7月1日から宅地建物取引業者の仲介手数料が改定された。不動産売買の仲介手数料の相場は「売買代金の約3%」であるが、400万円以下の宅地・建物の場合は、これまで売主からのみ最大18万円×1.1(19.8万円)までとなっていた。
それが同日から800万円以下まで対象を広げ、報酬の上限が最大「30万円×1.1(33万円)」に引き上げられた。さらに買主から不動産業者へ、最大33万円の仲介手数料を支払うことになった。
不動産業者に空き家ビジネスへの積極的な参加を促すのがねらいだが、これは投資家にとっては打撃ではないか。
そこで空き家の流通や投資事情をよく知る、一般社団法人 全国古家再生推進協議会(全古協)の大熊 重之理事長に手数料改定の背景やその影響について話を聞いた。

500万以下の物件を扱うのを敬遠する仲介業者も
全国古家再生推進協議会(以下、全古協)では、古家に投資をして安定収入を得る方法を学びながら実践するサービスを提供している。空き家の現状を分析して、適切なリフォームや客付けをアドバイスする「古家再生士®」の育成と、空き家投資家である「古家再生投資プランナーⓇ」の育成を行っている。
まずは仲介手数料改定の背景について聞きたい。対象となる800万円以下の空き家は、これまで仲介手数料が安いことで不動産業者から敬遠されていたのだろうか?
「古家は安いわりに、現在の法律を満たさない『既存不適格建築物』に該当することが多く、扱うには手間がかかります。売値が数百万の空き家を扱うよりも、数千万の物件を扱うほうが、手数料収入が大きいため、空き家に積極的に関わりたい不動産業者は少ないのが現状です。
大手では500万円以下の物件を持ち帰ったら叱られると耳にしたことがあります」
こうした現状を含め、空き家の流通促進のために国土交通省では手数料改定に踏み切ったのだが、現場の不動産業者や投資家はどう受け止めているのだろうか?
「一般の投資家は7月から手数料が改定されることを知らない人が多いですね。不動産会社でも知らない人が何人もいました。そもそも800万円以下の物件を扱う業者が少ないため、この件を知らないのでしょう」
仲介手数料が上がることで、空き家の仲介に積極的に参入してくる業者が増えるのだろうか?
「今回の改定により売る側、買う側の両者から最大66万円入ることになるため、不動産業者にとってプラスにはたらくことは明らかです。ただし買う側の負担が増えるために、成約率が落ちると考えることもできます。そのため空き家の流通促進となるかどうかはわかりません」
取材をした6月末時点で、手数料改定を前に、売り急ぎや買い急ぎとみられる動きはないようだ。古家の売買では交渉次第で数十万売値が変わることが関係しているのかもしれない。

空き家投資の利回りは14%程。投資家の投資意欲は年々増加
ほかにも手数料の改定が投資に大きな影響を及ぼさないと考える大きな理由がある。空き家への投資は投資効率が高いと考える投資家が一定数いることである。
「当協議会の会員は無料のメール講座受講者を含め、15,064人おり、前年度比33%で増加しています。空き家投資の利回りは14%前後で、投資家さんの投資意欲は高く、1棟アパートに投資をするより戸建を複数所有する方がリスクヘッジになると考えている方が多く見受けられます。
そのため多少、仲介手数料上がっても投資意欲は落ちないでしょう。しかし投資意欲に全く変化がないというわけはなく、躊躇する人がいるかもしれません」
今後、空き家投資をするうえでのアドバイスを!
「私は多くの経験があるため戸建に必要なリフォーム工事についてよく理解していますが、戸建は物件ごとに状況が異なり、リフォーム額の振れ幅が大きく、適正な工事や金額を見極めるスキルが必要です。
そのためには実際に物件を見て学ぶ、当協議会が行っている『物件見学ツアー』のような体験を通して大家力を養うことが重要です」
近年中古戸建投資が注目されて、中古戸建に投資をする投資家が増えている。なかでも東京・大阪・名古屋の3大都市圏に住む人が多く、都市部ではプレイヤーが増え、物件数が少なくなっているそうだ。
今後、注目すべきは地方の空き家だと大熊氏はいう。
「5月に出版した新刊『地方は宝の山! リスクを極限まで抑えて儲ける「空き家・古家」不動産投資』でもお伝えしているのですが、都市部で魅力的な物件が少ないのに対して、地方は手を加えれば、うまく再生できる物件が多く埋もれており、『宝の山』だと考えています。
特に我々が今注目しているのが金沢です。街並みが変わるような多くの再生事例があります」

能登半島地震以降、住む場所を求めて、金沢エリアで賃貸物件を探す動きがあり、家賃が上昇している。全古協のメンバーのなかでも良質な物件を供給する事は地域貢献にもなるため、金沢エリアに投資をする人が増えているそうだ。


「石川県のほかに、本でも紹介していますが、福島県や岐阜県・九州も空き家投資には最適なエリアでチャンスは多いと思います。今後、手数料改定で空き家の流通が多く出回るようになれば、工務店との協業がとても大切になります。経験豊富な工事業者としっかりと関係づくりを行うことをお勧めします」
空き家投資への関心が高まるなかで、手数料改定によって、空き家の流通が促進されていくのかどうか業界全体の動きに引き続き注目したい。
※取材協力:一般社団法人 全国古家再生推進協議会理事長 大熊 重之氏








