マンション管理の仕事に従事し、マンション管理の世界を熟知するなかで、古いマンションほど安心できると考えるようになった横山顕吾さん。マンション専門に不動産投資を始め、現在41戸を所有し、自らを「分譲マンションコレクター」という。
【前編】ではマンション専門に不動産投資を始めたきっかけや購入の判断基準などを紹介した。【後編】では、いかにして物件を買い増していったのか、気になる融資攻略法などを紹介する。

2戸目以降はネット検索で。月に1つは掘り出しものがある!
最初はゆっくりと実績を積み、徐々に金融機関を広げて拡大
新聞チラシをきっかけに1戸目を購入した後は、健美家のような収益不動産専門のサイトをチェックしながら検索していった。
「ネット検索していくと月に1つは掘り出しものといえる、条件のいい物件を見つけられるようになってきました。条件がいいとは、建物の状態や立地、管理の状態を含めた総合評価のよい物件です」
2戸目は60u程の分譲マンションを広島市佐伯区に500万円程で購入。6万4000円の家賃で貸している。
「購入の決め手は広くて、近くに大型スーパーがあり、駐車場付きで、『プレキャストコンクリート造り』と劣化しにくい構造であることがポイントです」
投資を始めて2〜4年目は、1年に3〜6戸、5年目にはなんと10戸を購入した。1年に10戸とはすごい数である。どのようにして融資先を開拓していったのだろうか?
「最初は地元の信金や信用組合で融資を受けていました。1度融資を受けたら、ある程度の期間、結果を出さないことには同じ金融機関で次の融資を受けるのは難しく、時間を要します。そのため最初はゆっくりと実績を積み、徐々に金融機関を開拓し、ペースアップしていきます。今は9行から融資を受けています」
融資先の金融機関は投資用不動産を購入する際の仲介会社から紹介してもらう。仲介業者も融資がつかないことには、購入に至らないため、必死に探すという。
「金融機関に対して、マンションの評価を行う自作のチェックシートなど、自分で集めた膨大な資料を使って、なぜこの物件を購入したいのか丁寧に説得すると、融資が下りるようになりました」
購入した物件が増えても、頭金を用意せず、諸経費を除いた購入費用分を「フルローン」で融資を受けるスタンスは変わらない。金融機関が仮に500万円を融資するとしたら、その物件に500万円の価値があることの証明だと考えている。
管理は自主管理で、入居者の募集は、地元の不動産屋に依頼している。広島に住んでいるため、基本は自分で行ける範囲の県内の物件しか買わないが、実家のある岡山でもいい物件があれば買うことがある。
ダントツで買ってよかった物件は駅前のタワマン!
投資先として難しいのは新築や、自主管理のマンション
次に、41戸購入したなかで「良かった」と思う物件について聞いた。
「購入して『得した』と思うのは広島駅前のタワーマンションです。立地や利便性がよく、新築時に4000万円台で購入しました。家賃22万円と高く、ゲストルームも利用できる点も魅力です。広島大家塾でゲストを招く際に、よくゲストの方に泊まっていただくのですが好評です」
購入した物件のなかで『難しさ』を最も感じた物件もこの駅前のタワマンだった。

「新築の場合、いつもの手順で管理の状況を調べるわけにもいかず、管理の仕方がまるで読めません。どんな人が住むのか、どんな方向性で進んでいくかが分からないのです。駐車場の管理1つとっても仕組みが異なりました。最初は興味があって総会に参加していたものの、いろいろな難しさがあり、意見を言うことから手を引くことにしました」
分譲マンションのなかでも、管理会社が入っていない『自主管理のマンション』も避けたほうが無難だという。
「自主管理のマンションはより厳しい調査が必要です。何戸か購入していますが、基本的に自主管理のマンションは理事長が牛耳っていることが多く、何年もそのマンションを牛耳っていると、みんなから集めた管理費を自由にできてしまうと勘違いする可能性も否定できません」
万一、管理費などの使い込みが発生した場合、管理会社の問題であれば、管理会社が賠償することもある。自主管理の場合、仮に理事長が使い込んでいたとして、理事長が引っ越しをすると、行方がつかめなくなる場合もある。そうしたマンションを買うと、積立金がたまっていないようなケースもあるという。
今年4月には国の新制度となる「マンション管理計画認定制度」と、一般社団法人マンション管理業協会による「マンション管理適正評価制度」がスタートする。マンション管理に詳しい横山氏は、これらの制度により、マンション管理が可視化され、正しく評価されることで、投資初心者でも、「ババを引きにくくなり、より買いやすくなる」と考えている。
また、横山氏の方法は、自己資金を使わずに、金融機関の評価をもとに、融資を活用して買い進めるため、「再現性が高い」という。「これからは自分のやってきた方法を、ブログなどを通して広く伝えていきたい」と、今後の抱負を聞かせてくれた。
健美家編集部(協力:高橋洋子)