東証REIT指数が1年ぶりに高値をつけるなど、J-REIT(ジェイリート)市場が好調だ。
株式投資で配当金生活を楽しむように、J-REITでも分配金(株式投資の「配当金」と同義)を毎月もらおうというシリーズ。今から買っても間に合う4月決算のJ-REIT注目銘柄をご紹介する。
J-REIT(ジェイリート)とは、証券市場に上場している金融商品「不動産投資信託」のこと。J-REITを購入すると、株を買うぐらいの小口資金で、大規模大家さんの仲間になれる感じだ。
J-REITの分配金利回りは3~6%と、株式投資よりも高配当なものが多い。詳細については過去記事を参考にしてほしい。
4月決算のJ-REITは9銘柄!
注目は積水ハウスR、スターツプロシード、いちごオフィス
4月決算期の銘柄は9つある。
8956 NTT都市開発リート(元・プレミア投資法人)159,600円、4.46%
8972 ケネディクス・オフィス投資法人 775,000円、3.77%
8975 いちごオフィスリート投資法人 94,500円、4.41%
8979 スターツプロシード投資法人 228,800円、3.95%
3287 星野リゾート・リート投資法人 641,000円、1.93%
3298 インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人 17,650円、 4.36%
3451 トーセイ・リート投資法人 134,000円、5.34%
3309 積水ハウス・リート投資法人 91,500円、3.57%
3476 投資法人みらい 47,900円、5.18%
この中で、注目銘柄は次の3銘柄だ。
スターツプロシード、積水ハウス・リート、いちごオフィス。
※証券コード、銘柄名、投資口価格、予想分配金利回り。
「投資口価格」とは、J-REITの場合の「株価」に相当する。
投資口価格と予想分配金利回りは2021年4月2日終値現在。
賃料が約6.4万円と「平均的な所得層」が住む賃貸住宅に投資し、
安定的な運用のスターツプロシード投資法人
スターツプロシード投資法人は住宅特化型のJ-REITだ。スポンサーはスターツグループで、建築、不動産、管理事業をメインに、金融、出版、ホテル、介護・保育事業等も展開している。
不動産賃貸・売買仲介をする不動産ショップ「ピタットハウス」もスターツグループだ。
スターツプロシード投資法人の上場は2005年で、J-REITの中では古参だ。スポンサーが開発した賃貸物件を取得して運用するスタイルなので、リート自体の成長はゆっくりだった。
しかし、リーマンショックも乗り越え、現在のコロナ禍でも安定運用を続けているのは高く評価できるだろう。
同リートのホームページによると、日本の給与所得者の約9割が年収700万円未満で、民営借家(非木造)の全国平均賃料は約64,000円だそうだ。
そのため同リートは、最も安定した需要が見込まれる「平均的な所得層」を対象にした賃貸住宅をメインの投資対象としている。
各地域で平均的な賃貸住宅に投資を行うことで、賃料の将来的な変動リスクを抑え、安定的な運用を目指している。
最近は、資産規模の拡大に意欲が出てきたようで、今後に注目だ。
スターツプロシード投資法人
第31期(2021年4月期)予想分配金は4,530 円/口、第32期(2021年10月期)は4,500 円/口と発表している。
2021年4月2日終値現在の投資口価格(J-REITの場合の「株価」に相当)は228,800円、 予想分配金利回りは3.95%だ(売買手数料や源泉徴収税などは除く)。
保有物件数107 、取得価格合計879 億円(2020年5月30日現在)。NAV倍率1.07。
大規模な総合型リートの積水ハウスR
スポンサーが建設した物件は安心で、今後の規模拡大に注目
積水ハウス・リート投資法人は資産規模5,358億円の大規模な総合型リートだ。スポンサーは東証一部上場の大手建設会社の積水ハウス株式会社。
元々は、積水ハウス(株)をスポンサーとするレジデンスのJ-REITとオフィスのJ-REITに分かれていたのが、2018年に合併して現在の総合型リートに転換した。
物件の比率は、レジデンス46.8%、オフィスビル45.8%、ホテル7.3%だ。
ホテルは、マリオット・インターナショナルの最高級ブランドホテル「セントレジスホテル大阪」と、「ザ・リッツ・カールトン京都」だ。
総合型リートではあるが、どちらかと言うとレジデンスと大型オフィスビルの複合型リートに近く、景気変動に中立的で、相性の良い物件ポートフォリオと言えるだろう。
同リート自身も、生活拠点としての「住居」と事業活動拠点としての「オフィスビル」を中核資産に位置付けて、安定性と高品質を兼ね備えたポートフォリオ構築を目指している。
スポンサーの積水ハウス(株)は戸建住宅のイメージが強いが、賃貸マンションやオフィスビルも手掛けている。
そのため、スポンサーからのパイプライン物件も豊富だ。スポンサーが建設した物件なら安心、という点は大きなメリットだ。
そして、スポンサー会社はデベロッパーに軸足があり、物件を抱え込む心配は無いと考えられるだろう。
同リートのさらなる規模拡大に注目だ。
積水ハウス・リート投資法人
2021年4月期(第13期)予想分配金は1,641円/口、2021年10月期(第14期)1,626円/口と発表している。
2021年4月2日終値現在の投資口価格(J-REITの場合の「株価」に相当)は 91,500円、予想分配金利回りは3.57%だ(売買手数料や源泉徴収税などは除く)。
保有物件数123、取得価格合計5,358億円(2021年4月1日現在)。
NAV倍率1.10。
「一期一会」が由来のいちごオフィスリート
中小ビル再生が得意で、賃貸されやすい工夫も光る
いちごオフィスリート投資法人はオフィス特化型リート。資産規模は2,061?億円で、J-REITでは中堅クラスだ。
スポンサーは東証一部上場の不動産運用事業を主力とする、いちご株式会社だ。
「いちご」という社名は果物のイチゴではなく、千利休が説いた茶人の心構え「一期一会(いちごいちえ)」が由来。「人との出会いを大切に」という精神を理念にしている。
同社は「心築(しんちく)」と銘打ち、古いビルを壊して建て直すのではなく、建物を活かして改修・再生することを柱とする事業に取り組んでいる。
いちごオフィスリートの保有物件も、効率良く再生出来る中小型ビルが中心だ。
中小型ビルのメリットは、東京では新規建設が少ないものの、手頃なオフィスに入居したい中小の事業者は多数ある。そのため、リーシングが容易な点だ。
コロナ禍の中で、大企業はテレワークを推進している。しかし、中小事業者はテレワークの態勢が整わず、オフィスの縮小も進んでいない事からも、中小オフィスの借り手は多いと考えられる。
その上、いちごオフィスリートはフロアーごとに貸す方法だけでなく、「いちごレイアウトオフィス」などの工夫も行っている。
これは、リート側でオフィスの内装工事を行い、オシャレな机や椅子などもあらかじめ用意したセットアップ型オフィスのことだ。
ビルの構造の関係で、どのビルにも不整形で少し使い勝手が悪いスペースがあるものだ。
このようなセットアップ型オフィスにすることで、スタートアップや小規模の会社自身が内装工事をせずに、初期費?を抑えて簡単に借りることができるのだ。
什器も可動式なので、会社が成長して社員が増えた際の対応も容易だ。
こういった小さな工夫の積み重ねが、リート運用に効果を上げている。今後の稼働率の推移に注目だ。
なお、「いちごレイアウトオフィス」とよく似た取り組みをしている「投資法人みらい」のコンバージョン物件についてはこちら。
いちごオフィスリート投資法人
第31期(2021年4月期)の予想分配金は2,063?円/口、第32期(2021年10月期)は2,105?円/口と発表している。
2021年4月2日終値現在の投資口価格(J-REITの場合の「株価」に相当)は94,500円、予想分配金利回りは4.41%だ(売買手数料や源泉徴収税などは除く)。
保有物件数86、取得価格合計2,061?億円(2021年02月28日現在)。
NAV倍率1.12。
4月決算銘柄を買って分配金をもらうには、権利付き最終売買日である4月27日15時までに購入しておく必要がある。
なお、前回のJ-REITの優待記事には書かなかったが、今回紹介したいちごオフィスリートにも優待はある。
抽選にはなるが、当たればJリーグの試合チケットがもらえるのだ。コロナ禍で試合の開催状況が変化するため、詳しくは調べてほしい。
最後に、投資判断は自己責任でお願いしたい。
健美家編集部(協力:野原ともみ)