今年も確定申告の時期が迫って来た。
新しく収益物件を購入し、今年確定申告が初めてという不動産投資家の方々は戦々恐々としているのではないだろうか。
すでに収益物件を持っていて確定申告の経験がある方も、新しく収益物件を購入した年は、不動産所得の計算方法などを見直し、節税をするチャンスでもある。
不動産投資の税務基礎シリーズ20回目は、新しく収益物件を購入した年の確定申告で注意したいポイントを、節税の観点からまとめた。
■ 不動産所得の必要経費にかかる節税のポイント
- 建物や附属設備の振り分け
新しく収益物件を購入してまず問題となるのが、取得価格をどのように算定するかだ。
特に、建物と附属設備は、税法上の耐用年数が、それぞれ47年(鉄筋コンクリート)と15年であり、大きく異なる。建物の一部を建物附属設備に按分すると、その部分の1年間の減価償却費は単純に3倍になることになり、不動産所得を圧縮できる。
新築であれば、工事内容の明細をみて按分すればよい。給排水設備や電気設備、ガス設備が附属設備となる。
中古物件を購入した場合は少々手間がかかる。建築時の資料を入手して、取得時までの減価分を控除し、建物と附属設備それぞれの未償却残高割合を求めて按分するのが基本だ。
土地付き物件の場合、購入価格を土地と建物に按分する必要もある。
- 前払い未払い経費の処理
前払い、未払いの経費の処理にも気を付けたい。
未払いの経費は、不動産所得の必要経費に計上することで、節税になる。未払いであっても、年末までにモノの引渡しを受けていたり、サービスの提供を受けていたりして、支払う金額が確定していれば、必要経費にすることが可能だ。
ただし、貸借対照表を作成する場合は、その分「未払費用」と記載しなければならない。
逆に、前払いの経費は基本的に必要経費にはできない。不動産所得からは適正に除外しなければ調査などで指摘される原因になる。リフォームの手付金などは高額となるので気を付けたい。
ただし、例外的に前払いであっても、サービスの提供にかかる費用で、1年以内に提供をうけるものは必要経費に計上できる。
- 家事関連費の按分計上
日常生活に関わる家事関連費についても、必要経費に計上できるものがある。一つ一つは微々たる金額であっても一年分となれば大きな金額になり、節税になる。
賃貸経営の場合、賃貸業の日常的な業務に必要な費用であれば、その部分を区分することで必要経費に計上することが可能だ。
具体的には、管理業務に要した旅費交通費、車両費、自宅兼事務所の家賃、水道光熱費などが挙げられる。実務的には、利用した時間によって按分したり、車両であれば走行距離によって按分したりする方法がある。明確に事務所用の部分が分けられているのであれば、その床面積によって按分する方法もある。
■ 節税に役立つ各種届出の確認
各種届出についても、期限があるものがあるので注意したい。
厳密に期限が決まっている届出で、確定申告にも大きな影響があるのが、青色申告の承認申請の手続きだ。青色申告の承認申請書の提出期限は、最初に青色申告をしようとする年の3月15日までだ。
確定申告時に承認申請書を提出すると、その年分ではなく翌年分からの適用となってしまうので注意したい。
ただし、新たに開業した場合には、開業日から2カ月以内に提出すればその年分から適用となる。
青色申告で最も大きなメリットは、最大65万円の控除だ。家族への専従者給与を必要経費に計上できるのもメリットである。上述した家事関連費を必要経費にできるのも、基本的には青色申告を前提とした話になる。
意外に知られていないのは、減価償却資産の償却方法の届出だ。個人の場合、何もしなければすべての資産は定額法で減価償却することになる。だが、届出を提出すれば、建物、附属設備、構築物、ソフトウェア以外の資産は、定率法によることも可能だ。定率法によることで、早期に比較的多額の減価償却費を計上することができる。
たとえば、複数の一棟マンションを自主管理しているケースなど、賃貸事業用の車両を取得することもあるだろう。車両であれば定率法による減価償却も可能である。
償却方法の届出書の提出期限は、確定申告書の提出期限と同じであるから、確定申告作成時に検討しても間に合う。
節税メリットや手間を考えたうえで、各種届出を提出期限までに提出することを検討してみてもよいだろう。
なお、過去の税務基礎シリーズに関してはコチラを参照して頂きたい。