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光熱費を節約できる省エネ賃貸。相場より1.1万円高い家賃で退去ゼロ【建築家と建てる賃貸住宅】

収益物件購入・売却/建築家の賃貸住宅 ニュース

2023/09/24 配信

今年の夏は統計125年のなかで最も暑い夏だった。夏涼しく、冬暖かい、省エネ性能に優れた賃貸住宅はこれまで以上に求められていくのではないか。そこで注目したいのが戸建て並みの断熱性能と気密性能を備えた木造賃貸アパート、神奈川県横浜市の「パティオ獅子ヶ谷」だ。

二人暮らしも可能な32㎡の広さがある1LDKが4戸。2020年の竣工後、相場より1.1万円高い家賃でも満室になり、3年半経つ今まで1度も退去がない。設計を手掛けたスタジオA建築設計事務所 代表の内山章氏に話を聞いた。

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住宅地に溶け込むシンプルな外観デザインだが、突出した省エネ性能で住む人を魅了する。写真:中村 晃(以下同)

デザインは陳腐化するが、住宅性能は長期間持続。
性能への投資はコストパフォーマンスに優れ、空室対策に効く

「パティオ獅子ヶ谷」は神奈川県でもワンルームの賃貸住宅がひしめくアパート激戦区に位置している。「鶴見」「川崎」「綱島」の3駅利用できるものの、いずれもバスを利用し、駅から17~18分とけしていい立地ではない。

オーナーは地元で長く賃貸住宅経営を続けてきた経験から、競合物件との差別化を図るために、住まいの省エネ性能に着目し、かねてから信頼関係があり、断熱性・気密性に優れた建築を数多く手掛けてきた内山氏に依頼をした。

「断熱性や気密性を高めるために重要な鍵は『窓』です。窓はすべてペアガラスで、樹脂サッシを採用し、基礎や壁、天井は高性能な断熱材で覆っています。特殊な建材を使用しないことでコストを抑えつつ、住み心地につながる部分にはこだわりました。

建物のデザインは5年も経てば陳腐化しますが、建物の性能は維持管理できれば廃れません。断熱材は正しく施工すれば30~ 40年と利用できます」

断熱のため追加でかかった費用は工事費の11%(約320万円)ほど。その効果が30~40年も持続するとすれば、建物の性能に投資をすることは「コストパフォーマンスがよい投資」だと考えることもできる。

竣工時にパティオ獅子ヶ谷がいかに高性能な賃貸住宅であるかを健美家ニュースでも取り上げたが(過去記事参照)、どれだけ高性能がよく分かる数値がある。

2025年度から国内の新築住宅は一定の断熱性能が義務付けられるが、神奈川県など多くのエリアで求められる断熱性能は、UA値「0.87」。この値が小さいほど高性能であるが、パティオ獅子ヶ谷の値は「0.46」と寒さが厳しい北海道の住宅に求められる数値に値しているのだ。

特にこの夏のように暑さが厳しいと、高断熱・高気密の賃貸住宅は入居者にとって魅力であることは間違いない。しかしそれを、どう入居希望者にアピールしたのか?

「マイソク(募集案内図面)をオーナーさん推薦のアートディレクターや、デザイナーなど4者で相談しながら工夫しました。数字で高性能であることを語ることはいくらでもできるのですが、極力数字で語らず、視覚的に訴えました」

一般的なワンルームに比べて広さは約1.5倍(約32㎡)と二人入居も可能だが、スーモなどの検索サイトでは広めの『木造アパート』に該当する。利便性や家賃の安さなどで木造アパートを選ぶ、どちらかといえば意識が低めの層にどう訴求していくかが課題となった。

それがマイソクを工夫することで、ターゲット層の関心を引き、全4戸が1ヶ月半で20~30代の会社員で埋まった。新築当時から今も同じ入居者が暮らしているのが、またすごい。それだけ「住み心地」がよいのだろう。

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1LDKの室内。空気層の厚みが見るからに分かるペアガラスが断熱性・気密性を向上

断熱のために1点だけ乗り越えなければならないハードルがある。それは「資金調達」の問題だ。

「断熱に全体の工事費の1割上がるとなると、これまで4000万でできた建物が4400万円必要になることになり、金融機関の理解をえることが1つのハードルとなります。今回は実績豊富なオーナーさんのおかげで金融機関の理解をえましたが、古いアパートの窓を断熱改修して入居率を改善するなどトラックレコード(過去の実績や履歴)を積み上げることが金融機関に対して有効でしょう」

RCのワンルームマンションでも
断熱性の高い「樹脂サッシ・ペアガラス」を採用

都心のRCワンルームマンションでも断熱性や気密性を高めるために「樹脂サッシ/ペアガラス」を採用した例がある。2022年竣工の「北千束COCOON」である。

「防火性能や法律上の問題からおそらく現時点で、都内のRCワンルームマンションで樹脂サッシ・ペアガラスを採用した建築は極めて少ないのではないでしょうか。

樹脂サッシは、木造住宅に利用するものでRCや鉄骨造に利用できる防火対応の樹脂サッシはほぼありませんが、3階建てということもあり、RCでも使えるように独自にディティールを工夫しました」

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RCのワンルームマンションで、樹脂サッシ/ペアガラスを採用した「北千束COCOON」

ワンルームは換気がしづらく、狭く、断熱性が低いなどの理由で結露やカビに悩まされることが少なくない。それが窓の性能を上げ断熱材を施すことで、室内環境を改善することが可能になる。

「戸建て、アパート、中古や新築問わず、断熱性・気密性の向上は重要です。特に古い物件は、窓を変えて断熱改修できると、ぐっと断熱性や気密性がよくなり、人を呼び込めます。デザインを変えるよりも断熱改修を先行してやるべきです。

断熱性を高めるだけで、この先10年ぐらい空室率を下げられるぐらいの効果があります。木造アパートでもきちんと改修できれば、あと30年持続させることが可能です。ぜひその際は我々を頼りにしていただきたい」

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年季の入った木造アパートをリノベーションし、寿命を伸ばす「木賃ディベロップメント」にも取り組む。写真は江古田のサクラ・アパートメント。雑誌やテレビなどで多数取り上げられる人気に
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スタジオA建築設計事務所・代表取締役 一級建築士 内山 章氏。「新築とリノベーション」「断熱とデザイン」を称号に、高断熱・高気密の建築を多く手掛けてきた。省エネ建築診断士、有限会社株式会社エネルギーまちづくり社・取締役、NPO法人南房総リパブリック・理事 関東学院大学非常勤講師

健美家編集部(協力:高橋洋子(たかはしようこ))

高橋洋子

https://yo-coo.wixsite.com/home

■ 主な経歴

暮らしのジャーナリスト。ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、情報誌などの編集を経てライターに。価値0円と査定された空き家をリノベーションし、安くマイホームを購入した経験から、おトクなマネー情報の研究に目覚め、FP資格を取得。住宅、マネー関連の執筆活動を行う。

■ 主な著書

  • 『家を買う前に考えたい! リノベーション』(すばる舎)
  • 『100万円からの空き家投資術』(WAVE出版)
  • 『最新保険業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム)など

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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