すると、地方でも多くの成功事例が見られます。5年・10年をかけて、その物件の特徴が生きる賃貸経営を行ってくことが、今後ますます注目を集めると思います。
各地方に移住したくなるような賃貸を作り、街全体で時間をかけて価値の創造をしていきましょう。僕はこれを「47都道府県元気作戦!」(別名1724プロジェクト)と勝手に呼んでいます(笑)
こんな思いから、今年は色々な地域でセミナー、イベントをやりたいと思っています。ぜひ声をかけてくださいね!
そして皆様も是非、不動産、建築を介して、楽しい大家さん、楽しい管理、友達づくりのような、入居者さんのための賃貸を作りましょう。それが結果的に、負けない賃貸、儲かる賃貸になるはずです。
私は大家さんになって10年、経営者、ミュージシャン、料理家など、様々な分野のめちゃくちゃ楽しいお友達ができました。
やっぱり、不動産は楽しい!!
今回の教訓:ビジョン、夢が大事!それが結果的に儲かる!