3月ですね。今年の繁忙期は、私の物件全体で40戸くらいの入れ替えがあります。昨年のこの時期は、コロナ禍が明けたためか50戸以上の入れ替えがありました。
今年は昨年に比べれば件数は少ないのですが、それでも大変でした。退去の連絡を受けて、クリーニング、原状回復等の手配をしましたが、入居日に間に合うように調整するのは、かなりストレスのかかる仕事でした。
その他に、前のコラムでも紹介した36戸全空物件の入居があります。36戸全空物件には3月中に32人の学生さんが引っ越してきます。学生さんの引っ越し日は3月下旬の2~3日間に集中しそうです。
1日平均で10人以上の学生さんが引っ越して来る事になるので、階段が1ヶ所しかない36戸全空物件は大混乱になるでしょう。
話は変わりますが、不動産投資家さんの中には、金融機関さんから大きな借り入れがある方もいると思います。私も、億単位の借り入れがあります。
普通の人に億単位の借り入れがあるなんて話をしたら、“終わった人”だと思われますよね。そんな大きな借り入れがある私が、昨年、妻に自宅を贈与しました。その経緯について紹介させていただきます。
■妻に自宅を贈与しようと考えた
私の自宅は、25年以上前に私と妻が土地から購入して、こだわりを持って建てた家でした。夏涼しく冬温かい家にしたかったので、高気密高断熱、24時間換気、全館冷暖房、ペアーガラスの樹脂サッシ等を入れました。
こだわり満載の家です。今では当たり前のことですが、25年前は全く当たり前ではありませんでした。そのため、こちらのリクエストに応じてくれるハウスメーカーや建築会社を見つけられませんでした。
ハウスメーカーや建築会に相談に行くと、応対してくれた社員さんから「わけの分からない事を言っていないで、サッサと帰ってくれ!」という心の声が聞こえてきました。そんな中で、希望を満たしてくれる建設会社が見つかり、自宅を建てることができました。
当時は、かなり背伸びをして住宅ローンを組みました。平成初期は、だれもが給料は毎年確実に上がるものと信じて疑わなかったのです。背伸びをしたローンを組んでも、苦しいのは初めの頃だけで、給料が上がればローンの返済も楽になり、生活にも余裕ができると信じられていました。
しかし、デフレスパイラルの日本になり、給料が上がらない時期が始まり、さらに給料が下がる時期に突入し、かなり苦しい思いをしました。それでも、繰り上げ返済を繰り返して令和4年末に住宅ローンを完済しました。
そして、住宅ローンを完済したタイミングで自宅を妻に贈与しようと考えました。
自宅を贈与する目的は、私の不動産投資に何かあっても妻と家族に自宅を残すためです。不動産投資が上手くいかなくなった時に、自宅が任売や競売になるのは、妻や家族には大変申し訳ない事になります。
私は、毎月税理士事務所に打ち合わせに行っていますが、以前、税理士さんが、「結婚して20年過ぎると、配偶者に自宅を贈与しても税金がかからない」と言っていたのを覚えていたことも、後押しになりました。
■司法書士さんの反応
国税庁のページで調べてみると、なんとなく贈与税の控除の要件を満たしているようでした。妻に自宅の贈与の話をすると、とても乗り気でした。それだけ、妻にとっては私の不動産投資が不安だったようです。
でも、知り合いが配偶者に自宅を贈与したという事は聞いた事がありません。「本当に贈与税がからないのだろうか?」という気持ちもあり、とりあえず司法書士さんに相談することにしました。
25年以上前に自宅の登記でお世話になり、現在は収益物件の登記でお世話になっている司法書士さんです。司法書士さんから最初に出てきた言葉は、「本当にやるんですか?」と、いうものでした。
司法書士さんは、明らかにこの贈与の話を思い留まらせようとしていました。詳しく説明を聞くと、無税なのは贈与税だけで、不動産取得税と登録免許税は、普通にかかるという事です。
さらに司法書士費用も必要で、妻への自宅の贈与にかかる費用は、総額で40万円くらいという話でした。不動産取得税、登録免許税、司法書士費用という言葉は、収益物件の購入ではよく聞く言葉ですが、自宅となると全く頭から抜けていました。
司法書士さんは、再確認するように、「本当に贈与税の免除のためだけに40万円もかけるんですか?普通はやりませんよ」と、真顔で聞いてきました。
■それでも自宅を妻に贈与
それでも私は、「贈与します」と答えて、司法書士さんに手続きをお願いしました。妻に自宅を贈与することは40万円以上の価値があると考えたからです。
こんな時は、色々考えると迷いが出るのでサラッと言い切ってしまう事が大事だと思います。収益物件を買う時に、多少の迷いがあっても、サラッと「買います」と言い切ってしまうとスッキリするのと同じです。(多分)
登記が終わり、自宅を妻に贈与しました。費用は結局、30万円くらいですみました。私は、「これで、私の不動産投資に何かあっても、妻と家族には家がある」と思うと、本当に気が楽になりました。
気楽になった私が、「もうオレの家じゃないから、火災保険も固定資産税も払わねぇよ」と妻に言うと、「私(妻)の家に住んでるんだから家賃払え!敷金礼金も払え!」と、言われました(笑)。結局、火災保険も固定資産税も私が払う事にしました。
■贈与税の配偶者控除の申請
贈与税の控除は申請しないと控除になりません。年が明けた令和6年1月に、妻が税務署で贈与税の控除申請を行いました。妻は仕事の関係で、このあたりは詳しいようでした。私は、妻の足手まといにならないように家にいました。
申請が終わった後に、妻に贈与税の金額を聞くと70万円くらいという事でした。贈与にかかる費用30万円を払っていない妻は、「70万円の節約ができた」ととても満足した様子でした。
これで、贈与税の控除を受けた妻(配偶者)への自宅の贈与は終わりました。
■節税効果でみれば贈与より相続に軍配が上がる
おかげ様でここまで、不動産投資では大きな失敗もなく続けてくることができました。しかし、この先もずっとそれが続きとは限りません。私はもしもの時に妻と家族に迷惑をかけないという事を主な目的として、今回妻に自宅を贈与しました。
その際、“夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除”という制度を使って、贈与税の控除を受けることもできました。
ちなみに、節税が主な目的であれば、贈与より相続の方が節税効果は大きいようです。(相続が発生するのは、配偶者のどちらか一方が亡くなった時になります)。
・登録免許税は贈与では2%ですが、相続では0.4%
・非課税枠は贈与では2,000万円ですが、相続では1億6,000万円
※実際の活用に当たっては専門家に確認してください
以下は国税庁のHPにある“夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除”に関する部分です。
対象税目:贈与税
概要:婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。
特例の適用を受けるための要件
(1)夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと。
(2)配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産であることまたは居住用不動産を取得するための金銭であること。
(3)贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること。
(注1)「居住用不動産」とは、専ら居住の用に供する土地もしくは土地の上に存する権利または家屋で国内にあるものをいいます。
(注2)配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。
私と同じような考えの方がどのくらいいるかわかりませんが、参考になれば幸いです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。