
「不動産の民主化」をスローガンに掲げて、大家向けの物件管理クラウドサービスや不動産投資勉強会などのサービスを展開しているヤモリは、2022年6月4日に初のオフラインイベントとなる「ヤモリサミット2022」を開催した。
初開催のイベントであったにも関わらず、実際に物件を複数運用している登壇者のリアルな講演内容に会場は大いに盛り上がり、非常に有意義なイベントだったと言えるだろう。
本稿では、複数開催されたセッションのうち、登壇者の不動産投資経験談など4つの内容をピックアップしてお伝えする。
持たざる者から
20棟までの軌跡
最初に登壇したのは、ヤモリの共同創業者で「きこり先生」と呼ばれる廣瀬氏だ。

廣瀬氏はサラリーマンとして会社勤めをする傍らで不動産投資を始め、6年で20棟の物件を購入してきた。
廣瀬氏いわく不動産投資はマインドが1番大事であり、最初は小さくてもいいから、とにかく「事業」をすぐに始めてほしいと言う。
今では20棟の物件を所有する廣瀬氏だが、最初に物件を購入したのは2014年3月で、物件を探し始めてから購入までに2年を要している。
不動産投資に興味を持ってから内見と見積もりの取得を繰り返し、何度も繰り返すうちに「これは」という物件が見つかり始めた。
しかし、金融機関になかなか相手にされず、実際の購入は難航したという。
何度もトライ&エラーを繰り返し、最初に購入できたのは札幌のボロアパートだった。
1Rが8室のアパートで、購入価格は1,800万円・利回りは20%。購入当初は空室が目立ったものの、DIYで修繕しつつ、8ヶ月かけて満室にした。
その後、浜松・北海道千歳市でそれぞれRC造の物件を購入した。しかし、廣瀬氏が当時を回顧して思うのは、良いRCは滅多に出ないことだという。
また、物件を購入するのであれば、銀行ウケが良いため土地付き物件がおすすめとのこと。
不動産投資は、特に最初は楽ではないし不労所得でもない。楽なことと楽しいことの共存は、事業が軌道に乗るまでなし得ないという。
多くの本やセミナーなどで様々なテクニックが語られているが、結局1番大事なのはやる気であり、まずは楽しんでゴリゴリできるマインドを持ってほしいとのこと。
最初はとにかく
知識をつけることが大事

2コマ目のセッションでは、廣瀬氏と事業家であるジェレミー氏とのトークセッションが披露された。
ジェレミー氏の得意分野はシェアハウスであり、ボロ物件を安く購入してから再生する手法で資産規模を拡大してきた。なお、ジェレミー氏が所有する物件の過半数は旧耐震物件とのこと。
両氏が言うところでは、初心者は安価な地方物件からスタートするのがおすすめ。
人口減少エリアでは特に、住居が減っているため「住むところに困っている人」が必ずいるとのこと。
最初は多くの物件を見て、様々な話を聞き、いろんな人に頭を下げることが肝要であり、自分のことをお客様だとは思わないことだという。
あくまでも「教えてもらう身分」であり、「お金を払わせてもらう立場」でいるほうが、不動産業者や先輩経営者など、様々な人たちと仲良くなりやすい。
また、多くの投資初心者が持つ疑問としてマイホームと投資物件はどちらを先に購入すべきかというものがあるが、住宅ローンは収益ローンの足かせになりやすいため、投資物件を先にすべきだという。
最初の資産形成を間違えなければ、次・その次へと続けていけるため、まずは知識をつけてほしいとのこと。
築古戸建のリフォームで
着実に資産規模を拡大

3コマ目のセッションに登壇したのは、設備工事会社に11年・東京ガスに17年勤務し、13年以上の不動産経営歴を持つ神氏だ。
神氏の主な投資手法は、築古の戸建をリフォームして高利回りを狙うというもの。本セッションでは、築古戸建投資のメリットや基本的な考え方などを披露した。
神氏は、不動産投資の初心者には、小さく始められる要リフォームの築古戸建投資がおすすめだという。
築古の戸建投資は大手が参入しづらく、不動産投資の世界ではブルーオーシャンであると言える。
その一方で、戸建投資は非効率的なので、キャッシュバイで投資規模の拡大を図ると時間がかかる点に要注意だ。
神氏がこれまで買い進めてきたのは、いわゆる「売れ残り物件」が中心だったので、ほとんど競合にならず買い急ぐ必要がなかったという。
築古戸建投資において重要なポイントは、事前に不動産屋へヒアリングして勝算があるかを確認することだ。
どんな人の入居を狙ってどういうリフォームをするのか、勝つための作戦を作戦を立てることが重要だという。
まずは本を10冊程度読んで知識をつけ、セルフリフォームによって初期投資を抑制できれば望ましい。
なお、不動産投資はチームプレーであり、全部1人でやろうとする人は失敗しやすいという。
神氏は物件を健美家などのウェブサイトで探しており、物件の目星をつけてから、物件近隣の不動産屋に意見を求める。
リフォームの内容についても、その時に不動産屋の意見を取り入れつつ決めるという。
個人の女性は
「とにかくあきらめないこと」が大事

4コマ目のセッションに登壇したのは、女性投資家・著者として活躍する八木エミリー氏だ。
八木氏は野村証券に勤めていた25歳の時から不動産投資に興味を持ったものの、当時はなかなか不動産業者に相手にされなかったという。
とにかく知識がないと上手くいかないと考えて100冊は本を読み、勉強し始めてから約1年を経て最初の物件を購入した。
最初の物件は愛知県の一宮市にある重量鉄骨の物件で、購入価格は4,800万円。
不動産業者に紹介されたノンバンクのローンを利用したが、ローンを使う恐怖よりも、地元である愛知県の活性化に貢献したいという思いが強かったという。
その後も銀行開拓に力を入れたが、イエス・ノーで受け答えが分岐するトークスクリプトを作ることが有効だった。
銀行担当者に「この人に融資しよう」と思わせるためには、とにかく対面してプレゼンすることが重要だという。
女性の場合は特に、銀行の担当者から結婚・出産の予定などを聞かれることも多い。
これは仕事を辞めてしまうのではという担当者の不安から出てくる質問であり、融資にこぎつけるためには、担当者の不安を打ち消すほどの明確なビジョンが必要だ。
結果的に、八木氏は銀行の担当者に「アーリーリタイアしたいと言って相談に来る人はたくさんいるけれど、リタイア後の計画がここまで明確なのはあなただけだ」と言われたことがあるという。
銀行の担当者と対等に渡り合うためには知識が必要であり、FPなど金融系の資格を取得するのは勉強の意味でもおすすめとのこと。
八木氏が当時を振り返って思うことは、素直に「わからないから教えてください」と言えることが、若い女性ならではのメリットであるということだ。
個人の女性はとにかくあきらめないことが大事であり、行動・熱意・本気度で勝負する必要があるという。
正しい知識をつけて
地に足の着いた不動産投資を
当日は昼から夕方まで多くのセッションが開催されたが、全体的な共通点は「正しい知識をつけることが重要」ということだ。
登壇者の経験談には、最初からローンを引いて始めたものや、築古戸建をセルフリフォームするところから始めたものなど様々なものがあった。
セルフリフォームというと投資初心者は特に不安を感じるかもしれないが、背伸びをしない規模で着実に足場を固めていくという点では、費用を抑制できる築古戸建投資もおすすめだ。
セルフリフォームも、正しい知識をつければ失敗の可能性を減らすことはできる。
興味を持った人は、セミナーや本などで勉強するところから始めてみてはいかがだろうか。
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取材・文:
(はたそうへい)