コロナが明けて海外への不動産投資を再開した個人投資家。東京都品川区に居住するIT企業で管理職の神向寺真彦さん(仮名、男性・51歳)は、コロナ前からマレーシアやタイでコンドミニアムを購入してきた。
新型コロナウイルスの感染拡大で渡航ができなくなった3年間は、日本にこもる生活を強いられたが、今年から海外へ自由に往来できるようになり、再び不動産アウトバウンド投資を始めた。
東京都内にも中古ワンルームマンションを区分で10戸を保有しているが、10年ほど前から海外へと目を転じた背景については、
「日本の成長性に期待が持てていません。人口減少の本格化がさらに日本の活力をそいでおり、不動産投資は、人口が増えている国・場所でするべきものではないかと考えました」
と話す。このままいけば日本の総人口は2050年頃には1億人を割り込んでいく。これから100年、200年先ではなく気候変動対策と同じように日本のマンパワー不足が経済を落ち込ませると危機感を抱く。
「不動産投資家の目線から見れば、東京23区であっても、今後は都心3区、都心5区、その他の区部といったように多極化が進んでいる」と述べて、投資適格エリアは日本の国土面積で見れば5%にも満たない範囲でしかない。不動産投資で成功する原則は、人口が増加して経済発展が見込める地域で行うことが鉄則だとしている。
給料も家賃も上昇中の世界観を味わう
「東南アジアには魅力がありますね。日本から距離も近く、時差も小さい。なにより経済成長が一番の魅力です。資産の分散先としても安定感があります。成長に伴い現地の不動産価格や家賃が上昇しますが、彼らの給料も同様に上がっていますので、どんどん生活水準が豊かになっています。
家賃には粘着性があり、物件価格ほどの急上昇は見込めませんが、それでも家賃が3~5%上昇することは珍しくないです。給料は、毎年それ以上に上がっているので家賃の負担能力も高い」と述べ、物件の売却益と家賃というインカムゲインの両方が追えるという。給料も家賃も上昇する日本の高度経済成長期を思わせる世界観を実感している。
確かに、足元の円安で来日するアジアからの訪日客の面々を見ると、モノ・コト消費に費やす勢いは目を見張るものがある。ジャパンアズNo1と言われたバブル期、円高で日本人がこぞって海外でブランド品を買い漁っていた当時のシーンとだぶり、日本とアジアの立ち位置が反転したかに見える。
マレーシアやタイといった新興国は、経済成長により足元の物件価格は上がっており、利回りは一昔ほど高くなくなっている点については、「そこは目先の利回りではなく将来の値上がりと、家賃の値上がりに期待していますね」と話す。
最近は投資の側面だけでなく、老後の生活や休暇で訪れるときに使う実需的な利用もできる。個人投資家が海外の不動産に参入するハードルも一昔より下がっている。不動産購入時のサポートだけでなく、購入後の管理まで面倒を見てくれる日本人スタッフがいる管理会社が増えているからだという。
家賃収入は現地の銀行に置き、現地で回すようにしているが、必要に応じてインターネットバンキングを使い日本に送金もできる。「今はIT技術が発達してスマートフォンさえあれば簡単に操作できます」と資金管理が容易になっている利便性も海外不動産投資のハードルを下げていると感じている。
国内の保有資産は組み換え予定
一方で、日本国内の不動産投資は、これから資産の組み換えを中心に展開する予定だ。地域の魅力が落ちたり、収益力が落ちたりする不動産に執着して頑張るよりも思い切って売ったお金で魅力的な資産に組み換えていく。
東京23区だけでなく、大阪や福岡、札幌など将来性のあるエリアは限られてくるので、そこでの取得競争は激しいが、「不動産価格が高い今は売り時だと考えているので、売却資金を活用していきたい」と今後を展望する。資産の組み換えが国内だけで限界があると判断すれば、海外の不動産も視野に入れているという。同氏が売却益や賃料収入で得る年間のキャッシュフローは秘密だと言う。
健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))