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マンションの修繕積立金は狙われている?「“修繕積立金を最大限使い切る“管理会社の横暴」

賃貸経営/管理・管理会社 ニュース

2023/09/28 配信

「毎月、たった1度の定例会に管理組合が年間300万円も支払わされていた上に、通常なら4億円で済む大規模修繕費用が相見積もりなしに6億円で計算されていた」。

分譲マンションを所有するオーナーからするとギョッとする話だが、実際に起こったことだと話すのは、大規模修繕工事を手掛ける株式会社マツミ(大阪府茨木市)の宮脇美樹社長だ。

修繕工事は高額だが、億単位の差額は誤差ではない。
修繕工事は高額だが、億単位の差額は誤差ではない。

「苦労して収めた税金は無駄遣いされず適切に使われているだろうか」。納税者なら誰もが考えることだ。

それと似たような不安がよぎるのが、分譲マンションを所有した際に毎月支払うことになる管理費用。管理組合から細かいチェックが入らない状況では、管理会社はコスト削減などの企業努力もなしに、予算いっぱいかそれ以上に追加費用を請求する可能性がある。

問題となったのは、大阪府豊中市に立つ約400世帯の大規模な分譲マンション。新築して以来1回目の大規模修繕を行うのに、外壁塗装と屋上防水その他を合わせて見積もり金額は6億円だという連絡がマンション管理会社から管理組合へ入った。

1世帯が支払う管理費用は㎡数でそれぞれ変わるものの、平均で毎月2万5000円。そのうち1万5000円が修繕積立費用で、12年で総額216万円だ。400世帯あれば、使用可能な修繕積立金の総額は8億6400万円に上る。

果たして、6億円は適切な見積もり金額なのか。理事が気になって相見積もりを取っているのか管理会社に問い合わせると、取っていないという返答。それでは困る、ということで相見積もりを取るように頼んだものの、管理会社からは拒否されてしまった。

なぜマンション管理会社は相見積もりを拒否したのか。

それは、マンションのデベロッパーとマンション管理会社はグループ会社で、大規模修繕工事に関しても関連する施工会社のみという規定になっているからなのだという。

建てたデベロッパーは建物の仕様についてよく理解しているはずなので、仮に下請け業者に修繕を依頼したとしても施工がしやすいだろうということは考えることができるかもしれない。

だが、それでも「6億円は妥当な価格なのだろうか」と理事は手をこまねいた。管理組合がいくらの修繕積立金を保有しているのかは、所有者以外には管理会社しかわからないようになっている。その上で、大規模修繕の際は予算を超えないように相見積もりを取って慎重に工事会社を選ぶのが普通だと考えたからだ。

どう考えても強い疑念を払拭できなかった理事は、友人関係でもあったマツミの宮脇社長に相談したのだった。

マツミ側で調べて見積もってみると、かかる費用はおよそ4億5000万円程度。なんと1億5000万円もの差があった。これは、誤差とは言えない金額だ。

提示された修繕費用で管理会社を信頼できないと感じた理事は、修繕以外にかかってきた金額についても再確認してみた。すると、管理会社が毎月1回、管理組合に対して管理状況を報告する定例会になんと300万円もの金額が引かれていた。1回につき25万円も支払っていることになる。

さらに、過剰なコストがかかった履歴が発覚。エレベーターのドアの不具合で修理をした際、500万円かかると言われた費用を割り引いてもらって300万円にしていた。それをマツミで見積もってみると、100万円程度で済む修理だったことも判明した。

管理組合の理事は数年間のスパンで入れ替わるが、12年もの間、歴代の理事はこの異常な金額に意義を唱えてこなかった。修繕積立金が不透明な使われ方をしているにも関わらず、住民は黙って支払い続けてきた。なぜなのか。

「しっかりと管理して資産価値を維持してもらいたい、8割の入居者は納得はしていないが、逆らうことで管理の質が下がることを恐れて受け入れてしまうようです」と宮脇社長は見解を話す。

管理会社を変える際は多数決 早めに動くことが重要

マンション購入前に修繕積立金の使われ方がわかればいいが、新築の場合は状況がわからない上に、管理会社がどのような管理を行うのかが分かりにくいだろう。もし不透明な使い方をする管理会社にあたってしまった場合は、どうしたらいいのだろうか。

  1. 管理組合の収支報告書を確認し、過去の修繕で相見積もりを取った履歴が残してあるかどうかを確認
  2. 過去に実際にかけた修繕金額が適正なのか後でもいいので見積もりを取る
  3. 適正な価格ではないとわかった場合は管理会社の変更を検討
  4. かかった金額と見積もりの金額の差がどの程度なのかを数字としてまとめ、マンションの住人へ事実を伝えて決議案の可決に備える

「恐れずに管理会社変更を検討することです。たとえ管理会社に相見積もりを取ることや、管理会社が指定した大規模修繕会社を使わないことを禁止されても、管理組合は従う必要はありません。少しでも『信頼関係を築くことはできない』と感じた場合は、管理会社変更に向け、多数決で可決できるように賛同する住人を増やすために根気よく説得していく必要があります」と宮脇社長は話す。

管理会社と管理組合との契約の際に、管理委託契約の解除についての条項があり、違約金が発生する場合もある。「違約金を払いたくない」という理由から契約解除を拒否する住人も出てくるだろう。

だが、実際に提示された金額と、実際に抑えることができる金額を比較してみれば、違約金を支払って解約する方が長い目で見た場合に確実にコスト削減につなげることができる可能性が高い。

建設業界の人手不足や資材価格の高騰で、今後修繕積立費用は足りなくなる可能性が出てくる。そのため、管理会社の変更を検討することは早目に取り掛かる方が賢明だ。

分譲マンションを所有するオーナーは今一度、管理報告書を見て、過去の修理費や大規模修繕の際に相見積もりが取られた履歴を確認するといいだろう。見当たらなければ、支払っている管理費用が適切に使用されているのかどうか調べてみた方がいいかもしれない。

取材・文:土田絵理(つちだえり)

土田絵理

■ 主な経歴

取材記者、クリエイター、アーティストなど様々な肩書きを持つ。
アメリカ・ニューヨークでの広告営業経験をきっかけにライター業を開始。投資家向け(IR)資料作成業務や不動産専門の新聞社でのデスク経験等を経てフリーの取材記者へ転身。不動産業界の取材数が多く、業界に太いパイプを持つ。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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