「改正空家特措法」が2023年12月13日に施行され1ケ月ほどが経つ。これまでは倒壊の危険がある危険な空き家を「特定空き家」として対策を打ち出していたが、今回の改正で倒壊するよりもっと前の管理が行き届いていない段階の「管理不全空き家」も指導や勧告の対象となり、固定資産税の税の軽減が受けられなくなる。
読者にとっては、築古戸建を安く手に入れ、投資に活かそうと考えている人も少なくないだろう。戸建を手に入れたものの、「管理不全空き家」と言われることはないだろうか?
不動産投資家として「改正空家特措法」のポイントを知っておきたい。
さらには本法律の施行後、不動産市場でどのような影響が生じているのか? 国土交通省の担当者から、空き家の活用や流通に詳しい不動産業者に話を聞くことができた。
管理が行き届いていない「管理不全空き家」は固定資産税が増加
「改正空家対策特措法」について知っているかとの調査<株式会社カチタス「第3回 空き家所有者に関する全国動向調査(2023年)」>によると、知っていると回答したのは40.2%と、半数に満たない。まずはこの法律の内容と、改正点から解説したい。
総務省の直近の調査では、日本の空き家は840万戸、全住戸の13.6%をしめ、間もなく1000万戸を超えるのではないかと危惧されている。今後、人口減少が続いていけば、空き家問題はますます深刻になっていく。
そうしたなかで2016年に施行されたのが「空家対策特措法」だ。倒壊の危険がある「特定空き家」とみなされれば、市区町村が指導や勧告を行うことができ、住宅地で固定資産税が6分の1になる軽減措置が受けられなくなる。
さらには行政代執行で、市区町村が空き家を除去することも可能になる。
国土交通省 住宅局 住宅総合整備課 住環境整備室長 石井 秀明氏は、法改正の経緯を次のように話す。
「空家対策特措法が施行され7年経ち、市区町村から、この法律では足らないという声もいただいてきました。『特定空き家』よりもっと前段階で活用を促し、管理や活用に光を当てたのが今回の改正のポイントです」
具体的には、管理が行き届いていない状態の空き家を「管理不全空き家」とみなし、市区町村が空き家の所有者に指導や勧告を行うことができるようになる。適切に所有者が対応しなければ、固定資産税が6分の1になる軽減措置が受けられなくなる。
「管理不全空き家」の定義は、上の図表にもある通り、外装材がはがれていたり、雨漏りをしていたり、ゴミが貯まっているような空き家を指す。
必要に応じて修理し、定期的な手入れ(通気、換気、ゴミの撤去、庭木の手入れ)や、動物が侵入していないか、傾きがないかなど、点検を行っていることが「管理されている」とみなされる。
上記のほかに次の改正点も覚えおきたい。
「『空き家等活用促進区域』を新たに設けました。シャッター街や、郊外で過疎化が進む住宅地や団地など、空き家が集中するエリアがあります。そうしたエリアで規制緩和が受けられるようになります。
1つは接道規制の緩和です。4m以上の道に2m接していないといけない接道義務がありますが、古い街では、そもそも4mの道がなく、再建築不可物件が多く、このことが空き家を助長させています。『空き家等活用促進区域』になれば、規制緩和により、建築できることになります」
もう1点、この区域に認定されれば、住宅しか建てることができない住宅地域でも、コンビニなど生活利便施設を建てることができるようになる。この「空き家等活用促進区域」に指定されるかどうかは、「市区町村」の判断にゆだねられる。
こうした点も今後、不動産投資をするうえで、覚えておきたい。
空き家のプロが語る!法改正後の影響とは?
上記のほかにも法改正により「空き家等管理活用支援法人の仕組み」が新たに導入される。空き家の活用や除却などは、市町村が行うより、業務に慣れている不動産事業者が行う方がスムーズにできることから、民間業者に空き家の管理や活用をアウトソーシングできるようになる。
実際に、空き家の活用に詳しい専門業者は改正法の施行や、不動産市場への影響を、どう感じているのか? 次の4名によるトークセッションから抜粋する。
売り物件が増える? 「改正空家特措法」施行後の影響は?
「今回の改正でかなり踏み込んだ法律になっていると感じている。所有者の意識が高まり、一定数は空き家の除却に意識が向くと思う。空き家を除却し、更地で売れるケースもあるが、活用できるものは活用していただきたい」(クラッソーネ 堀口氏)
「まだ足元での変化はないが、今後、変化が出てくると思う。我々は空き家に対して適切にリノべーションすることで有効活用しようと提案しているが、この半年で、家を蘇らせ大切に使ってほしいというニーズが増していると感じている」(空き家買取専科 黒田氏)
「よほど活用のアテがないなら、売却しようという人も増えていくのではないか。空き家に関連する市場は今後、伸びていくと思う」(カチタス 森川氏)
「空き家を活用して多拠点に居住できる住まいのサブスクサービスを提供しているが、2019年のサービス開始当初は知らない人に貸したくないと物件獲得が課題だったが今は物件数が増えている。家の管理を行う『家守』をやりたい人が増えている」(アドレス 坪山氏)
改正法の施行を契機に、2024年、空き家の売り物件が増えることになるのか? 気になるところである。