今回の大家対談は、神奈川を拠点に首都圏で不動産活動をされている、赤井誠さんとマッツンさんに登場していただきます。マッツンさんは、たまたま手にした雑誌に載っていた、赤井誠さんの記事を目にしたことがきっかけで、不動産投資を始めたそうです。全4回でお届けします。
■ 人生の転機はビッグ&トゥモローの記事
マッツンさん
よろしくお願いします。赤井さんとはこれまで何度もお会いして、物件も見せていただきました。その節はありがとうございました。
横浜での物件内覧会後の打ち上げ、奥が赤井さん、手前はルイさん( マッツンさんは顔出しNG )
赤井さん
そうだったね。マッツンは不動産を始めて何年になるの?
マッツンさん
もう10年以上です。東日本大震災の年に過労が原因で2週間入院したのをきっかけに、「 現状を変えなければ 」と不動産投資を始めました。自分が働けなくなっても会社は何もしてくれないと、入院中に気づいたんです。
病院の近くのセブンイレブンにあった「 ビッグ&トゥモロー 」という雑誌を立ち読みしたら、その中に赤井さんの記事があり、衝撃を受けて自分もやりたいと思いました。不動産の道に入るきっかけをくださった赤井さんと今回、対談ができるご縁に感謝しています。
赤井さん
そんなことがあったんだ。俺の不動産投資のきっかけも「 ビッグ&トゥモロー 」だったから、偶然だね~。マッツンの現状の家賃年収やキャッシュフローはどれくらい?
マッツンさん
家賃年収は約2,500万円です。返済は毎月85万円で、家賃から返済を引いたキャッシュフローは月に約120万円あります。借入残債は1.3億円です。最近物件をいくつか売却したおかげで、金融資産は約4,000万円になりました。
これまでに24物件を購入し、7物件売却したので、現状は17物件を所有しています。内訳は、戸建が15戸、アパートが2棟です。数は少ないですが、戸建の平均賃料が10万円なので、家賃は15戸で150万円、アパートは2棟で50万円という感じです。
赤井さん
首都圏で戸建を買っているから、家賃が高く取れていいね。戸建はローンを使って購入しているの?
マッツンさん
現金とローンの両建てで購入しています。新築戸建てが3物件あり、その借金が5,000万円。残りの残債8,000万円の内、アパートが2棟で3,000万円、残りが中古戸建で5,000万円です。
赤井さん
年間2,500万円の家賃が入って、1,020万円返済しているなら、税金や経費を支払っても年間1,000万円くらい手元に残るイメージかな?だとすると、そんなに悪い数字ではないね。
給料以外で年間1,000万円あるのは、通常のサラリーマンからしたら多いよね。僕がサラリーマンの時はもっともらっていたけどさ(笑)。ただ、収入が家賃収入だけになったら贅沢な暮らしはできないだろうね。
■ 土地値以下の物件を首都圏で買えば安全
マッツンさん
やはり、家賃収入だけで手残り1,000万円だと十分とは言えないと思いますか。
赤井さん
独身なら1,000万円あれば十分だろうけど、マッツンのように神奈川在住で奥さんと子どもがいるとなると、正直、長期的に生活を安定的にするのは難しいんじゃないかな。うちは子供が私立の中高に行っていたので、学費だけでも相当かかったよ。マッツンはどれくらいの規模を目指したいの?そこをハッキリさせていかないと、戦略も決まらないし、将来は見通せないよ。
マッツンさん
規模拡大を目指すのであれば、赤井さんがいつも仰るように大きくレバレッジをかけて買い進めるのがいいと思いますが、私にはまだそこまでのビジョンがありません。
赤井さんは、年々利回りが低下していく中でも横浜や川崎で新築のアパートを利回り7%台で建てられていますよね。私のような零細大家が同じことをしようと頭金に2~3割入れた場合、キャッシュロックして資金効率が悪いのかなと思ってしまいます。
都心部の戸建であれば、常に実需のニーズがありますし、売りやすいと思います。それを考えると、私は新築アパートを建てるよりも、現金やローンで買える戸建を取得し、ある程度経ったら売却するやり方が向いているのかもと思います。
赤井さん
なるほどね。マッツンのように横浜で戸建を買って、借金を土地値以下にしておけば評価割れはない。だから、今の感じで横浜に戸建を買い進めるのは一つの勝ちパターンだと思うよ。悪いやり方ではない。
地方と都市部の大きな違いは、都市部は土地値が高いのに対して、地方の戸建は土地値がほぼゼロなこと。地方でどんどん戸建を買っていると、銀行から見たときに借金ばかりで資産がない状態になってしまう。
マッツンさん
土地値は意識しています。
赤井さん
土地に価値があるところって一言でいえば、その地域の中心部だよね。全国的に人が減る中で、今後は都会も地方もコンパクトシティ化が進められていく。大きな病院も学校も中心部以外では減っていく。
学校がなければ子育て世代の働き手がいなくなり町が廃れていくし、私のように齢をとってくると最終的に命が一番大事と思うので病院がないところに好んで住む人はいないよね。
極端な話、仮に5億円の借金があっても、土地値が5億円以上あれば負けはない。でも、地方はそれが0に近くなってしまう。建物を壊すお金も安くないから、地方の築古のRCマンションなんかはババ抜きになると思うよ。
あと、まだやっていなければ、所有物件一覧を作成した方がいいね。路線価と実勢価格の表もあるといい。場所にもよるけど、マッツンのエリアだと、路線価の倍くらいが実勢価格という感じじゃないかな。自分の資産の現状を把握しないと、次の手も打てないよ。
■ 人、モノ、金は中心に集まる
マッツンさん
僕は相鉄線がけっこう好きなんです。前に赤井さんがどこかで相鉄線のことを「これから伸びてくる地域だ」と仰っていて、赤井さんがやっとそのポテンシャルに気付いてくれたのかと嬉しかったです(笑)。
赤井さん
昔は相鉄線なんて田舎だったけど、今は東京に繋がっていて、インフラが整備されている。これは、東京圏に住む場所が少なくなってきているとも言えるよね。
マッツンさん
はい。相鉄線も東京圏への乗り入れが進んで、非常に便利になりました。
赤井さん
僕の今住んでいるところは僕が購入してからものすごく値上がりしてしまって、一軒家だと1億円以上が普通で、普通のサラリーマンが住めなくなっている。相鉄線あたりも前は2,980万円で買える戸建があったのに、今は3,980万円でしょう。JRとの乗り入れが完了したら4,980万円になるイメージだね。
そうなると、更に東京から遠い場所に住むしかなくなる。あといえるのは、鉄道網の開発は、そこに住む人がいるからこそできる投資だよね。
マッツンさん
確かにそうですね。
赤井さん
人が減っている地方ではJRがどんどん廃線になっているよ。古い話だけどその昔に愛国駅・幸福駅として流行った襟裳-帯広間は今は線路の跡地しかない。日本も今は高度成長期とは違って予算もないし、地方のインフラ維持にお金をかけられないんだよね。
反対に、北海道でも札幌駅周辺に新築中のタワーマンションは、一番高い部屋で5億円はするらしい。札幌で1億円を超えるマンションだなんて、とんでもないと思うけど、買う人はいるからね。お金も人も、そうやって集まるところに集まってくるんだよ。
マッツンさん
勉強になります。ただ、せっかく都心部でも私のような戸建投資では拡大の規模が遅いですよね。
赤井さん
そういうこと。1,000万円の物件を買っても、100個買わないと10億円にはならない。数が増えれば増えるだけ大変になるのがマッツンの投資方法だよね。僕も戸建投資を経験したけど、10万円の家賃を取るために費やした労力は100万円の賃料が入ってくるアパートと変わらなかったよ。
まあ、目指す規模感がキャッシュフロー2,000万円なら今のまま地道にやっていけばいいんじゃない? インカムに対する借金の額もそんなに大きくはないし、利回りでみても手堅くやっていていいと思うよ。
マッツンさんが土地値以下で購入した横浜戸建て
マッツンさんが建てた横浜の新築戸建て、利回りは10%以上
編集後記
マッツンさんは過労が原因で入院し、その時にたまたま手にした雑誌がきっかけで、人生を好転させようと決意したそうです。人生の大先輩に、マッツンさんはどの様なことを伺うのでしょうか、次回以降もお楽しみください。(取材担当:アリ)