株式投資で配当金生活を楽しむように、J-REIT(ジェイリート)でも分配金(株式投資の「配当金」と同義)を毎月もらおうというシリーズ。
J-REITは年2回決算があり、その決算毎に分配金が出る。ところがJ-REITの場合は、株式会社と違って、3月/9月決算銘柄がとても少ない。
そこで、物流施設特化型リートに似ている倉庫会社(9月中間決算+3月本決算)の注目銘柄も1つ紹介する。
9月決算のJ-REITや、9月中間配当のある株式会社の株をいま買うと、3ヶ月後の12月に分配金や配当金がもらえる。
9月決算のJ-REITは4銘柄だけ!
J-REIT では3月/9月決算の銘柄は少ない。系列リートとの合併などで、4銘柄に減ってしまった。
ジャパンリアルエステイト投資法人
グローバル・ワン不動産投資法人
大和証券リビング投資法人
ケネディクス商業リート投資法人
なお、ケネディクス商業リート投資法人も今年11月1日に吸収合併される予定。「KDX不動産投資法人」となり、決算期は4月/10月に変更される。
※証券コード、銘柄名、投資口価格、予想分配金利回り。「投資口価格」とは、J-REITの場合の「株価」に相当する。投資口価格と予想分配金利回りは2023年9月1日終値現在。
J-REIT(ジェイリート)とは証券市場に上場している金融商品「不動産投資信託」のこと。J-REITを購入すると、株を買うぐらいの小口資金で大規模大家さんの仲間になれる。
J-REITの分配金利回りは3~6%と、株式投資よりも高配当なものが多い。
そして、9月決算の注目銘柄は大和証券リビング投資法人と、J-REITではないが9月中間配当のある安田倉庫株式会社だ。
有料老人ホーム等のヘルスケア施設は長期の賃貸借契約で
住居は高い稼働率を維持する大和証券リビング
2006年に住居特化型リートとして上場し、2009年に名称変更して「日本賃貸住宅投資法人」となった。
その後、他のJ-REITを吸収合併し、2015年にメインスポンサーが株式会社「大和証券グループ本社」に交代。
2020年4月に、同じスポンサーを持つヘルスケア施設特化型リートだった「日本ヘルスケア投資法人」と合併。
その際、商号を「大和証券リビング投資法人」に変更した。
その成り立ちから、大和証券リビング投資法人は、住居とヘルスケア施設を持つ複合型リートだ。
ヘルスケア施設とは、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)等を指す。日本では高齢化が進み、2000年に介護保険制度が創設され、ヘルスケア施設が増えている。
同リートの2023年3月期末時点での資産規模は3,632億円。賃貸住宅7:ヘルスケア3の割合だ。
エリア別では、関東56.3%、近畿24.8%、東海6.9%、その他全国に分散投資をしている。
築年数別では、平均築年数は14.1年。そのうち、賃貸住宅の平均築年数は15.7年。特に15年~20年以下が多く、全体の5割強を占めている。
それに比べてヘルスケア施設の平均築年数は10.4年と少し若い。5年以下が25.0%、5年~10年以下が28.2%と、10年以下の物件が全体の5割強を占めている。
住居とヘルスケア施設という2本柱のおかげで、同リートはコロナ禍による大きな打撃を受けなかった。
賃貸住宅の平均稼働率は、最低だった2021年10月期でも97.1%もあった。前期(2022年4月期)の平均稼働率は98.6%だ。
「日本賃貸住宅投資法人」当時に「日次稼働率予測システム」を開発し、効率的に賃貸住宅の管理をしている。
個別物件(居室・駐車場)毎の空き情報や新規契約賃料の動向が、「2時間単位」でわかるシステムだ。この活用で高い稼働率を維持しているのだろう。
一方、ヘルスケア施設の運営には、優良なオペレーターを選び、固定賃料の長期賃貸借契約を結んでいる。
リスク管理として、多くのオペレーターと契約することで、バックアップ体制を整えている。万が一の場合は、別のオペレーターに運営を継続してもらうようにだ。
なお、同リートの株主(投資主)になると、一部のヘルスケア施設オペレーターによる優待制度を利用できる。例えば、有料老人ホームの入居費用の割引等だ。
ところで、同リートは2020年の合併により、「負ののれん」が約11億円も発生している。それらを含めた潤沢な内部留保を活用し、安定した分配金を出している。
外部成長としては、前期(2023年3月期)には公募増資を行い、賃貸住宅8物件とヘルスケア施設1物件を取得した。
今期(2023年9月期)は、「グランカーサ錦糸町」(東京都墨田区)を取得。2021年8月築の賃貸住宅だ。今後も資産規模拡大を目指していく方針だ。
大和証券リビング投資法人
予想分配金:第35期(2023年9月期)2,200円、第36期(2024年3月期)2,200円
保有物件数:250
取得価格合計:3,647億円(2023年7月3日現在)。
旧財閥系で準大手クラスの安田倉庫(株)
強みはメディカル物流とIT機器のキッティング等
物流特化型リートに似ている点がある倉庫会社に注目してみよう。
安田倉庫株式会社は、旧安田財閥系の準大手クラスの倉庫会社だ。
1919年 (大正8年)に「興亜起業株式会社」として創立され、1954年に社名を「安田倉庫株式会社」に復称した。
1999年に、東京証券取引所市場第二部に株式を上場。
2005年に、東京証券取引所市場第一部に株式を上場(現在は東証プライム市場)。
倉庫業と物流事業を、首都圏をメインにして全国展開している。東京港、横浜港、羽田空港等といった利便性が高く、好立地に物流施設を多く保有している。
また、医薬品専用の輸配送網を整備し、ワクチンなどの医療用医薬品や一般用医薬品の輸送を行っている。冷蔵庫設備を備えるなど、医薬品特有の細やかな温度管理が可能な保管環境を提供している。
医療機器の点検や修理、洗浄等も1箇所で対応できるサービスも整えており、メディカル関連が同社の強みだ。
IT機器に関しては、物流だけでなく、キッティングも請け負っている。
キッティングとは、PCやスマホ等の端末にソフトウェアのインストール等を行って、顧客がすぐに使える状態まで準備する作業のこと。
また、PC等の設置・運用・保守・回収・廃棄までを一連の流れとして請け負っており、これらIT機器関連の受注が好調で、今後も成長が期待される。
その他、オフィス移転や重要書類の文書保管等も行っている。
国際物流では、ベトナム、インドネシア、中国などに拠点があり、日本発着の輸送だけでなく、日本を経由しない三国間輸送も行っている。
鉄鋼や建材、大型機械の貨物輸送や航空輸送、中国国内でのEC物流をサポートしている。
これら総合物流の柱とは別に、不動産事業では安定的な収益を上げている。東京や横浜を中心に、オフィスビルやマンションを保有し、再開発事業も行っている。
2022年度から2024年度までの中期経営計画では、2024年度の営業収益650億円、営業利益40億円、経常利益48億円、営業利益率6%を目標として掲げている。
ところで、大手や準大手の倉庫会社はPBR(株価純資産倍率)が低い。
倉庫会社は総じて、土地が安い時期に広大な土地を仕入れて倉庫を建てている。そのため、土地の含み益が大きい。
しかし、安田倉庫のPBRは他社と比べても低く、0.37倍しかない。
「PBR1倍」とは、「株価」と「会社が保有する純資産」が同額という意味。
「PBR1倍割れ」というのは、「株価」が「純資産」より安いという事で、今の株価が「割安」と判断されているからだ。その会社を解散して保有資産を売却した方が、株価より高く売れるという意味でもある。
とはいえ、東証が「PBR1倍割れ」の企業に改善策を要請している事から、同社もいずれ改善策を行うだろう。
そうなると、同社の配当利回りが上昇したり、株価が上がる可能性がある。現在の配当利回りは2.60%だが、2023年3月期の配当性向は33.5%と低い。
同社の株価は現在1,000円前後なので、100株で10万円前後と買いやすい金額だ。
なお、株主優待として、「全国共通おこめ券」がもらえる。優待の権利確定は3月で、100株以上で2枚、1,000株以上で5枚、5,000株以上で10枚もらえる。
安田倉庫株式会社(東証プライム)
2024 年3月期(2023 年4月1日~2024 年3月 31 日)の予想配当金:1株につき 27 円
※9月末の中間配当金予想は、1株につき13.5 円。
※安田倉庫(株)の売買単位は100株。
予想配当利回り:2.60%(2023年9月1日終値現在)
さて、J-REITの9月決算銘柄の分配金、及び3月決算の株式会社の中間配当をもらうには、権利付き最終売買日である9月27日15時までに購入しておく必要がある。
最後に、投資は自己責任でお願いしたい。
健美家編集部(協力:野原ともみ)