最近、新聞や雑誌で「 確定拠出年金 」が話題になっていて、耳にする機会も増えたかと思います。何となく、トクなのでは? 節税になるのでは? というイメージが先行していますが、本当にトクになるのか、解説していきます。
1.確定拠出年金とは?
確定拠出年金とは、ひと言でいうと、「 年金の上乗せ 」です。
サラリーマンであれば厚生年金、個人事業主であれば国民年金を受け取ります。しかし、国民年金だけですと、年間80万円程度にしかならず、それだけで生活することは難しいといえます
これを補う意味で、もらえる年金を増加する制度として、国民年金基金などがありましたが、平成14年から「 確定拠出年金 」も加わりました。比較的新しい制度です。
確定拠出というと、難しい言葉と思われますが、「 毎月一定額を拠出して、年金として積み立てましょう 」ということです。
「 確定拠出年金 」に対して「 確定給付年金 」という言葉がありますので、この制度と比較するとわかりやすいでしょう。確定「 給付 」とは、給付額、つまり、「 もらえる年金を一定額にする 」という意味です。
まとめると、両者の違いは、掛金を定額にするのか、受取額を定額にするのか、の差ということになります。
受取額を定額にすると、運用がうまくいかず、積み立て不足分が出た場合には、年金を支給する側( 勤め先の会社など )が補填することになります。その補填の負担がだんだんと大きくなっていき、支給する側として「 確定給付年金 」が維持できなくなっていきました。
そこで、毎月の掛金( 拠出 )を一定にする「 確定拠出年金 」ができたという背景があります。支給する側は、毎月の掛金( 拠出 )だけ負担すればよく、運用は個人に任せることができます。
言い換えれば、「 確定拠出年金 」で、受け取る年金を増やせるか、減らしてしまうのかは、自分の運用次第。自己責任の制度なのです。そして、この確定拠出年金は2017年から、今まで加入できなかった公務員や専業主婦などにも対象が広がったため注目を浴びているのです。
2.確定拠出年金の特徴
次に、確定拠出年金のメリット・デメリットをあげてみましょう。
(1)メリット
①掛金が全額所得控除になります
( 年間の掛金×税率 )分の所得税・住民税が安くなるので、節税になります。つまり、節税しながら年金財産を構築することができるのです。
②運用益には、非課税になります
運用益に税金がかからないため、効率よく年金積み立てが可能になります。
③複利で運用できる
複利とは、利息が利息を生むということです。確定拠出年金の運用益をさらに運用できるため、複利効果があります。期間が長ければ長いほど、雪だるま式に財産が大きくなる可能性があります。
(2)デメリット
①運用コストがかかる
金融期間によって異なりますが、次の費用がかかります。
・加入時に一回かかる、口座開設手数料( 2,777円一律 )
・その後に毎月かかる、口座管理手数料( 年間で2,000円~6,000円程度 )
口座残高を一定額以上にすることで、毎月の口座管理手数料が0円になるところもあるようです。
②運用によっては、元本割れをする可能性がある
自分で何に投資するかを決められるため、ハイリターンも望めますが、選ぶ投資によっては元本割れになる危険性があります。元本割れしないようにするためには、ある程度の投資の知識はあった方がよいでしょう。
将来もらえる年金が減ってしまうと困るという方は、元本割れしないような投資にするか、分散投資するようにしましょう。
③60才になるまで解約ができない
確定拠出年金は原則、60才まで引き出せません。節税になるからと、掛金を多くしすぎてしまうと、必要なときにお金がないということになりかねませんので、計画的に積み立てましょう。
なお、掛金の上限は、加入者の分類( 個人事業主、会社員、主婦など )によって異なります。個人事業主は、国民年金基金との合計で68,000円が上限、その他は、約1万円~2万円が上限になります。
3.投資信託との比較
投資信託は、投資したお金は、所得控除にはなりませんし、運用益に対して税金( 20.315% )がかかります。確定拠出年金の方が、税金が抑えられる点で有利に年金財産を作ることが可能です。
4.年金保険との比較
年金保険は、年金保険料控除として最大4万円( 旧年金保険料は5万円 )の控除が受けられます。年間100万円の保険料を払っても、年間4万円の所得控除しか受けられません。
確定拠出年金は、掛金の全額が所得控除になるため有利です。ただし、年金保険の場合、途中解約が可能ですので、万一お金が必要になった場合にも対応できます。
5.小規模企業共済との比較
小規模企業共済も掛金が全額所得控除になります。また、途中解約も可能になります( ただし、掛金年数が20年未満の場合には元本割れしてしまいます )。
確定拠出年金は、原則60才になるまで引き出せません。賃貸物件の修繕積立金目的として積み立てるのであれば、突発的に支出が発生することを考えると、小規模企業共済の方が向いていると言えます。
ただし、小規模企業共済は、サラリーマン大家さんは加入できないことになっています。サラリーマン大家さんは、確定拠出年金に加入することは節税策として有効です。
確定拠出年金は節税になると話題になっていますが、デメリットもあります。他の制度と比較しながら、本当に自分にとって有用なのか、確認の上加入するようにしましょう。