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【孤独死】タイムリミットは72時間。発見が遅れると建物構造からリフォームが必要? 大家のダメージを軽減するには

不動産投資全般/社会問題・情勢 ニュース

2022/08/29 配信

先般、「高齢者を入居させない? 入居してもらう?」というテーマの記事の中で、賃貸オーナーが高齢者に住まいを貸すことをためらう理由の一つとして、孤独死のリスクを挙げた。

高齢者だけの問題ではない「孤独死」
高齢者だけの問題ではない「孤独死」

■孤独死の現状

しかし、孤独死は高齢者だけに起こることではない。実際、一般社団法人日本少額短期保険協会の統計によると、孤独死の死亡時平均年齢は男女ともに61歳。65歳未満の割合は52%となっている。

男女別孤独死人数と死亡時の平均年齢 日本少額短期保険協会データより
男女別孤独死人数と死亡時の平均年齢 日本少額短期保険協会データより

特に新型コロナウイルスがまん延し始めてからは、どの世代においても外出することが減り、人と会い、つながりをもつことが減っている。これによって、うつなどの精神疾患を患ってしまったり、ADL(Activities of Daily Living 日常生活動作)の低下によって、孤独死に至る可能性が高い人の母数が大幅に増えているのだ。

入居者を比較的若い世代に絞ったとしても、賃貸オーナーにとって入居者が孤独死するかもしれないという可能性は、想定しておかなければならない問題。そのため「孤独死によって物件にどんなダメージがあるか?」「ダメージを最小限にするためには?」を知っておくことが不可欠だといえる。

■死亡から発見までのタイムリミットは72時間

人は誰でもいつかは亡くなる。それが、自分の部屋に一人で居るときだったからといって、何も悪いことではない。自然死や不慮の事故死は誰にでも起こりうるし、むしろ「畳の上で死にたい」という言葉を体現した、どちらかというとしあわせな状況であるはず。

もちろん、過去に人が亡くなった部屋を怖いと感じたり、不快だと思う人もいるだろう。だからこそ、死亡理由やその後の状態によって、次の賃借人に事故物件として告知が義務づけられているケースがある。

そのうちの一つが、「発見が遅れた孤独死」によって特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合だ。国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死に関するガイドライン」では、概ね3年間告知する義務があるとされている。

一人きりのときに亡くなった人が発見されず、放置されたとき、どういう状態になってしまうのか…。「臭いがすごいらしい」などの漠然としたイメージではなく、具体的に理解している人はどれくらいいるだろうか。筆者自身は、特殊清掃を取材するまでほとんど知らずにいた。

関西・関東で遺品整理や特殊清掃を数多く手掛けるメモリーズ(株)代表取締役の横尾将臣さんにお話を聞くと、「お亡くなりになってから発見までのリミットは、おおよそ72時間。それを過ぎると、ご遺体の腐敗が進み、遺品の撤去だけでは済まなくなります。お顔を見て、人としての尊厳を大切にしたお見送りをすることもできなくなります」と語る。

■発見が遅れたとき、物件への影響は?

人が亡くなると、1時間程度で体内の細菌が増殖し始め、内臓を溶かしていく。その後細菌が遺体の分解を進める過程で腐敗ガスが増え、皮膚が裂けて体液や血液、脂が漏出して臭いとともに内装材や建材に染み込んでしまうことが、建物にとって大きなダメージとなるのだ。

体液などが染み込んだ内装材は取り除く必要があり、清掃、除菌、消臭といった特殊な作業が必要となる。畳やクッションフロアの入れ替えなど比較的軽微な対応で済めば、まだいい方だ。

しかし発見までの期間などによっては、畳の繊維の隙間やフローリングの目地から床板・柱・襖の敷居・壁の下地の石膏ボード、浴室の場合は配管にまで染み込んでしまうこともあるのだそう。

そうなると、床板や壁を剥がし、問題の個所をすべて取り替えるしかない。特に木や石膏ボードといった素材には臭いが染み込みやすく、表面的な洗浄や消臭では除去しきれないからだ。

また、強烈な臭いに引き寄せられて害虫が集まり、増えてしまうことも大きな問題。現場だけでなく近隣の住戸にも侵入することがあるため、細かな部分にまで薬剤を使って駆除する必要がある。生き残った幼虫によって再び被害が出ないように、何度か駆除を行わなくてはならないケースもある。

■現状回復するためにかかる費用 

この対応にかかる費用は、作業内容や業者によってさまざまだが、臭いがまったく気にならないレベルにまでするためにはそれなりに大きな額となる。

年間約150件もの特殊清掃を手掛けているメモリーズ(株)の料金表を参照すると…

メモリーズ(株)の費用例
メモリーズ(株)の費用例

国土交通省の「住生活基本計画における住居面積水準」によると、健康で文化的な住生活を送るために必要不可欠な面積は、単身者世帯で25㎡。

それだけの面積の特殊清掃を依頼すれば…? 加えて構造に手を入れ、床や壁の張り直しといったリフォームまで必要となれば…? 亡くなった人の相続人すべてが相続を放棄してしまえば、これはオーナーが負担するしかないのだ。

※特殊清掃の料金は、現場の状態、間取り・広さ、除菌・消臭のレベルなどにより各事業社が独自に設定している。依頼する場合は、作業内容などを確認し、詳細な見積もりを出してもらうことが重要

■ダメージの大きな孤独死にしないために

住まいを貸す側、借りる側の双方がしあわせであるために必要なことは、人と人としてお互いがつながりをもっておくこと。貸す側の賃貸オーナー・管理会社としては、ソフト面とハード面での見守りを心がけることが一番大切なこととなる。

ソフト面では、郵便物が溜まっていないか、同じ洗濯物が干しっ放しになっていないか、いつものルーティーンで外出しているかどうか気を配るだけでもいい。

ハード面については、孤独死の現場を数多く見てきた横尾さんに聞いてみた。

「見守りサービスは、高度なシステムもたくさん出てきていますし、進化していると思います。でもどれだけ高性能でも『何かあったらこのボタンを押す』など、本人が何らかの行為をしなければならないシステムはうまくいかない傾向。私が見た中では、オンオフの頻度を感知して異常を知らせてくれる電球などが、安価でありながら悲惨な現場となることを防いでくれたことが多かったです」(横尾さん)。

近年は、孤独死の問題が少しずつ注目されるようになってきた。上記のような見守りサービスの利用も徐々に増え、亡くなってしまった後の「特殊清掃」ではなく、住環境を改善したり施設に転居するための「福祉整理」となるケースも増えてきているという。

「孤独死の後が凄惨な場となるのは、ある意味生きている人間の責任なんですよね。早く異常に気付くことができれば、病院やしかるべき施設に入ってケアを受けることもできますし、孤独な死を迎えてオーナーさんに迷惑をかけることもなくなります。何よりも、早く気づくことが大切だと思います」

このように、孤独死とその後の現場を数多く見てきた横尾さん。原状回復のための技術開発を進めてきたが、現在では建材メーカーと協力しながら何かあったときの物件のダメージを軽減する新素材の開発にも力を入れているそう。

亡くなった方の体液などが構造にまで染み込まないように、しっかりとコーティングすることができる素材なのだという。

一般的に採用することができるようになるのはもう少し先になりそうだが、物件のリフォーム時に採用すれば、賃貸オーナーにとっては新たな入居者を迎えるにあたっての安心につながるだろう。

■まとめ

人が1人で亡くなることが孤独死ではなく、1人で亡くなったことに気づかれないことが孤独死であり、賃貸オーナー・管理会社が頭を痛める「事故物件」につながる。

損得で語りたいテーマではないが、孤独死の末に事故物件となった場合どれだけ負担が大きいかは、イメージできたことと思う。

オーナー自身の心理的負担の軽減と円滑な賃貸経営のためはもちろんのこと、入居していた人の尊厳を守りながら見送るためにも、「人と人がつながって見守り合うこと」が何よりも重要だ。

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協力/メモリーズ(株)

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取材・文/赤石牧子

■主な経歴

住宅系出版社3社で編集業務に携わった後、フリーのライターとして活動。得意ジャンルは不動産。これまで取材した不動産は3000件近く。転勤族の夫とともに地方都市を渡り歩く中で、地域ごとに異なる街の在り方、住まいの特性を見聞きするのもライフワークの一つに。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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