• 完全無料の健美家の売却査定で、できるだけ速く・高く売却

×

  • 収益物件掲載募集
  • 不動産投資セミナー掲載募集

オーナーは「特約」で〝防衛〟を!「原状回復」条文を追加 「改正民法」解説③

賃貸経営/法律・制度 ニュース

2020/01/24 配信

壁のクロス、価値は6年で10%に
貼り替え費用請求も10%分のみ

020年4月に施行される改正民法では、不動産の賃貸借に関するルールが大きく変わり、マンション、アパートなどの賃貸管理へも影響する。

シリーズ3回目の今回も、昨年12月29日掲載の前回に引き続いて、ことぶき法律事務所(東京都新宿区)の塚本智康弁護士にご登場いただき、新たに加わる「原状回復」の条文について解説いただく。

原則、タバコのヤニ汚れによる壁のクロス貼り替え費用などを借主に一部しか請求できないことが改めて明確になるので、オーナーは、特約を設けて全額請求できるようにしておく〝自己防衛〟が必要となる。

改正民法の「原状回復」条文を解説する塚本智康弁護士
改正民法の「原状回復」条文を解説する塚本智康弁護士

改正民法には、次の条文が新たに加わる。塚本弁護士によると、「今までの判例や国土交通省のガイドラインなどの『集大成』を、条文として入れたもの」だという。

「【第621条】賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗収益並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」
スクリーンショット 2020-01-23 7.48.47

読み解くと、次のような意味になる。

部屋の借主は、壁のクロスなどに損傷した場合、部屋を借りる契約が終わったときに、「原状回復」の義務がある。

ただ、上記( )内に書かれているように、「普通にその期間、部屋を使っていれば、これくらい汚れるだろう」といった「通常損耗」「経年変化」は、借主は元通りにする義務がない。

また、「ただし」の後に書かれているように、通常損耗や経年変化のレベルを超える損傷でも、地震のように、借主の責任ではない理由によるものなら、借主は原状回復義務を負わなくてよい。

具体的には、たとえば壁のクロスの場合、張り替え後6年たてば、借り主が社会通念上、通常の使い方をしていたとしても、クロスの「残存価値」は10%まで下がる。つまり、6年たって借主が退去するとき、クロスがタバコのヤニでひどく汚れ、張り替え費用が10万円かかったとしても、クロスの価値は1万円まで下がっているので、オーナーは借主に原状回復費用として、1万円しか請求できないのだ。

同様に、4年でクロスを張り替えなければならない場合は、40%分の4万円まで価値が下がっているので、原状回復費用として4万円しか請求できない。
スクリーンショット 2020-01-23 7.50.39

特約結べば費用の全額請求可能に
契約書に金額を明示しよう

塚本弁護士は、「条文が入ったことで、実務は変わることはありません。ただ、借主の目が厳しくなるのは間違いないでしょう。『6年たっているので、オーナーは借主に対し、原状回復費用を請求できない』などと、強く主張してくる可能性があります」と指摘する。

〝防衛策〟として塚本弁護士が勧めるのが、賃貸借契約を結ぶとき「通常損耗補修特約」を入れることだ。たとえば、タバコのヤニ汚れで壁のクロスを4年で張り替えなければならない場合、借り主に交換費用を全額負担してもらうという特約を結んでおくのだ。
スクリーンショット 2020-01-23 7.52.00

ただ、これまでの裁判所の判決をみていると、「とくに契約書に金額を明示しておくことが大切です」(塚本弁護士)という。なので、特約を作るさいは、次のように内容を記せばよい。

まず範囲を特定する。たとえば、「(1)ハウスクリーニング(2)壁・天井のクロスの貼り替え(3)床フローリングの修復・交換―については、本来、賃貸人が負担すべき通常損耗・経年変化についても、賃借人が全額負担する」などだ。

次に金額を明示する。「(1)ハウスクリーニング費用●円(2)クロス張替費用●円(3)床フローリングの修復・交換費用●円」など。金額の上限は、合計で賃料の3カ月分を目安とするのが良い。

塚本弁護士によると、「タバコを吸ったら、壁の貼り替えでいくら請求するといった金額を書いているか書いていないかで、裁判所の判断がだいぶん変わってくるといわれています」という。

07年3月19日の東京地裁判決では、「室内器具の破損及び床、壁の張り替え等の原状回復費用並びにハウスクリーニング費用は借主の負担とする」というだけの記載では、「通常損耗補修特約の合意が成立したということはできない」とされた。

09年1月16日の東京地裁判決では、「借主の退去時の壁、天井、床、カーペットの費用負担については、下記負担割合表によります」として「居住年数~1年未満 借主90%、貸主10%」などとしていた場合でも、「通常損耗補修特約が合意されているものということはできない」と否定した。かなり厳しいのだ。

写真5
タバコ、ペットなら特約に盛り込んでも良い

項目多ければ入居者募集に支障も
「タバコ」「ペット」なら全額請求もOK

一方、塚本弁護士が危惧するのは、特約に金額を請求する項目を盛り込みすぎることで、部屋を借りるのが嫌がられ、入居者の募集に支障が出てくるのではないかということだ。

「タバコ、ペットの汚れくらいなら、『経年をみずに全額を請求する』と書いておいてもいいのかなと思います。管理会社の中にはいやがるところがあるかもしれませんが、オーナーさんの意見として、特約をきちんと入れてもらうよう要請したほうがいいと思います」

特約がなければ、原状回復費用を全額請求できないことを盾に、部屋を汚しまくる悪質な借り主が出てこないとも限らない。塚本弁護士のような専門家の知恵も借りながら、オーナーは、きちんと自分の身を守ることに知恵を絞りたい。

取材・文 小田切隆

【プロフィール】 経済ジャーナリスト。長年、政府機関や中央省庁、民間企業など、幅広い分野で取材に携わる。ニュースサイト「マネー現代」(講談社)、経済誌「月刊経理ウーマン」(研修出版)「近代セールス」(近代セールス社)などで記事を執筆・連載。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

アクセスランキング

  • 今日
  • 週間
  • 月間

不動産投資ニュースのライターさんを募集します。詳しくはこちら


ニュースリリースについて

編集部宛てのニュースリリースは、以下のメールアドレスで受け付けています。
press@kenbiya.com
※ 送付いただいたニュースリリースに関しては、取材や掲載を保証するものではございません。あらかじめご了承ください。

最新の不動産投資ニュース

ページの
トップへ