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「賃貸DIY」を進めるオーナーの落とし穴「内装制限」: 「不動産投資家のための建築知識007」

不動産投資全般/建築知識 ニュース

2021/06/10 配信

不動産投資家のための建築知識」シリーズ。前回の記事ではニーズの高まる物件を安く買って、DIYでリフォームして賃貸するという手法「賃貸DIY」の動向について述べたが今回は、その「賃貸DIY」を進めるためにオーナーが知っておくべき建築知識を整理しよう。

「賃貸DIY」というプログラムによって、物件の魅力、訴求力をアップし競争力を持つために、何を知って考えることが必要かについて今回はまとめる。

安全・安心な「賃貸DIY」のために
知っておくこと

日本の建築物の安全性は、主に「建築基準法」と「消防法」に従うことで守られている。投資される賃貸物件の用途「戸建て住宅」「集合住宅」「オフィス」「店舗」などそれぞれの用途に応じて、安全の基準とそのための規定が定められている。

それらに定められた安全は、設計時に行政を含む審査機関によって「建築確認」され、竣工時にそれが確認された通りに施工されていることを「検査」されることでつくられる。

しかし、これらの法規に定められた安全性は「新築時」または「(建築確認が必要となる)改築時」にのみ「確認」され、「検査」されることで保証されるものである。

そういった建築確認が必要とされない改装や模様替えなどでは、審査の段階が存在しない。それは安全を保証する第三者の判断が存在しないということでもある。

しかし、審査が存在しないということは、何をやってもよい、法律を守らなくてもよいということではなく、「日本国内に存在するすべての建築物」が守るべき「建築基準法」は所有者自ら守らなければならない。そうでない建物は「違法建築物」となってしまう。行政的には是正命令対象となることもある。

建築確認と検査 申請手続きの流れ(出典:大阪府)
建築確認と検査 申請手続きの流れ(出典:大阪府)

ここをきちんと認識しておくことが、安全・安心な「賃貸DIY」の実現の要点だ。

つまり、「賃貸DIY」で最もリスクが高いのは安全の知識を持たないオーナーが「何でもあり」「DIYの内容はノーチェック」とした結果、物件の状態が違法となるDIYを居住者にされてしまうことだ。

その責任は建築基準法、消防法においては所有者にある。
※新築時、および建築確認の必要な改築時の、建築確認の申請者(主体)は「建築主(オーナー)」である。建築士はそれを委任されて代行する専門家にあたる。

安全・安心にできるDIYの落とし穴
「内装制限」について知ろう

ここで、DIYの中で特に認識してほしいもの、落とし穴になりがちな規定に「内装制限」がある。

この「内装制限」という言葉をそもそも聞いたことの無いオーナーも多いと思う。

これはアパートやマンションなどの集合住宅、または戸建て住戸その他であっても火気を使用する室においては、火災の被害を最小限にとどめるために住戸の内装を安全なものに制限する、という規定だ。

具体的にどういう制限なのか。

火災が発生した場合に、その内装の素材、種類によって燃えるもの、燃えないもの、また燃えるスピードなどが異なる。燃えないもの(例えばコンクリートなど)ですべて作られていれば最も安全だが、住まいや室で内装に壁紙や、木材などを使いたくなることは多い。特にDIYで「ナチュラル」「カントリー」などのテイストが求められ人気もある中では、やはり「燃えない」ということと、「DIYの自由」が相反する場面は多い。

「内装制限」は建築物の機能、部屋の場所の場合分けによって、素材の「不燃性」でランク分けされたものを使うように定めている。

素材の不燃性のランク分けとは、「不燃材料」「準不燃材料」「難燃材料」「その他」という順番で「燃えにくさ」が区別される。

燃えにくさは、検定実験により確かめられた加熱開始から燃え始めるまでの時間で、不燃→20分、準不燃→10分、難燃→5分のように分けられる。

この規定の目的は建物の一部で発火した場合に燃えにくいもので室内をつくることで「避難するための時間を確保」し、集合住宅などでは特に「隣接する他の住戸への延焼を防ぐ」というためのものだ。

建築物が何でできているか、耐火性能がどのようなクラスのものかということも、内装制限に大きな影響がある。「耐火建築物」「準耐火建築物」などだ。それぞれ確保しなければならない耐火性能が異なる。一般に建築が大規模になれば要求される耐火性能が高くなる。

これらの規定について建築確認証と検査済み証が証明する、「新築時に確認され実現していた安全性」は、しかしDIYを野放しにしてしまうと知らぬ間に失われてしまう。

内装制限指定が不燃の建物の内装を、燃えてしまう木でDIYするなどだ。

したがって、賃貸物件のオーナーは自分の物件を「DIY可」とする前に、どういう範囲でDIYを許容するのか知らないとならない。そのうえでその範囲を明示した「DIY」をOKできる賃貸を募集できるのだ。

キッチン周りの内装制限「賃貸DIYガイドライン」-HEAD研究会
キッチン周りの内装制限「賃貸DIYガイドライン」-HEAD研究会

自分の物件の内装制限を知るための
「賃貸DIYガイドライン」

しかし、建築基準法や消防法を読みこなすことのできるオーナーはほとんどいない。オーナーだけでなく、管理会社でもかなりの知識と経験の上で理解できるようになる内容でもある。

だが、そこで立ち止まっていれば、コロナ以降の「DIYニーズ」に対応できる賃貸事業への展開は望めない。

そこで、一般社団法人HEAD研究会という不動産と建築の専門家の研究会で先年に公開したのが、「賃貸DIYガイドライン」だ。

内装制限に関して、DIYをどこまでOKとするか、自分の建物に即してフローチャートで確認することができる。

「賃貸DIYガイドライン」のフローチャート(部分)-HEAD研究会
「賃貸DIYガイドライン」のフローチャート(部分)-HEAD研究会

また、全宅連(全国宅地建物取引業協会連合会)でも、契約に関する追加書式のひな形を作成準備中という。

これらを活用することで、安全安心と共に、時代のニーズをとらえた賃貸DIY事業という新たな展開を開拓していく人が増えることを願う。

執筆:新堀 学/しんぼり まなぶ

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【プロフィール】
建築家。1964年埼玉県生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。安藤忠雄建築研究所所員を経て、1999年より新堀アトリエ一級建築士事務所主宰。独立後、リノベーションを中心として、設計のみならず建築の保存再生から地域文化活動へと広く携わり、建築の企画から利活用にわたり、技術と制度を活用した柔軟な提案を行っている。一般社団法人HEAD研究会理事、一般社団法人住宅遺産トラスト理事。
著作
2002年:リノベーション・スタディーズ(lixil出版)共著
2004年:コンバージョン設計マニュアル(エクスナレッジ出版)共著
2005年:リノベーションの現場(彰国社)共著
2016年:建築再生学(市ヶ谷出版)共著 ほか

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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