コロナ禍の影響で、通勤せずに在宅勤務ができるようになった事や、仕事と旅行を組み合わせた「ワーケーション」等が注目されている。この機会に、地方に移住した人もいるようだ。
しかし、移住するのはなかなかハードルが高い。でも、京都など自分の好きな街に一定期間暮らしてみたいという人も多いだろう。
その希望が叶う仕組みが誕生した。宿に泊まるのではなく、賃貸物件をイチから借りる訳でない。新しい物件所有の方法だ。
それが、1軒の家(京町家など)をセカンドハウスとして、共同で利用・管理できるプラットフォーム「SymTurns(シムターンズ)」。
京町家の再生販売等を行う不動産会社 株式会社八清(はちせ)の代表取締役社長 西村直己氏が八清とは別で新たに立ち上げた事業だ。
「二拠点居住の拠点」を京都市内に持ちたいと思う人々が集まり、1軒の家を4~6組ほどでシェアして利用・管理する。
このシステムに参加すると、入居者は自分で京都市内に物件を所有・賃貸するよりも安く、そして便利に、二拠点居住を実現できる。
また、遠隔地に住む物件オーナー自身も、二拠点居住として使いたい時に予約でき、管理を委ねることもできる仕組みだ。
京町家をセカンドハウス利用できる
プラットフォームSymTurns(シムターンズ)とは?
「SymTurns(シムターンズ)」のサービス内容は、
1. 物件オーナーが、物件情報をSymTurnsに掲載する。その物件をセカンドハウスとしてシェアしたいユーザーを募集する。
2. 予め契約条件やハウスルールを設定した内容で、オーナーとユーザーが電子契約を行う。
3. オーナーやユーザーは、利用したい日程の調整などをSymTurnsのスケジュール機能を使って予約する。
4. 共同で物件を利用・管理するため、オーナーとユーザーがオンラインコミュニティを作って繋がる。そこで、掃除やゴミ出しの状況、オススメの店などの情報を伝え合うことができる。
物件内には、ユーザーが個別に使える鍵付きのロッカーがある。そこに、私物を置いておくこともできる。
自分たちの物件なので、掃除やゴミ出しは各自が滞在中に行う。しかし、ゴミ収集曜日の都合で、自分でゴミ出しができない曜日にチェックアウトする場合は、次の予約をしたユーザーにゴミ出しをお願いする事もできる。
少人数のコミュニティならではの「持ちつ持たれつ」の関係だ。
現在、物件へのチェックイン・チェックアウトは正午になっている。同時刻にチェックイン・チェックアウトをする事で、利用者同士が顔を合わせて交流できるように、という西村氏の配慮だ。
もちろん、正午よりも早い時間でのチェックアウトや、遅い時間にチェックインすることも可能。
利用者になると、最大7泊分の予約ができる。チェックアウトすると、再び次の予約を入れられる仕組みだ。
リノベーションされた京町家で
四季折々の京都暮らしを楽しむ
現在、SymTurnsには3物件の京町家が登録されている。京都市内の「洛縁 六条表」「洛縁 六条裏」「洛縁 五条」だ。
「洛縁 六条裏」「洛縁 五条」はすでに利用申込は満員なので、「洛縁 六条表」だけが募集中だ。
「洛縁 六条表」は2階建ての京町家。京都市地下鉄五条駅から徒歩3分。中心市街地の便利な場所で、細い六条通の路地を歩いて行った先の静かなエリアだ。
京町家らしさを残しつつ、現代的なリノベーションが施されている。
京町家の台所には、炊事の熱気や煙を逃がすために天井を高くした吹き抜けの空間「火袋(ひぶくろ)」がある。
その火袋を活かしたキッチンには開放感があり、コンパクトでありながら家電や食器類などもあって使いやすそうだ。
バスルームの入り口ドアはガラスで、お風呂からも坪庭が見える。
土間の玄関には、ユーザーが滞在時に使えるミニ自転車が置かれている。
その他、1階には客間や奥の坪庭を眺めながら食事ができる和室、2階にはベッド2台を置いた洋寝室と和室などがある。
「SymTurns」の利用方法は以下だ。
① ユーザー登録する。
② 利用したい拠点(「洛縁 六条表」など)を探す。
③ 契約手続きをする。
④ 拠点の利用予約をする。
⑤ 拠点に入居(チェックイン)する。
⑥ 拠点を退去(チェックアウト)する。
利用にかかる費用は2種類だ。
まずは「共同利用料」。オーナーや他の利用者と共同で施設を使うための利用料で、家賃のようなものだ。
「洛縁 六条表」の場合は月額7 万円だが、いまはモニター期間なので20%オフの月額5.6万円。
「入居準備金」は、入居時の初期コストとして専用の設備や備品を共同で購入した費用の按分。「共同利用料」の0.5ヶ月分だ。
なお、利用できるのはユーザー登録した本人とその家族だ。家族ではなく、本人と一緒なら友人も滞在もできる。
しかし、友人だけが利用するなどは不可だ。
法人契約の場合は従業員だけでの利用はOK。IT関連会社などは、気分転換を兼ねた「京都合宿」のような形で利用している例もあるようだ。
不動産投資家として、物件オーナー側の立場で運営する方法も!
また、一般ユーザーではなく、不動産投資家として物件を購入し、オーナーになってSymTurnsに登録する側に回るという方法もある。
「賃貸業」に近いが、オーナー自身も利用できる点が異なっている。
ユーザーとの共同利用・管理なので、清掃委託などは必要ない。オーナーが負担するのはSymTurnsのシステム利用料(ユーザーの月額利用料の20%)と、光熱費等だ。
トータルのキャッシュフローとしては、稼働率が高まれば、ある程度の収益が見込めるようだ。プラス、自分でも物件を利用できる。
西村直己社長によると、元々は不動産の小口化事業に興味があり、ヒルトンホテル等が海外で展開しているタイムシェアのような形を考えていたそうだ。
※タイムシェアとは、キッチンやリビングがあるコンドミニアム・タイプの部屋等を共同所有することで、1週間単位で利用できる方法だ。ハワイなどのリゾート地で「暮らすように」休暇を楽しむというコンセプト。
そして、弁護士である弟さんと一緒に考え、セカンドハウスを共同で利用・管理できるプラットフォームSymTurnsを考案した。
ちなみに、多拠点に滞在できる形の他社プラットフォームもあるが、SymTurnsの場合は「2拠点居住」にこだわっている。
旅行ではなく、京都に住む関係人口が増えてほしい、京都という街を好きになって暮らしを楽しんでほしいという気持ちからだそうだ。
また、物件オーナーにとっても有効活用できる上、オーナー自身も使いたいという要望にも応えることができる。空き家対策にもなるので、三方良しだと考えている。
「いずれは京都を飛び出して、鎌倉や逗子など他の地域へも進出したいと考えています。『何度でも通いたい』『住んでみたい』と思える場所がターゲットです」と西村氏。
宿泊でも賃貸でもない、新しい物件所有の形を提案したSymTurnsは、今後も登録物件を増やしていく方向だ。
SymTurns 「洛縁 六条表」についてはこちら。
※写真提供:SymTurns