さて、過去6回にわたってご紹介してきた、初めての競売シリーズが、いよいよ佳境を迎えますよ〜!( たぶん )
うっかりと妻の出産日直前に初めての競売落札をしてしまった私でしたが、狼狽えたのも束の間、すぐに代金納付からの占有解除の作業が待っておりました。
参照:競売落札完了!?落札後の流れと占有解除の強ぉい味方「 不動産引渡命令申立 」とは?初めてのケーバイ<エピソード6>
その後、血反吐を吐きながらも無事に代金を納付。その際に持参する書類の準備等もなんとか無事に済ませました。このあたり、詳しくはプロ( ドクターK氏 )のコラムをご参照下さい( ご本人無許可リンク↓ )
参照:競売落札後はどうする?いきなり裁判所から代金納付通知が来て慌てないための事前準備
さて、代金納付後はいよいよ占有者との立ち退き交渉、「 占有解除 」の開始です。
■ 初めての占有解除! 債務者兼占有者との電話会談
話が前後しますが( 構成下手か )、代金納付前に裁判所から「 売却許可 」という書類が発行されます。これがあると課税証明書の発行などが可能になり、競売物件の詳細なデータを閲覧できるようになります。
債務者( 占有者 )の実名、連絡先などもわかります。この時の私もそれを確認し、債務者( 現占有者 )の住所へ文書を送りました。内容の詳細は流石に忘れましたが、こんな内容でした。
・ご自宅が競売に掛けられた事へのお悔み
・私が落札したこと
・折り入って話があるので連絡できる電話番号を教えて頂くか、電話が欲しい
・私が落札したこと
・折り入って話があるので連絡できる電話番号を教えて頂くか、電話が欲しい
手紙は配達記録郵便で郵送しました。( もうこの期に及んで内容証明なんか必要ないと思ったのでw )
すると数日で、占有者から電話が!私は仕事中で電話に出られず留守電が残っていた為に、改めて折り返しました。債務者にイキナリ電話をするなんてドキドキです。初めての告白を思い出して満更でもなかったです♪( 変態 )
ぴぴぴ・つつつ・ぷっ!
とぅる〜
とぅる〜
とぅる〜・・・
もしかしたら電話に出ないかも? 出て欲しい! でも出たら何をどう言う?
(;´Д`)
複雑な思いを抱いていると、
・・・ガチャ
間もなく呼び出し音が途切れ、受話器を上げた音が聞こえました。
占有者「 ・・・はい秋元です 」
よしゆき「 あ! すみません! ワタクシ よしゆき と申しまして。先ほどお電話を・・・ 」(;´Д`)
秋元夫人「 あ、よしゆきさんですね。少々お待ちください! 」
債務者本人であり、占有者である旦那様に受話器を渡した様子が感じられました。
占有者秋元「 お電話代わりました。秋元です 」
受話器越しの声の感じだと年齢は私より上。当時40代半ばか、もう少し上のようにも感じました。
よしゆき「 あ! 初めまして秋元さん。お手紙を差し上げましたが、ワタクシ、不動産の買い受け人となったよしゆきと申します。この度の件、誠にご愁傷さまで御座いました! 」(;´Д`)
ご愁傷様? 合ってるのかソレ?
思わず自分の口をついて出た言葉に、自分でも少し驚いた事を覚えております(笑)
占有者秋元「 ・・・渡辺さん、手紙を読ませて頂きましたが、相談したい事って何なの? 」
ズバリと要件を切り出します。当時、秋元さんの事を「 言葉が少ない方 」なのだと思ったのですが、その後の経験から「 このような状況にある方は余りペラペラ喋らないものだ 」という事を知りました。
よしゆき「 ・・・あの、ご承知かと思いますが、そちらの不動産は所有権が”正式”に私の物となっておりまして・・・ですので・・・そのぉ・・・ 」
占有者秋元「 ・・・ああ、出ろって言うんでしょ。分かってますよ? んで、具体的にワタシラどうした方がイイの? 」
しどろもどろ加減が攻守で逆じゃん!(;´Д`)
と思いましたが、こちとら占有解除初心者です( 向こうも占有初心者でしょうよ )。ちなみに占有解除の経験のある不動産屋の友人から事前に知識を得ようと相談したところ、迷わず反対されました。
いや、止めた方がイイって(-_-;)
俺の先輩、台所から包丁持ち出されたって言ってたぞ!
そんな物騒な情報を刷り込まれたモンですから、30代前半の専有解除チェリーボーイの声が震えるのも無理からぬことと思って下さい。

よしゆき「 いや、あの・・・当然、条件次第とはなりますが、引き続きそちらに住んで頂く事も考えているんですが・・・ 」(;´Д`)
占有者秋元「 え? オレら出て行かなくて良いの? 」
よしゆき「 あ、いや、条件次第ですよ!? その条件を、お会いしてお話をさせて頂きたいのですが・・・ 」
こうして占有解除初心者と占有初心者の第一回会談が行われる事となりました。家の鍵すら入手困難なこともある競売の占有解除ですが、話の流れから、そのあたりは問題がなさそうで、ホッとしました。
■ 占有者と対峙!悲しき占有者はなぜ競売に!?
後日、私は「 自分の所有物 」となった落札物件へ車で向かいました。現着すると敷地内には占有者が駐車していたため(笑)、近隣のパーキングに車を停め、再び徒歩で向かいます( 偉そうに )
改めて見ると、ますます悪くない物件です( 自画自賛 )。しばらく見惚れてから気合を入れなおし、玄関チャイムのボタンを押しました。
・・・ン
ポーーーーン
屋内でチャイムが響くのが微かながらに聞こえます。
よしゆき「 あっ!本日お伺いする予定でした よしゆき と申します! 」(*´▽`*)
程なくして玄関が開くと「 中肉中背 」直球ど真ん中の50代位の茶髪の男性が、上下ジャージのチョイワル・ファッションで佇んでいます(汗)。債務者兼占有者である秋元本人であろう事が容易に伺えました。
ハン・・・シャ!?(;´Д`)
0.02秒くらい怖い考えが浮かびましたが、少し違う。どちらかと言うとガテン系( 死語 )の匂いがしました。
・・・ああ、どうぞー。(-_-)
秋元氏は不愛想に言うと廊下の奥右手のリビングへ消えて行きました。後ろから、今度は奥様が出てこられリビングへ促してくれます。見ると、奥様の方も上下ジャージなファンキーな出で立ちw
3点セットで想像したイメージとは、正直まったく違います。しかし、玄関、廊下やリビングはキレイに整理されており、私は少しだけ安心しながら、促されるままにリビングに置かれた座布団に座りました。
対峙する、ファンキーな占有者と占有解除初心者の私。緊張していると、奥様がお茶を出してくれました。
よしゆき「 あの・・・本日はお時間頂きありがとう御座います。先日もお電話でお話をさせて頂きましたが、この家の所有権が私に正式に移りまして 」
そう言いながら、許可決定の紙と識別情報( いわゆる権利書 )をファンキー夫妻にお見せしました。念のために、どちらもコピーを持参しております。
よしゆき「 つきましては、今後はこちらの家を賃貸に出そうと思っております 」
ファンキー秋元「 アナタは住まないの? 」
よしゆき「 はい。私がこちらに住む予定はありません。貸家で運営していきます 」
ファンキー秋元「 え。そうなの? アンタ大家さんなの!? 」
よしゆき「 ・・・はい 」
実はコレが大家デビューなんですよ〜!!!(^^)/
というインフォメーションは逆にファンキーが心配になる可能性もあるので割愛し(笑)、あくまでも慣れている感を演出しました。
ファンキー秋元「 へぇぇぇぇ・・・若いのに、凄いねぇ・・・ 」
ファンキーは私をマジマジと見つめた後に奥様と顔を見合わせ、ため息のように呟きました。
よしゆき「 ですので、秋元さんにこのままお住まい頂けた方が、私としても時間と資金の節約になります 」
言いながら、造りこんで来た資料を秋元夫妻の方へ滑らせました。老眼鏡をかけながら資料を手に取るファンキー。そこに書いた条件は以下のようなものでした。
・家賃は月額75,000円で2年更新、更新料なし
・契約書は公正証書にする
・現状をお互いに確認し画像に残す。極端な汚損破損は修繕費を請求する
・エアコンや照明などの設備に関しては自己負担で修理
・雨漏りなどの家屋の問題はよしゆきが直す( 善管注意義務は有り )
・契約書は公正証書にする
・現状をお互いに確認し画像に残す。極端な汚損破損は修繕費を請求する
・エアコンや照明などの設備に関しては自己負担で修理
・雨漏りなどの家屋の問題はよしゆきが直す( 善管注意義務は有り )
ファンキーはこれを見て、「 ローン返済が10万を超えていたから、環境が変わらずに安くなるのは助かるな 」と言いました。私はココでもう一押ししました。
よしゆき「 もし、他の条件も飲んで頂けるならば、家賃は7万円にします 」
仮にこれで住んでもらえるならば、リフォーム代が浮くので利回りはネットで17%を超えてきます。
ファンキー秋元「 7万かぁ、悪くないなぁ 」
住み慣れた自宅を追い出されなくて済むかもしれないという安堵感からか、ファンキー秋元は急に饒舌になり、なぜ競売に掛けられる事になったのかを語り出しました。
長く塗装屋に勤めていたが起業したくなり、40代で独立。子供はおらず夫妻で仕事を請けてきたが、体調を崩してファンキーが入院をしたのを機に仕事を請けられなくなり、住宅ローンの返済が滞ってしまった・・・。
ファンキー秋元「 半年くらいローンを払えなかったんだけどさ。銀行もエゲツナイよなぁ、急に競売にかけられたんだよ。でもホント、何処にでもある話だけど、俺が甘かったばっかりに苦労かける事になってさぁ 」(;´Д`)
ファンキーは奥さんに語り掛けるように、ぶっきらぼうに言い放ちました。奥さんは正座しながら下を向き、ほとんどこちらの方を見ることがありません。
それは大変でしたね・・・。今よりも余裕のなかった当時の私はたぶん、適当に労いの言葉をかけ「 なんとか住んでもらう方向にならないか? 」に考えを巡らせていたように思います。
その後も色々と話をしましたが、とにかく当日では結論を出せないので後日に改めて電話を頂戴する事になり、私の「占有解除初戦」は包丁で刺される事も無く終了したのです(笑)
■ エンドロール 競売不動産を見ていて思うこと
一週間後、ファンキーより電話が入りました。
提案いただいた内容は非常に魅力的だが、検討した結果、実家に戻る事にした。踏ん張ってみたがダメだった。自分が無力感でもがいた場所に長く住み続けるのはこれから先、苦痛だ。
そのような内容でした。あれからも競売や公売に何度か参加し、物件を落札。占有解除を何件か経験した私でしたが、ファンキー秋元以降、債務者の思いや苦痛を直に聞けたことはありません。
ですから彼のこの時の感情の起伏が伝わってくる声の感じは、未だに私の中に残っています。
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引っ越し当日。私は鍵を渡してもらう為に記念すべき「 第一号物件 」に向かいました。現地に着くと、荷物の搬出は終わっていました。私はレンタカーの運転席に乗り込むファンキー秋元から、家の鍵を受け取りました。
奥さんの姿を探すと、連棟建物の奥の家の玄関先でその家の住人であろう女性と二言三言言葉を交わし、抱き合う姿が見えました。
なんかバツが悪いな・・・。感じなくても良い罪悪感を私が感じていると、奥さんは小走りにトラックへ向かってきました。奥さんを助手席に乗せ、トラックが動き始めます。
チラリと助手席の奥さんと目が合い、自然とお互いに会釈をすると、そのままトラックは国道を走り去って行きました。その後のファンキー秋元夫妻がどうなったのかは、私には知る由もありません。
このあとリフォームを済ませた私の第一号物件には、結婚したばかりのカップルが入居されました。あっという間に赤ちゃんが生まれ、6年を過ぎたあたりでこのご家族が一号物件を買ってくれました。
売却して数年後に、「 第一号物件 」を見に行った事があります。夜の22時位だったと思いますが家の電気は点いており、中からは小さな、コホコホという可愛らしい咳が聞こえました。
「 あら? 子供さん、風邪をひいたのかな? 」
私が心配する間もなく、今度は心配する母親の声が漏れ聞こえてきました。なんと言ったのかは聞き取れませんでしたが、それは確かに、我が子への愛情の籠った優しい声だと感じました。
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不動産は上手く活かせば、人生を支え、守る武器となります。しかし反面、ちょっと使い方を間違えればそこには「 破産 」という結末が待っていることも事実です。
そんな事はわかっている。
オレは失敗しない。
不動産を持つ全ての人がこう思いながら不動産を買いますが、それでもこの瞬間も多くの不動産が競売に掛かるのです。
競売不動産を見る時に、出どころの分からない罪悪感をふと抱く時があります。そんな時に私が自問するのが、「 不動産は誰の物か? 」というものです。
答えは「 誰のモノでもなく、天下のモノ 」。
しかし、あえて言うなら、回答はこうなると思います。
「 それを上手く扱うことの出来る人が住みかとして、または武器として一時的に天下から預かるモノ 」
我々が不動産を扱うモノとして事業を行うのはもちろん、我々の手を通る事で天下の不動産がより多く、「 少しでも愛のある、体温のあるモノ 」として再生され、世の中に還元されてゆく事を願うばかりです。
長期に渡り書かせて頂いた「 実録!競売シリーズ 」でしたが今回で終了となります。さて、次は何を書こうかな〜!?(*´▽`*)
よしゆき今回の教訓
「 誰しも自分が失敗すると思っていませんが、世に競売不動産は排出され続けます。我々がフンドシを締めることはもちろんのこと、それら「 負動産 」を再生することも我々不動産投資家の責務だと思っています 」( ナニ真面目か? )