引き続き地震への警戒は必須
物件オーナーができることは?
収益物件を持っていれば、一度は考えるであろう「地震対策」。保険で被害をカバーするという手はあるが、事前にできることも。なかでも、自治体が実施する耐震診断費用助成や耐震補強工事費助成は、有効な手立てになるに違いない。
日本に住んでいれば、地震は日常茶飯事。2018年であれば最大震度4以上が78回、昨年も30回以上発生した。2020年に入ってからも震度は小さいものの、千葉県付近を震源とする地震がたびたび起きている。
そもそも、首都圏では今後30年以内にマグニチュード7クラスの直下地震が70%以内の確率で発生すると予測されていて、政府による被害想定は全壊・焼失する建物61万棟で死者は最大2万3000人、経済的な損失は95兆円超という規模。首都圏だけではなく南海トラフ地震の発生も危惧されている。
なお、国の地震調査研究推進本部では、全国の活断層のうち長さが20㎞を超え、地震発生時に大きな影響が出る114の活断層を調査、今後30年の地震発生確率などを評価してきた。地震発生の切迫度は以下の4ランクに分けられている。
・Sランク(高い):30年以内の地震発生確率が3%以上
・Aランク(やや高い):30年以内の地震発生確率が0.1~3%未満
・Zランク:30年以内の地震発生確率が0.1%未満
・Xランク:地震発生確率が不明
今年1月24日公表時点でSランクと評価されているのは、全国31の活断層。どこかに集中しているわけではなく全国に散らばっているので、どの場所においても強い揺れに見舞われる恐れがあるとわかる。
ちなみに同本部では主な海溝型地震の評価結果も公表していて、ここでは30年以内の地震発生確率が26%以上の「Ⅲランク」として、南海トラフや根室沖から色丹島沖及び択捉島沖、青森県東北沖から岩手県沖南部など、複数の地点を挙げている。
震災が起きて所有物件に被害が及ぶと、オーナーにとっては目も当てられない。そのために、地震保険への加入は必須。12月15日掲載の記事「どんどん増え続ける地震と加入者。「地震保険」は備えあれば患いなし!」でも紹介したが、全損や大半損、小半損、一部損により保険金が支払われる。有事の際をカバーするのに必須の補償だ。
建物や入居者を守る意味で
耐震関係の助成金・補助金活用はマスト
ただし、地震保険がサポートするのはご存じの通り、「地震が起きてから」のこと。被害によっては受け取る保険金の額にも違いがあり、万全でないところもある。それより大切なのは、「地震に強い」建物を持つことだ。土地から仕込んで新築物件を立てる場合は、耐震を意識すべきだろう。
一方、耐震に不安がある物件を所有しているなら、補強などは行いたい。そこで活用したいのが、自治体が実施する耐震系の助成金・補助金の活用だ。大きく、耐震診断と耐震工事のサポートにわかれている。
例えば、国土交通省の「住宅セーフティネット制度」では、物件オーナーが高齢者や障害者など「住宅用配慮者」の入居を拒まない住宅として都道府県に登録すると、耐震改修の補助が受けられる。
自治体の制度はマイホームのみが対象のケースもあるが、賃貸住宅が含まれることも。例えば、静岡県では東海地震における住宅の倒壊から県民の生命を守るため、木造住宅の耐震化プロジェクト「TOUKAI -0」を創設。
ナビゲーションサイトの「耐震ナビ」では制度に触れている。それによると、令和元年度には、耐震診断の「我が家の専門家診断事業」や「補強計画」「補強」「建替・除去」などに伴う補助規定が定められている。詳しくは以下のリンクから確認いただきたい。
助成金・補助金の対象になるには旧耐震基準、木造軸組工法、耐震診断の評価が1.0未満(倒壊する可能性がある)など、一定の条件を満たす必要がある。あるいは、住民税を滞納してない、所得制限、地域の業者に補強を発注するといったルールも。
詳細は各自治体に問い合わせていただきたいが、該当する物件を持っているなら、すぐにでも活用したい。それにより、自身の資産ばかりか、入居者の生命も災害から守ることになる。これぞ、オーナーの使命ではないだろうか。
健美家編集部(協力:大正谷成晴)