こんにちは。オロゴンです。9月9日に福岡博多で、「民泊一年生の教科書」の著者ぽんこつ鳩子さんのセミナーを聴き、民泊に興味を持った僕は、福祉事業を行っている鹿児島市で民泊事業をやってみたいと考えるようになりました。
僕が鹿児島で運営している就労継続支援の会社は、障害があるなどのハンディキャップある人たちが、一般就労を目指し働く訓練をする機会を提供する会社です。セミナーで、「民泊で一番経費がかかるのは部屋の清掃やベッドメイキング等の人件費」と聴き、ピンと来てしまいました。
「うちの会社のスタッフたちに清掃をしてもらえば、コストも抑えられ、雇用創出にもなって一石二鳥なのではないか」と思ったのです。
■鹿児島の民泊についてリサーチ
鹿児島は観光資源に恵まれた場所です。桜島や屋久島という雄大な自然、黒豚・和牛など素材を楽しむ日本料理を求め、コロナ前までは多くの外国人が鹿児島を訪れていました。
鹿児島空港に定期直行便があった香港・台湾・韓国・中国などの東南アジアの観光客を中心に観光客は右肩上がりを続けていました。令和元年の外国人宿泊観光客数は年間49万3千人にものぼります。
しかし、それは過去のお話。コロナの影響で、海外からの観光客誘致の牽引役となっていた海外4カ国との定期直行便が全てストップし、令和3年の外国人宿泊客は8千人にまで激減します。
これはピーク対比マイナス98%という強烈な数字であり、鹿児島の外国人向けの民泊事業者はこのインパクトに耐え切れず、多くが撤退してしまったようです。
いまだに、いわゆる「太客」である上海と台湾からの直行便再開のメドが立っていないため、鹿児島でのインバウンド需要については完全復活とは言いづらい状況です。既にインバウンドが絶好調の東京・大阪・福岡などに比べるとまだまだギャップがあります。
ただ、個人的な経験則では、こういう先行き不透明な時こそ「仕込み時期」ではないかとも思います。客足が戻ってから動いても、物件の取得競争も激しくなり、需要に応じてオーナーも強気になり家賃も高くなっていくでしょう。
■物件の検索から内見
楽観主義者で「大きなリスクがないならまずは始めてしまえ」がモットーの僕は、とりあえず民泊の事業化に向けて、走り始めてみることにしました。
博多から鹿児島に戻ると、会社の事務所周辺300mくらいの範囲で手ごろな賃貸物件を賃貸不動産ポータルサイトで検索。ビジネスホテルとの競合を避けるため、ファミリーでも泊まれそうな30㎡以上の部屋に絞りました。
すると、会社から徒歩1分圏内にいくつか該当物件が見つかりました。繁華街の通り沿いで、低層階はテナント、高層階は住居となっているようなビルです。3点ユニット・3階以上エレベーターなしの物件ですが、民泊では特に問題視されないことが多いとも聞きました。
1件目は会社の目の前で立地は最高だったのですが、管理会社からは「絶対にNG」と断られてしまいました。後々わかったのですが、近隣トラブルが多く、急激に増加してコロナで一気に減った民泊物件は、管理会社からのウケ(イメージ)がとんでもなく悪いようです。
2件目は築40年ほどのテナントビル。1F・2Fは居酒屋で、3Fと4Fが住居になっていました。部屋を内見したところ、室内には火災を感知する機械が取り付けてあり、廊下にも通報装置が付いていました。
民泊を始めるうえで、乗り越えなければいけないハードルの一つに、消防設備があります。
住み慣れた人間だけでなく、一見の宿泊客も安全に避難することができるよう、消防設備に関しては一般住居よりも厳しい基準が設けられています。その基準を満たすために追加工事などの対応が必要になる場合があるのです。
もともとテナントが入っているビルであれば、不特定多数が利用することを想定されているため、厳しい消防基準がすでに適用されています。この2件目の物件も、室内に自動火災報知機に連動した火災感知器が付いていました。
廊下の非常誘導灯については、廊下がオープンエアーであるため設置が免除されている様子です。これならば、消防工事で大きなコストはかからないのではと考えました。(消防設備については、落とし穴があるのですがそれはまた後日)
探してみて思ったのですが、繁華街にある、テナントビル内の賃貸物件はなかなか狙い目かもしれません。水回りなどの設備が古めであれば、空室に悩んでいるオーナーも多そうな気がします。
■最大の壁、オーナー交渉
さて、賃貸物件で民泊をやるうえで、消防設備面の他にもうひとつ大きくそびえたつ壁があります。それは、「オーナーから民泊をやる許可をもらえるかどうか」です。
健美家に掲載された鳩子さんとアカサカトモコさんの対談記事でも「民泊の許可をもらえる物件は100件あれば1件」という言葉が出てきます。
参照:民泊物件を探し当てられるのは100人に1人。馬力と情熱で物件を探し続ける人だけが成功できる!
僕自身も大家なので、オーナーが許可を出しづらい気持ちも重々理解できます。一方で、オーナーの気持ちがわかるぶん、相手との交渉を有利に進めることが可能になるかと思います。
まずは不動産会社を通じて、「民泊をやりたいので申し込みたい」とオーナーに伝えてもらいました。仲介業者さんはこのビルの管理会社も兼ねていて、普段からオーナーとの接点がありそうでした。
管理会社を通じて、オーナーが「一刻も早く空室を埋めたい」と思っている雰囲気を感じました。こういった背景を知っておくことも交渉をうまく進めるにあたって、重要な要素かもしれません。
内見から数日後、不動産屋さんから電話がきました。多忙でなかなか連絡がつかないというオーナーからの返事は、「民泊が儲かるくらいなら自分でやりたいくらいですよ。よくわからないから却下」というつっけんどんなものだったそうです。
覚悟していた答えではありました。そこで、ここからは次の交渉カードを切っていくことにしました。結果からお伝えすると、最終的にオーナーから民泊の許可を得ることができました。
現在、契約と民泊新法の申請に向けて動いている真っ最中です。
門前払いから、いかに交渉して巻き返していったかを次回以降のコラムで書いていきたいと思います。