
JR京浜東北線、東急池上線・同多摩川線が乗り入れる大田区の蒲田駅から歩いて6分。アーケードを抜けてすぐのところに築28年の社員寮を改装した賃貸住宅が誕生した。単にコンバージョンしただけでなく、2階にパーソナルジム、サウナが入っている点がこれまでにないところ。どんな仕組みになっているのか、見ていこう。
働く、食べる、整うなど多機能を備えた賃貸住宅
建物は通り沿いに建つ11階建て、築28年の元社員寮。退去後をどうするか、相談されたのがシェアハウスなどを多く手掛ける株式会社リビタである。
同社はコロナ禍での入居者のニーズの変化に対応、水回りを自室内に設けた新しいシェアハウスのブランドを展開しており、同物件は改修を経て多機能交流型賃貸住宅「Well-Blend蒲田」として再生されることになった。
同ブランドの特徴は住宅の中に住む以外の機能を盛り込んだこと。第一弾物件「Well-Blend阿佐ヶ谷」では働く、食べる、整えるなど生活を豊かにする機能が盛り込まれた。最近では働く場を設ける物件は多いが、食事の提供、共用部にサウナのある物件は珍しい(現在は食事の提供、サウナの運用は休止中)。
2階にサブスク型のパーソナルジム、サウナ

第二弾となる蒲田では2階ワンフロアに店舗としてRILISIST株式会社が手掛けるパーソナルジム「KARADA BESTA」、サウナ「SAUNA BESTA」が入った。阿佐ヶ谷でのサウナは入居者向けの有料の共用施設だったが、ここでは入居者向けに割引はあるものの、純然たる店舗である。

さらに面白いのはどちらもサブスク型の店舗であるという点。パーソナルトレーニングは月額定額で通い放題となっており、予約に空きがあれば毎日でも通える。1セッションは60分でパーソナルトレーニング30分とセルフトレーニング、セルフエステ、ミラーフィットのいずれかを利用する形。

サウナは初の試みとのことで、こちらは予約不要で通い放題。入居者には通常価格より安く、また、入居申し込みと同時に加入するとさらに安くなることになっている。
今回運営にあたるRILISISTは全国で直営17店舗、フランチャイズ1店舗のサブスク制パーソナルジムを展開しており、過去には他社企業と組んで世田谷区駒沢大学にあるマンションに出店、そこでは事前募集時点で総部屋数の80%が入居確定していたとか。
身体を動かしたいとスポーツクラブ、ジムに入会してはみたものの、なかなか続かないという悩みを抱える人は多い。それが同じ建物内にあれば習慣化しやすくなる。サウナも気軽に通えるとなれば、人気を集めそうで、実際、プレス内覧会の前に行われた入居希望者向けの内覧会ではすでに申込も入っているそうだ。
ちなみにパーソナルトレーニング店として入るKARADA BESTAの月の稼働率は92.2%、平均利用回数は1人月10回、平均会員数は1店舗あたり70.6人、会員の男女比では女性が76%を占めている。
「Well-Blend蒲田」の総戸数は46戸。当然、地域の人達の利用が多く見込まれるが、逆にこれだけの人数の利用が見込まれるなら、物件のアピールポイントとしてのパーソナルトレーニングやサウナの導入はあり得るとも考えられる。これからの差別化の手として覚えておいても良いかもしれない。
3階にはラウンジ、キッチン

続いて物件を見ていこう。店舗の入る2階のすぐ上階、3階は共用部となっている。元々は社員食堂があった場所だそうで、それを2つの空間に分けている。

半分はオープンラウンジとなっており、階下の店舗利用者も使える空間。中央に変形のTの字のような造作家具があり、それによって空間はベンチ席、小上がり、ソファ席、ハイカウンター席と4つに分かれている。利用者はその時の気分、やる作業などに合わせて好きな場所を使える。随所にコンセントが用意されているので、パソコン作業ももちろん可能だ。

残りの半分は入居者専用のコモンキッチン。オープンラウンジ同様のデザインのテーブルが用意されており、キッチン、シンクは3か所。家電や食器類も豊富に用意されているので料理好きなら楽しい空間だろう。家電は人気ブランドの品が用意されており、このあたりも受けるポイントのひとつと聞いた。

シェアハウスでは家電、食器類をオーナーサイドがある程度用意するものだが、個人経営のシェアハウスではそのあたりの配慮はあまり見受けられない。とりあえず、置いておけばよいではなく、何を置くかも大事な時代というわけである。
住戸内に水回りのあるワンルーム

住戸は内装、設備は更新したものの、間取りその他は寮時代そのままで利用している。最上階の11階に38.88uと広い部屋が2室ある以外はすべて19.44uのワンルーム。室内には洗面所、トイレ、風呂、洗濯機置き場が用意されている。調理は共用部のコモンキッチンを利用することになるが、洗面所が広いのでお湯を沸かす、電子レンジで何かを温める程度はできそうだ。

住戸フロアは至ってシンプルにできているが、これは同シリーズ共通。生活を豊かにしてくれる共用部に力を入れ、住戸はシンプルで住む人の好みでいかようにもなるというところだろう。

賃料は9万1000円〜10万2000円(最上階の広い部屋は17〜17万3000円。税込、共益費別)、水道光熱費が1万5000円(税込、インターネット料金込み)となっている。
また、2022年3月にはもう1件、板橋大山でも同シリーズの物件が誕生しており、反響の高さが伺える。
近年、蒲田に物件増。その理由は?

ところで、昨年秋から現在にかけ、蒲田での単身者向け賃貸住宅の内覧会が相次いだ。なぜ、蒲田か。リビタのプレスリリースによると大田区は都内でも単身世帯率が53.6%と単身世帯率が高いそうで、大田区内では蒲田エリアは特に単身者が多いという。

複数路線が利用できる上に、東京駅、品川駅や羽田空港へのアクセスが良いことから、蒲田にはビジネスホテルが多いが、そこに住宅があれば人気が出るのは必定。住むという点で考えれば商店街、飲食店街が充実しており、黒湯で知られる温泉も多い土地柄である。
さらに地元では蒲田駅と京急蒲田駅を繋ぐ蒲蒲線事業化への気運も盛り上がりを見せているとか。これまで風俗店、飲食店のイメージから女性受けがいまひとつの印象があったが、最近はそうしたイメージを気にしない人達も増えている。今後も変化が続くのではあるまいか、期待したいところだ。