株式投資で配当金生活を楽しむように、J-REIT(ジェイリート)で分配金を毎月もらおう!というシリーズ。
J-REITの分配金は、株式投資の「配当金」と同じ意味だ。なお、J-REITの分配金利回りは2~6%と株式投資よりも高配当なものが多い。
そして、1月決算のJ-REITをいま買うと3ヶ月後の4月に分配金がもらえる。また、J-REITは年2回決算なので、10月にも分配金が手に入る。
1月決算のJ-REITは14銘柄!
注目は、いちごホテルリートとエスコンジャパンリート
1月決算期銘柄は14銘柄ある。
東急リアル・エステート投資法人
日本ロジスティクスファンド投資法人
森ヒルズリート投資法人
産業ファンド投資法人
アドバンス・レジデンス投資法人
コンフォリア・レジデンシャル投資法人
イオンリート投資法人
ヘルスケア&メディカル投資法人
サムティ・レジデンシャル投資法人
いちごホテルリート投資法人
スターアジア不動産投資法人
三井不動産ロジスティクスパーク投資法人
エスコンジャパンリート投資法人
東海道リート投資法人
※証券コード、銘柄名、投資口価格、予想分配金利回り、NAV倍率。
「投資口価格」は、J-REITの場合の「株価」に相当する。
投資口価格と予想分配金利回りは2023年12月29日終値現在。
注目の2銘柄はこちら。
いちごホテルリート投資法人
エスコンジャパンリート投資法人
リニューアル工事で価値を高め、地域分散し、
変動賃料増で収益アップする「いちごホテルリート」
いちごホテルリート投資法人はホテル特化型リートだ。上場したのは2015年11月。
スポンサーは、東証プライム上場の不動産運用事業を行う「いちご株式会社」。
商号の「いちご」は、千利休が説いた茶人の心構え「一期一会(いちごいちえ)」から来ている。
同社は築古物件をスクラップ&ビルドするのではなく、既存の建物を活かして改修・再生し、収益を上げていく方法が得意だ。「現存不動産に新しい価値を創造する」ため、「心築(しんちく)」と呼んでいる。
同リートは、スポンサーの「心築」により不動産の価値が向上したホテル用不動産、主にビジネスホテルを投資対象としている。
物件を選ぶ際は、立地の重要性とともに、建物自体にバリューアップする余地があるかどうかも大きな基準としている。
2023年8月25日に、ホテル5件を150億円で取得。コンフォートホテル大阪心斎橋、HOTEL THE KNOT YOKOHAMA、クインテッサホテル伊勢志摩、クインテッサホテル大垣、THE KNOT SAPPOROだ。
これにより、同リートが現在保有している物件数は30、取得価格合計は698.6億円。
8月にホテル5物件を取得したことで、日本全国に地域分散が拡大された。
現在は、大阪18.5%、東京12.8%、中国・四国12.8%、東海12.7%、京都6.4%、関東・甲信越13.3%、北海道12.5%、九州5.2%、名古屋3.8%、神戸2.1%の割合だ(取得価格ベース)。
地域分散によりポートフォリオが安定し、観光・ビジネスの両面で需要拡大を取り込む方針だ。
ホテルの運営会社も複数社に分散することで、収益の安定化を図っている。
運営会社の一つに、いちごグループの「ワンファイブホテルズ株式会社」も含まれる。
同社は「博多ホテルズ株式会社」から、2023年5月31日に社名を変更。親会社の「いちご」からのリネームのようだ。
ホテル名も、「ワンファイブ」を冠したリブランドを行っている。
運営会社からの賃料収入は、固定賃料だけでなく、変動賃料の割合を増やすことで、コロナ後の旺盛なホテル需要を取り込んでいる。
なお、同リートは2023年8月、第三者割当増資を行い、資金調達をした。割当先はすべてスポンサーグループだ。
公募増資を行うよりもコストがかからず、既存投資主にとって株価(投資口価格)の低下と希薄化の影響が低減できるため実施した、と同リートは説明している。
同リートの資産運用会社の運用報酬は、2019年2月から「完全連動報酬体系」を導入した。ホテル・オペレーターからの賃料収益や、物件売却時の譲渡益等が大きくなると、運用報酬自体も大きくなる仕組みだ。
同じく連動報酬体系を導入した兄弟リートの「いちごオフィスリート投資法人」では、今春、「運用報酬が高すぎる」として、運用報酬体系の改定とガバナンス強化として追加の役員選任を他社から求められる騒動があった。
この件があったため、いちごホテルリート投資法人は公募増資ではなく、第三者割当による増資を選んだのかもしれない。
ところで、いちごホテルリートには株主(投資主)優待がある。
●Jリーグの試合チケット(抽選)
●宿泊代金割引優待
対象はウィングインターナショナル、チョイスホテルズ、スマイルホテル等だ。
同リートはまだ小規模なリートだが、リニューアル工事でホテルの価値を上げ、収益を上げる方法で成長していくだろう。
いちごホテルリート投資法人
予想分配金:2024年1月期2,246 円、2024年7月期2,728 円
保有物件数:30
取得価格合計:698.6億円(2023年8月25日現在)
商業施設に加え、住宅等も取得する方針へ変更
底地に重点投資するエスコンジャパン
エスコンジャパンリート投資法人は、2019年2月に上場したJリート。
スポンサーは東証プライムに上場している不動産会社、株式会社日本エスコン。同社は2018年から中部電力と資本業務提携を行っていたが、2021年4月に中部電力の連結子会社となった。
2023年3月に北海道でオープンして話題となった、日本ハムファイターズの新球場「ES CON FIELD HOKKAIDO(エスコンフィールド北海道)」で、エスコンの名前を初めて聞いた読者もいるだろう。
同社はいま「北海道ボールパーク F ビレッジ」内で、大規模な不動産開発事業を行っている。
ところで、エスコンジャパンリート投資法人は、上場当初は商業施設特化型リートだった。
しかし、2023年10月に投資方針の変更で、商業施設に加えて、住宅やヘルスケア施設、教育関連施設、ホテル、物流施設等も含めることにした。
同リートがユニークなのは、「底地」も重要な投資対象にしている点だ。他のJリートでも底地に投資している銘柄はあるが、運用方針ではっきり明言しているREITは少ない。
また、底地がポートフォリオ全体に占める割合が44.8%、約半分近くと非常に高い。底地のテナントの90.8%は上場企業だ。
また、投資対象エリアは五大都市圏(北海道圏、首都圏、中部圏、近畿圏、九州圏)。
取得価格ベースで見ると、近畿圏が49.4%と一番高く、九州圏21.6%、首都圏11.1%、その他8.7%、中部圏7.3%、北海道圏1.9%と続く。
スポンサーの日本エスコンは中部電力の子会社なのに、リートの物件が中部圏に少なく、近畿圏が多いのは少し不思議な気がする。
スポンサーは大阪で創業したため、近畿圏の物件に特に強いからかもしれない。
ところで、2022年7月、エスコンジャパンリート投資法人の資産運用会社エスコンアセットマネジメントが、金融庁から法令違反を理由とする「業務停止命令及び業務改善命令」を受けた。
理由の一つは、不動産の価値を鑑定する会社に対して、不適切な働きかけを行っていた点。
これは、親会社からリートへの物件売却の際、親会社の希望価格を優先し、売却希望価格を事前に伝えて、鑑定評価額が売却希望価格を上回るように算定を依頼していたためだ。
もう一つは、不適切な不動産鑑定業者選定プロセスだ。
複数の不動産鑑定業者から不動産鑑定評価の概算額を聴き取り、一番高い概算額を提示した不動産鑑定業者に対して、他の不動産鑑定業者よりも安い鑑定報酬額にするよう交渉していた。その鑑定業者が選ばれるようにだ。
どちらも、親会社が希望する高い価格で、リートに物件を購入させるためだ。
このため、その疑惑が報道される前は13万円台だった同リートの株価(投資口価格)は大きく下落し、一時は10万円台まで落ちた。
法令遵守や内部管理態勢の見直し等を経て、現在の株価(投資口価格)は持ち直しつつある。
底地に注目する同リートのユニークさと、利回りが5%台と高い点が注目に値する。
エスコンジャパンリート投資法人
予想分配金:第14期(2024年1月期)3,082円、第15期(2024年7月期)3,144円
保有物件数:38
取得価格合計696億円(2023年11月30日現在)
1月決算銘柄を買って分配金をもらうには、権利付き最終売買日である1月29日15時までに購入しておく必要がある。
最後に、投資判断は自己責任でお願いしたい。