世界有数のオフィス街であり、人口密度も世界屈指のニューヨーク中心部マンハッタン。コロナ禍で一時はゴーストタウンのような雰囲気だった世界最強都市が、オフィス需要と賃貸需要の回復とともに完全復活。
「やっぱりニューヨークは世界最強」とばかりに、日系企業が続々と不動産の大規模プロジェクトに名乗りを挙げている。人と金の流れが戻ったマンハッタンの最新の不動産市場をレポートする。
三井、東急、森トラストが大型投資、総額は約1兆円!
縦に細長いマンハッタン島で近年特に熱いのが、中央部にある「ミッドタウン」とその下に位置する「ダウンタウン」とされている。
このミッドタウンの南端にある再開発エリアのハドソンヤードに、三井不動産が約6000億円を投じたオフィスビル「50ハドソンヤード」(地上58階建て、延床面積約269000平米)が昨秋完成した。
マンハッタンにおける単体のオフィスビルとして過去最大級の事業規模で、「Meta( 旧Facebook)」などのテナントが入居したことでも話題になった。
同社は昨年、ダウンタウンのチェルシー地区で高級分譲住宅を売り出すなど、「グローバルカンパニーへの進化」に向けて、ニューヨーク不動産投資に特に力を入れていることがうかがえる。
同時期には、ミッドタウンの東側エリア、世界的な金融、投資企業が集まるパーク街に、東急不動産が約2500億円を投じたオフィス・店舗ビル「425パーク・アベニュー」(45階建て)が開業した。
同社は、2012年に米国現地法人を設立し、西海岸や中西部を中心に賃貸住宅のリノベーション及び開発事業を中心に展開してきたが、10年目にしてニューヨーク中心部での大規模オフィス再開発事業への参画を果たし、悲願を達成したことになる。
さらに、森トラストも6月末、同じくパーク街沿いに立地し、世界最大のプラットホーム数を持つ鉄道駅グランド・セントラル駅に直結する既存オフィスビル「245 Park Avenue」のリノベーション事業に参画することを発表した。投資総額は1,000億円規模となる見込み。
マンハッタン一等地のオフィス需要は底堅く、日本からも巨額マネーが流れ込んでいる。
住宅市場も抜群の安定感、1ミリオン超えの物件が続々成約
異常な高騰を続けるローン金利の影響で、2023年は上昇ペースを落とすと見られている住宅市場だが、下降局面でこそ強みを発揮するのがニューヨーク不動産だと言われている。
実際に、現地の日系不動産エージェントは、「今年に入って住宅の成約数は減少傾向にあるものの、成約価格は下がっていない」と断言する。
例えば、億万長者が多く住むことから「ビリオネアロー」と呼ばれるセントラルパークにほど近いエリアに今年5月に完成したばかりの高級分譲マンション「One 11 residences at Thompson Central Park」。
50平米ちょっとの1ベッドルーム(1.3ミリオンドル=約1億8千万円)から100平米超えのペントハウス(4.25ミリオンドル=約6億)の99戸を販売しているが、売出しから半年で9割が成約済みだ。
セントラルパークビューの部屋は最低2億円からとなっているが、マンハッタン地区では珍しく利回り5%を見込めるとあって、一人で複数戸を購入する投資家も珍しくないという。このエリアはパーク街にも近く、一流の金融マンや外国人エグゼクティブの賃貸需要が見込める。
商業用不動産はバーゲンセール状態!?飛び込むなら今!
一方、マンハッタンの住宅以外の商業用不動産マーケットは今、「バーゲンセール」状態だと、現地の専門家は指摘している。
サンフランシスコの商業用不動産もかつての半額ほどで取り引きされていることは既報だが、マンハッタンでもかつては世界の富裕層の憧れの的だった五番街やパーク街などのオフィスビルや商業テナントビルが破格の値段で売りに出されているらしい。
ザラ創業者と知られるスペインの大富豪アマンシオ・オルテガ氏もこの機会に乗じて、ニューヨークを含むアメリカとイギリスで少なくとも10物件を20億ドル超で取得し、商業用不動産の世界的なポートフォリオを拡大させたという。(ブルームバーグ「世界の超富裕層、150兆円の商業用不動産市場で最も活発な買い手に」)
数年後にはまた上昇に転ずるに違いないブランド力のある立地の商業用不動産に、目端の利く投資家が世界中から集まってくるのは想像に難くない。いつの時代も全世界の羨望を集め続けるニューヨーク・マンハッタン。飛び込むなら今!かもしれない。
健美家編集部(協力:
(おおさきりょうこ))