新型コロナウイルスが昨年5月に感染症法上で5類に移行して以降、インバウンド需要が日本経済におよぼす影響に期待が集まっている。
国土交通省が1月17日に発表した「訪日外国人消費動向調査」によれば、訪日客が旅行での消費額が2023年暦年で5兆2923億円(速報値)と過去最高を記録した。コロナ前の2019年比で9.9%の増加だ。5月以降の〝開国再開〟で過去最高を記録したことを考えれば、今年は12カ月フルカウントすると、2023年を大幅に上回ることは必至だ。
訪日客急増も、民泊復活の兆し見られず
国籍・地域別に旅行消費額を見ると、台湾、中国、韓国、米国、香港の順番で上位5カ国・地域を占める。1人当たりの旅行支出額は21万2000円(同33.8%増)と推計しており、最も高いのがスペインで34万2000円、次いで豪州の34万1000円、イタリアの33万6000円がトップ3となった。
訪日客が日本で落としたお金を費用別見ると、宿泊費が1兆8289億円(34.6%)と最も多く、次いで買い物代の1兆3984億円(26.4%)飲食費の1兆1957億円(22.6%)がトップ3に挙がっている。
1人当たりの宿泊費の支出額が高いのが欧州、米国、豪州であり、なかでも英国が15万円を超え、イタリアが14万5000円超と多い。
こうした外国人客の急増により、インバウンド需要をコロナ禍で壊滅的な影響を受けた民泊が息を吹き返すか。観光庁が昨年12月に公表した宿泊旅行統計調査(2023年10月・第2次速報)を見ると、東京都の場合、宿泊施設で稼働率が最も高いのがビジネスホテルで84.7%となり、簡易宿所は42.7%にとどまっている。
宿泊費にお金をかける傾向が強いことが稼働率でも反映されている。外国人にとっては、円安を受けて高額帯のホテルが割安に感じており、民泊などの簡易宿所はサービスの質が高いホテルなどに客足を奪われている構図が浮かび上がる。
「投資好き」と「政府不満」の華僑が不動産買い
この円安により、息を吹き返しているのが日本の不動産買いだ。東京23区のマンション価格は高止まりしており、特に都心では未だに上がり続けている。不動産調査会社の東京カンテイの調査よると、都心6区(千代田・中央・港・新宿・渋谷・文京)の平均価格は1億円を超える。そのような億ションであっても富裕層の踏み上げが上昇相場を演出している。
日本不動産研究所によると、東京・元麻布に所在する高級マンション価格を100とした場合、香港は263.4、台北と上海が160.7、シンガポールが137.3という指数になっている。香港は東京の2.5倍以上、台北と上海は6割高となっている。
ある在日華僑の投資家(30代女性)は、
「華僑の人たちは、もともと投資好きですね。最近は、日本の株価が上昇していることで、中国本土の人が日本の株価指数に連動するETFに殺到して取引がストップしてしまうように、国内で儲けられないのならば儲けられる国に資金を持っていく傾向が強いと思います。円安も相まって日本の不動産を相当に割安だと感じているはずで、そうした物件は放っておくはずがないです」
と述べ、自らも昨年後半に再開発事業で街が大きく変貌していく立地で中古の収益物件を購入したという。
中国の経済が思わしくないことで積極的に日本の不動産購入する動きが続くとみている。特に台湾では、地政学リスクを意識して海外に資産を移す傾向がある。外国人であっても所有権を持てる日本の物件が魅力的に映る。
中国、台湾、香港の投資先興味1位はニッポン
中台関係の悪化だけでなく、香港でも中国政府による思想・言論に対する締め付けが強くなり、それを嫌う富裕層などが海外に資産を持つ傾向が強まっている。
中華圏投資家と日本の不動産をマッチングさせるプラットホームを運営する神居秒算(東京都港区)によると、不動産投資先とて興味がある地域について中国本土、台湾、香港のいずれも1位は日本だとしている。
健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))