フェンスに囲まれていた無人の団地が
DIY好きに人気のリノベ団地に変身
建物の老朽化や入居者の高齢化など、さまざまな問題を抱えていた住宅団地が再生され「リノベ団地」として人気を集める事例が全国で増えている。無印良品やIKEAなどとのコラボ団地も登場し、話題を集めた。
古くに建てられた都心の住宅団地は、敷地の広さや眺望のよさが魅力だ。足立区東綾瀬にある「いろどりの杜」は、もともと1964年にURが建てた団地だった。株式会社フージャースアセットマネジメントがリノベーションプランを企画し、それが採択されて2020年に再出発している。
標準的な家族構成や価値観が変わる中で、URの住棟改修ノウハウとデベロッパーの企画、管理、運営ノウハウを連携させた新たな取り組みを行い、団地の持つポテンシャルを活かしながら、より魅力的なストック再生を目指したプロジェクトである。
再生する前の建物は老朽化し、フェンスで囲まれている状態で、誰も住んでいなかった。再生にあたりフェンスを取り払い、小学生の通学路などで使われる道を敷地内に設けたりして、開放感のある団地として蘇らせた。
既存住棟は修繕や中層EV設置等URの改修ノウハウを活用しつつ、フージャースの事業計画と連携しデザイン。専有部は水回り等フルリノベーションを行い、そのままでも居住できるが、DIYを行いやすい仕上げとなっている。
URと株式会社フージャースアセットマネジメントが団地一棟をリノベーションしたのは、今回が初めての試みだったという。
リノベ団地のコンセプトは「作る暮らしを、育てる団地」。同社に許可を取れば、入居者が自由にDIYができるという大きな特徴がある。
団地の敷地内にはDIYスペースがあり、大工道具も揃っている。また、DIYのアドバイスをくれる大工さんもこの団地に住んでいる。
入居者のDIYによって利便性が向上し
退去後の家賃が上がることも
実際に空き部屋を見学すると、前入居者のDIYがそのまま残っていた。自分の好みの色に部屋を塗装できるため、サイケデリックな部屋もあるという。この団地の入居者は一人暮らしが大半で、二人暮らしをしている部屋もある。
家賃は2DKタイプと1DKタイプが、賃料8万円~9万円台で管理費1万円となっている。占有面積はどちらも37.35㎡。1Kタイプは、賃料5万円~6万円台で管理費1万円、占有面積は21.42㎡~26.89㎡である。家賃は綾瀬エリアの相場より高い。空室は滅多に出ず、出てもすぐに埋まる。口コミや紹介で決まることもある。
ベランダのスペースが広いのも団地ならではだろう。テーブルとイスをおいてくつろいでいる入居者もいる。便利なベランダ収納もついている。ちなみに、このベランダ収納に、DIYで扉がつけられている部屋もあった。
次に住む人にとって便利な収納が追加されたりすると、その部屋が空いた時に、前回の募集時よりも高い家賃で決まることもあるという。DIYのレベルにもよるが、入居者によってバリューアップされるのはDIY可物件のおもしろさかもしれない。
団地の住民が定期的にイベントを開催
見学ツアーには都外からの参加者も
広い敷地を利用した家庭菜園やイベントなども団地ならではだろう。取材したこの日は「団地タイム」というイベントを開催していた。いろどりの杜をめぐるツアーには、都外からの参加者もいた。
イベント当日にいろどりの杜のイメージソング「Love the Danchi Life」もリリースされた。ミュージックビデオには、いろどりの杜の住民が出演。撮影、編集なども住民主体で行っているそうだ。団地での住民の暮らしぶりがわかる。
このような定期的な交流があるので、団地に住む人たちは顔見知りが多いのだという。
株式会社フージャースアセットメントの?村さんは「隣に誰が住んで いるか知らないということはなくなり、お住いの方々の顔はある程度把握されているようです。そのため『オートロックよりも安?感がある』とおっしゃる?もいます。電球を取り替えるときにお隣さんに助けてもらうとか、まるで昔の団地の?づきあいが再現されて いるようです」と話す。
同社では「いろどりの杜」の成功に続く、第二、第三のリノベ団地の候補地を探しているところだという。
リノベ団地に限らず、入居者によるDIYが可能な物件は、数が少ないだけに人気が集まりそうだ。
建築基準法などの各種法律に則ることを大前提として、入居付けが難しい物件などで「DIY可」にしてみるのもありかもしれない。
健美家編集部(協力:
(とやまたけし))