こんにちは、DX@母ちゃんです。ようやく10月に入り、暑過ぎた夏の勢いが少し和らいできました。秋らしい風を感じると、今年ももう年末へ向かっているのだなという気持ちになります。
■80代の独居高齢者の家賃が遅れがちに
さて、今年8月中旬頃、家賃入金がなかった入居者様がおられました。物件取得前からの入居者様で、売主さんからは「少し滞納がち」と事前に聞いていました。1人暮らしの高齢女性(80代)で生活保護者、EVなしの物件で3階にお住まいでした。
連帯保証人なし(契約書上は存在しますがその方が亡くなった後は更新されていませんでした)、緊急連絡先なし、保証会社なしで引継ぎを受けましたが、保証会社だけは引継ぎ後に当社負担で加入しました。
しばらくすると、当月家賃が当月中に振込があればマシで、そのうち1ヵ月遅れの賃料も入ってこない状態に。遅れたら保証会社に請求するのですが、少しマズいなと思い、マメに連絡を取るようにしました。携帯をお持ちでなかったので、スタッフが近くへ行った際に必ず立ち寄るようにしていました。
1ヵ月遅れでも賃料が入ってこない状態だったある日、新聞屋さんから連絡が入りました。「いつも新聞を入れるとすぐなくなるのに、今は2日前の新聞が入ったままなので、室内を確認して欲しい」という内容です。
すぐにスタッフが現地へ向かいました。ピンポンを押しても誰も出て来ません。しかし、窓の外から室内を見ると、窓が開いて電気が付いていました。安堵した様子のスタッフから「お婆ちゃんと連絡が付きました」という報告があり、ホッとしました。
この女性は身寄りがなく、緊急連絡先になる方もいません。夏の暑さでバテて部屋にこもりっきりになっているのはお年寄りにとって危険です。何とか施設などに入れてもらえないかと福祉課に相談させて頂きました。
しかし、「連絡先がない、身内もいないというということは、何かあった場合に対処できないから」と相談した施設はどこもNGでした。
また入居者様自身が、「ここから動きたくない」という意志を固くお持ちでした。管理会社として何か出来る事はないかと、日常で動きがない場合は管理会社側へ連絡が入るような見守りサービス等を探しているうち、時間が経って行きました。
9月の中旬頃、経理から、「また入金がない」という連絡があり、スタッフが現地へ駆けつけました。周囲の状況から「これまでと違う」と感じたそうで、警察へ通報して解錠作業をし、安否確認をする事になりました。
残念ながら室内でお亡くなりになっていました。内廊下の窓にはハエがおり、ドアポストを少し開けるとすぐに特有の臭いがしたといいます。死後、そんなには経過していなかった事だけが救いですが、室内には生活していたままの荷物が残っていました。
■心理瑕疵のある物件の告知について
その後は警察が現場検証を行い、ご遺体を運び出しました。その後、警察から「身内が見付かった」と連絡があり、ご遺体が引き取られていきました。次はご遺族と連絡を取り、室内の現状を確認頂いた上で、遺品の撤去、原状回復の請求をしなくてはいけません。
ご遺族は「ご迷惑をお掛けして申し訳ございません」と全額を支払って下さいました。そして部屋の明け渡し後、リフォーム工事を掛ける事になりました。見た目ではわかりませんが、心理的瑕疵物件となってしまったこの部屋をどうするか、悩みます。
心理的瑕疵による告知基準については、死亡理由が「自然死」や「日常生活での不慮の事故」の場合は、原則として告知は不要です。一方、「自殺・他殺・火災」による死亡があった場合は、告知義務があります。
今回の場合は「自然死」に当たる為、告知義務はありませんが、貸主としてトラブル回避の為、ウチでは「心理的瑕疵あり」として、募集の際は一定期間、告知する事にしています。
賃貸の場合、ガイドラインでは「告知義務原則3年」と言われています。その期間は他の部屋よりも家賃を少し減額して賃貸募集をすることになりますが、仕方ありません。
まれに、「独居高齢者の入居はお断り」という賃貸募集を目にする事があります。不動産賃貸業はボランティアではありません。事業として経営していますので、このような募集もやむを得ないのかもしれません。
ただ、私個人としては、高齢者の入居をお断りしたくないのが本音です。高齢者の方が自分の身内であったり、若しくは歳を取った自分だったりに重なるのです。誰でも歳を取りいつかは死にます。他人事ではありません。
■高齢者の引っ越し先を見つけることの難しさ
この物件は木造物件で築40年を超えています。外壁にはヒビが入り、鉄階段もサビて下の方には穴が開いて危険な状態です。考えた末に、建て替えの方向で進めることにしました。
1階に4戸、2階に4戸の2DK×8戸のアパートですが、階段の劣化のために2階部分は募集をしておらず、空室です。ワタシの購入時は1階に3人の独居高齢者の方が住まわれている状態でした。
建て替えるにあたり、退去をお願いしたところ、1人は子供さんの家の近くへ移動され、残った2人の方も同じエリアにある物件へお引越して頂く事で合意を得ました。
ここで少し問題が起きました。このお二人には、2DKの部屋から、ワンルームのお部屋へ引越してもらうため、荷物の大部分が入りません。結局、荷物は引越しの際に必要な物だけを持って出てもらい、残った荷物を処分するという事になりました。
説得をするのも荷物の話をまとめるのも簡単ではありませんでしたが、引越し先が見つかっただけラッキーです。同様のケースで、高齢である為に次の引越し先がなかなか見付からないということも多いのです。
引越し先だけでなく、病院も同じです。体の具合が悪くて入院したくても、身内が他にいない、緊急連絡先もないという人は、受入先を見つけるのが困難です。福祉ではそれ以上の事は対応できないと言われます。
■賃貸経営は非常にアナログな世界
少子高齢化で、高齢者は増え続けています。このような困り事が日本中で増えて、日常茶飯事になっていくことでしょう。そして、自分自身が後期高齢者になる日も、近付いて来ています。
賃貸経営は非常にアナログな世界です。いくらDX化が進み、IT重説契約が進んだとしても、金融商品の様に数字だけでクリアできない部分がたくさんあります。そこに人が住んでいるのですから。
独居高齢者もアナログな賃貸経営問題の一つです。現役時代に何十年と納税をし、日本という国に多くを貢献して来た高齢者の方たちに、少しでも福祉の手が入る事を現役納税者として願っています。
本日も最後までお読み頂き、ありがとうございます。
ではまた次回、皆様お会いしましょうね~(^^)/