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年老いた親が、我が子の滞納家賃を支払い続ける…。ただ家賃が入ればいいというわけではない問題

賃貸経営/トラブル ニュース

2019/06/20 配信

川崎登戸と元事務次官の息子刺殺事件、そして今回の大阪吹田拳銃強奪事件など、物騒な事件が相次いでいる。

そんな中、筆者の事務所には多くの電話がかかってきている。「子どもと連絡がつかないのですが、どうしたらいいですか?」

問い合わせは、大方このような内容だ。

もう少し詳しく書こう。

子どもが賃借人、親が連帯保証人という状況で、子どもが家賃を払わないから管理会社から督促の電話が親の方に入り、今までは何も考えずに仕方なく支払ってきた。

今回の事件を受け少し気になったので、子どもに会いに行ったら「帰れ」と怒鳴られドアを開けてくれない。電話も繋がらない。ラインもブロック。

「仕事辞めたのでしょうか、引きこもっているのでしょうか、これってこのまま家賃を払い続けていいのでしょうか、どうしたらいいのでしょうか、、、」
そんな悲痛な叫びだった。

連帯保証人である以上、親は賃借人(子ども)が家賃を支払わなければ払い続けなければならない。どうしても払いたくないと思えば、費用は誰が負担するかは別として、家主側に明け渡しの訴訟を提起してもらい、本人を部屋から退去させて滞納額を確定させ清算する、これがいちばん手っ取り早い。

しかし子どもは追い出された後、どこに行くのか、これも問題。仕事をしていなければ、次の転居先も見つけられないだろう。家に戻ってきてくれればいいが、その選択肢もなく追い詰められたら、何かしでかすのではないか。

福祉は何かしてくれるのか。全ての親御さんは言葉にはしなかったものの、「子どもが同じような事件を起こしたらどうしよう」これが気になっていたに違いない。

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実際に引きこもりは多くなってきているのか

中高年の引きこもりが61.3万人(内閣府・生活状況に関する調査)と発表された時、感覚的にはもっと多いのではないかと思った。滞納の現場に身を置いていると、ここ10年ほどで激増している印象を受ける。

滞納者の半分ほどは、職を失い、職を探す意欲すら感じられない。それでも彼らは事件も起こさなかったし、気配すら感じなかった。むしろすべてにおける意欲すら、もはや失ってしまったという印象の方が強い。だから単純に、引きこもり=事件を起こす、という方程式は成り立たないと思う。

今回の事件までに出会った滞納者の親である連帯保証人の多くは「金は払うが、子どもに戻ってきてもらったら困る」と、目線は世間であって、決して子どもには向いていなかった。

本当のところは分からないが、その冷たさに、少なからず滞納者である子どもに同情もし、突き放す親に違和感を感じることの方が多かった。

だから今回のたくさんの電話にはむしろ驚いたし、実際ご相談に事務所まで来られた親御さんが涙されている姿を見て、「親のこの思いが子どもに伝わらないはずがない」そう思ったし、まだ日本の親子関係も捨てたものじゃないとホッとした部分もあった。

家主は引きこもる賃借人を受け入れられるのか

しかしながら家主からすれば、また違った思いもあるだろう。

仮に家賃は連帯保証人なり家賃保証会社なりが払ってくれたとしても、室内の修繕に立ち入らせてくれない、昼夜逆転して音のクレームを言ってくる、奇声を発する、などなど頭の痛い問題が勃発する。場合によってはこれが原因で、良い入居者が退去してしまうことも考えられる。

ここ最近、精神疾患を抱えている賃借人や、ゴミ屋敷(何かしら心の病が関係か)も激増した。運良く室内に入れた時に、リストカットで飛んだ血が壁紙を染めているのを見てしまうこともある。前出の親が家賃を払い続ける8050問題も、親が亡くなってしまえば一気に問題は深刻化する。

現在、家賃は入っているから大丈夫では済まされない。

ひと昔前の家主は、自分で集金をし、入居者との人間関係もそれなりにあった。入居審査も自分でしたし、契約時には双方顔を合わすことも多かった。それが時代とともに管理を委託することが増え、家主と賃借人とのコミュニケーションは圧倒的に少なくなったはずだ。見えなくなった分、激変する日本の抱える闇が表面化しない間は気がつかない。

賃貸経営は、生活の場を提供する以上、人間のあらゆる問題が生じる可能性もある。家賃が入ればいいという問題でもない。いま一度、家主も賃借人に目を向けて欲しい。そこから見えてくる小さな芽をどうするか、家主の人間力が問われる時代になっている。

太田垣章子(おおたがき あやこ)

【プロフィール】
司法書士・章(あや)司法書士事務所代表
平成14年から主に家主側の訴訟代理人として、悪質賃借人の追い出しを延2000件以上解決してきた賃貸トラブルのエキスパート。徹底した現場主義で、早期解決のためにトラブルある物件には必ず足を運んできた。現場で鍛えられた着眼点から、賃貸トラブルの解決を導く救世主でもある。著書に「家賃滞納という貧困」(ポプラ社)「賃貸トラブルを防ぐ・解決する安心ガイド」(日本実業出版社)がある。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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