不動産競売市場は2022年も縮小傾向で終わりそうだ。
新型コロナウイルス感染拡大による政府支援策により不動産を手放さずに済んだことに伴い不良債権化する物件が大幅に減っているためだ。本来ならば倒産してもおかしくない会社がゾンビ企業として生き残っている。競売市場をシュリンクさせている大きな要因でもある。
全国の不動産競売申し立て件数は、2019年まで2万件台で推移していたが、2020年に1万7705件に落ち込んだ。これは緊急事態宣言で裁判所が競売申し立ての受け付けを約4カ月間休んでいたことが影響している。
2021年は1万9318件まで回復しているが、不動産競売流通協会によると、2022年は1万5000件台まで落ち込むと見込んでいる。
東京地裁本庁の状況をみると、2021年の差し押さえ件数は1159件となり、2020年が1120件だった。2022年は上半期(1~6月)までに532件となっており、単純に残り半年間の件数を倍にすると1064件である。過去2年間をさらに下回る水準が想定される。
東京23区の競売物件は30本以上の応札数
しかし、そのような中でも今年の競売市場の開札結果では、物件の高騰が続いている。上半期ベースでの落札率は99.45%とほぼ完売状態になっている。
物件タイプではマンションの人気が高い。例えば、売却基準価格1164万円のマンションが買い取り再販事業者により3340万円で落札されている。
競売市場に詳しいワイズ不動産投資顧問(東京都千代田区)によると、2022年の上半期で入札数が10本以上の人気物件は、すべて東京23区内に所在している不動産だ。マンション、土地付き建物、土地、借地権等があり、全225物件となっている。このうち159件がマンションで占めている。
これら入札10本以上の人気物件は東京23区に集中しており、最も物件数が多いのは足立区の37件、次いで台東区(19件)、墨田区(17件)、葛飾区(16件)、豊島区(14件)、練馬区(12件)、大田区・江東区(共に11件)、江戸川区(10件)などと続いている。
港区六本木のマンションには53本の応札があり、入札数で最多である。北千住駅に近い足立区内の土地付き建物は48本と都心部に負けない人気を集めた。
このほか練馬区内の土地付き建物で43本、板橋区内のマンションで41本、錦糸町駅に近い墨田区内のマンションで38本、赤坂駅に近い港区内の土地で37本などがある。競売で落としてから再販で利益が見込めるエリアでは軒並み30本以上の応札があるのが特徴だ。
開札結果は流通市場を上回る水準
こうしたエリアの物件は、中古住宅マーケットでの流通価格よりも高額で落札されるケースもみられるが、それでも再販事業者が積極的に競売市場に参入している背景には再販利益が見込めると踏んでいるからだ。
東京カンテイの調査では、東京都心部のマンション価格の平均が1億円を超えている。この強気相場がいつまで続くのか。誰がババを引くのか。競売市場では心理戦の様相を呈し始めている。
ちなみに前出の不動産流通競売協会によると、個人の落札割合は首都圏(1都3県)では12%となり、全国ベースで2割強である。
景気悪化・利上げ共存で不良債権が増えていく
2023年の競売市場については、これまでの縮小傾向から一転、増加に向かうとの見方が多くなっている。住宅ローンの条件変更に応じてもらえずにローンを返済できず手放すケースが増えたり、コロナ救済策が終わり、ゼロゼロ融資(実質無担保・無利子融資)の返済も本格化する。
住宅ローンの固定金利も上がっている。日銀・黒田総裁が12月の金融政策決定会合で利上げに金融政策を修正し始めたことで2023年は金融市場が大きく変わる可能性が取沙汰されている。
景気の悪化と利上げというスタグフレーションの状況に陥れば不良債権化した不動産が増える可能性が高まってきそうだ。
健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))