株式投資で配当金生活を楽しむように、J-REIT(ジェイリート)でも分配金(株式投資の「配当金」と同義)を毎月もらおうというシリーズ。
分配金を毎月もらって、経済的自立と早期リタイア、FIRE生活への1歩にしよう!
株式会社は3月決算が多いが、J-REITは3月決算銘柄が非常に少ない。そのため、物流施設特化型リートに似ている倉庫会社(3月決算)にも注目してみた。
3月決算のJ-REITや株式会社の株をいま買うと、3ヶ月後の6月に分配金や配当金がもらえる。

3月決算のJ-REITは5銘柄から4銘柄に!
J-REIT では3月決算期の銘柄は少ない。最近までは5銘柄あったが、4銘柄に減った。
ジャパンリアルエステイト投資法人
グローバル・ワン不動産投資法人
大和証券リビング投資法人
ケネディクス商業リート投資法人
森トラスト総合リート投資法人が森トラスト・ホテルリート投資法人と合併し、決算が3月/9月から2月/8月に変更したからだ。
※証券コード、銘柄名、投資口価格、予想分配金利回り。
「投資口価格」とは、J-REITの場合の「株価」に相当する。
投資口価格と予想分配金利回りは2023年3月3日終値現在。
なお、J-REIT(ジェイリート)とは証券市場に上場している金融商品「不動産投資信託」のこと。J-REITを購入すると、株を買うぐらいの小口資金で大規模大家さんの仲間になれる。
J-REITの分配金利回りは3〜6%と、株式投資よりも高配当なものが多い(一部のホテル特化型リートは除く)。
そして、3月決算の注目銘柄はケネディクス商業リート投資法人と、J-REITではないが澁澤倉庫株式会社だ。
ケネディクス商業リートは生活に密着した商業施設が特徴
取得物件のコンバージョン(用途変更)も完了し、収益アップへ
ケネディクス商業リート投資法人は商業施設特化型リートだ。2015年2月に東京証券取引所に上場している。
スポンサーは、不動産ファンドの運用などを行うケネディクス株式会社だ。同社は独立系だったが、2021年に三井住友ファイナンス&リースグループからTOBされ、傘下に入った。
その相乗効果で、ケネディクス商業リート投資法人の信用力もアップし、借入れ先の増加や借入条件も改善している。
同リートの特徴は、商業施設の中でも「生活密着型商業施設」に重点投資を行っていることだ。都市型商業施設が提供する「非日常」ではなく、住宅地やロードサイドなどの生活圏内に立地して、日常生活に必要な商品やサービスを提供する商業施設だ。
特に、商圏3〜5kmの食品スーパー等を「ネイバーフッドショッピングセンター」と定義づけて、力を入れている。
近所に住む住民が消費者なので、来店頻度が高く、平日と休日の差も小さいためだ。
コロナ禍でも、同リートの核テナント(食品スーパーやホームセンターなど)は好調を維持していた。
そして、高齢化が進み、都市圏へ人口集中していく日本では、今後も商圏が小規模化していくと考え、生活必需品を扱う商業施設の需要が一層高まると同リートは考えている。
確かに、高齢になると車の運転ができなくなり、近くのスーパーで買物できれば有り難いという層は増えている。下記のグラフ「規模別新設届出件数割合の推移」でも、5,000平米以下の小規模店の出店は右肩上がりになっている。
また、生鮮食品等はEコマースを通じて購入する率が低く、地元の食品スーパーで買う割合が圧倒的に多いという結果が出ている(下記のグラフより)。

コロナ禍では、ネットスーパーの利用が多くなってきたが、高齢者ではなく、デジタルに強い共働き世帯が主に利用しているようだ。
そしてネットスーパーと言っても、遠方ではなく、配送可能エリアに立地する「近所のスーパー」にネットで注文して生鮮食品などを届けてもらうため、商圏自体は普通のEコマースよりは小さい。
また、同リートはネットスーパー等のEコマース需要を取り込む「消費地に近い立地の配送型物流施設」へも投資を行っている。

コロナ禍を契機に、商業施設と物流施設の垣根が一層低くなってきており、「生活密着型商業施設」と「消費地配送型物流施設」の両者とも、重要性が高まってきている。
そのため、同リートは2018年に「物流施設」を投資対象に追加した。
そして、商業施設と物流施設の併設や、宅配業者へ敷地の一部を賃貸、オンラインストアによる実店舗の出店、ネットスーパーの配送拠点、商業施設からの商品配送&商品受取などに取り組んでいる。
同リートは2022年10月に投資口の追加発行を行い、新規に2物件(156億円)を取得した。2021年10月にオープンした築浅のネイバーフッドショッピングセンター「イーアス春日井」(愛知県春日井市)と、北海道第2の都市である旭川市の「コープさっぽろ春光店」。
「イーアス春日井」は同リートの取得物件でも最大規模級であり、コロナ後に需要が増えつつある「サービス系テナント」の割合が高く、売上歩合賃料割合も高い物件だ。

また、2022年3月に取得した「キテラプラザ青葉台」(横浜市青葉区)は、生活密着型商業施設に用途変更するため、工事を行っていたが、今年1月末にコンバージョンが完了した。
同リートは、物件取得による外部成長もしながら、物件のコンバージョンなど商業施設のマネジメントを積極的に行うことで、内部成長も目指していく。
ケネディクス商業リート投資法人
予想分配金:2023年3月期6,360 円、2023年9月期6,240 円
保有物件数:70
取得価格合計:2,703億円(2023年1月31日現在)。
渋沢栄一が日本の近代化に倉庫業が必要と創業した澁澤倉庫
早期に総合物流化し、不動産事業も好調
物流特化型リートに似ている点もある倉庫の会社に注目してみよう。今回は澁澤倉庫(しぶさわそうこ)株式会社だ。
同社は、澁澤榮一(渋沢栄一)が1897年(明治30年)に自邸内に発足させた「澁澤倉庫部」が前身だ。

日本の商工業が発展していくために、近代的な営業倉庫を求める産業界の要望や、銀行業務に伴う担保品を保管する施設が必要だったからだ。
1915(大正4)年以降は、地方銀行の要請に応じて小樽や門司にも進出。1933(昭和8)年には浪華倉庫と合併し、横浜・大阪・神戸・下関等の主要港に進出した。
第二次大戦後の高度成長期に、陸上・港湾運送業、航空・国際運送業も手掛けて、総合物流業へと拡大した。2017(平成29)年に創業120 年を迎えた。
澁澤倉庫(株)は、前回紹介した住友倉庫や三井倉庫など大手に対して、準大手の位置にある。なお、澁澤榮一が創業した企業等のうち、「澁澤」の名を冠した企業は澁澤倉庫だけだ。
同社の大きな柱は2つあり、物流事業と不動産事業だ。第176期中間報告書(2022.4.1〜9.30)を見ると、営業収益は物流事業が92.1%、不動産事業は7.9%だ。
物流事業は倉庫業、港湾運送業、陸上運送業、国際輸送業、その他の物流業務、と5つの業務に分かれている。
収益が一番高いのは陸上運送業で、物流事業の約半分を占めている。倉庫業は2番めだ。

そして、第3四半期(2022年10月1日から12月31日)の報告書を見てみると。
物流事業では、新拠点の開設や流通加工業務を拡大し、業務の効率化や採算性の向上を行った。その結果、倉庫、港湾運送、陸場運送、国際輸送のそれぞれで取扱量が増加した。
営業収益は前年同期比12.9%増の557億8千8百万円に。燃油費の高騰や新拠点等の賃借料の増加、取扱い量が増えた事により人件費等の費用も増えたものの、営業利益は前年同期比13.4%増の29億6千2百万円となった。
不動産事業は、既存物件の改良工事等を行って稼働率が向上。賃貸収入やビル管理業務が増加したため、営業利益は前年同期比6.3%増の23億5千7百万円だった。
配当については、連続で増配している。中間配当は1株につき前期比+10円増配の40 円だった。2023年3月末の配当予想は1株につき前期と同額の40 円と、今年2 月8日に発表した。予想配当利回りは3.51%だ(3月3日終値現在)。
澁澤倉庫株式会社(東証プライム9304)
2023 年3月期(2022 年4月1日〜2023 年3月 31 日)の予想配当金:1株につき 80 円 0 銭
※実施済みの中間配当金を差し引いた期末配当金予想は、1株につき 40 円。
※澁澤倉庫(株)の売買単位は100株。
予想配当利回り:3.51%(3月3日終値現在)
さて、前述した3月決算銘柄を買って分配金をもらうには、権利付き最終売買日である3月29日15時までに購入しておく必要がある。
最後に、投資は自己責任でお願いしたい。
健美家編集部(協力:
(のはらともみ))