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地震後の入居者対応。オーナーとしてできる事、できない事【地震編/後編】

ガングロ大家さん_画像 ガングロ大家さん 第22話 著者のプロフィールを見る

2024/1/8 掲載

熊本地震を経験した前編の続きです。

参照:入居者のいる社屋ビル1階が倒壊。熊本地震の被災者として経験したこと【地震編/前編】

■2016年4月18日(地震から2日後以降)

金曜深夜の地震から2日、月曜日になりました。
実家も事務所の入った建物の1階もつぶれてしまいましたが、うちは不動産屋です。今日から不動産会社としての仕事が始まります。

私は管理物件のクレーム(水が出ない、給湯器が倒れた、エレベーターが動かない等)対応は社員さんにお願いして、会社がある1階がつぶれた建物の入居者さんの対応をする事に決めました。

改めてみても、ひどい状況でした。

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①入居者さんへ補償をするべきなのか。仮に自社が地震保険に入っていたのならば入居者さんにそれを分けるべきなのか
②賃貸借契約はどうなるのか
③中の荷物をどうするか

この3点が重要だと思いました。一番に、弁護士さんへ相談に行きました。弁護士さんは、すぐに、法律的な見解と建物所有者としてやるべきことを示してくれました。

①オーナーも天災の被害者なので入居者さんへ補償をする必要はない。地震保険は仮に入っていたとしても入居者さんへ分配する必要はない

②「賃貸借契約」は建物が滅失した時点で終了している。敷金と建物滅失後の日割家賃は早く入居者さんへ返した方が良い

③中の荷物はオーナー側で運ぶ必要はない。建物への立ち入りを許可して事故になると責任が発生するので、入居者さんの自己責任で荷物を取りに行ってもらうこと

これを聞いて、正直救われた気持ちになりました。入居者さんにお見舞金として、1部屋50万円くらいは支払わなければいけないだろうと思っていたからです。1部屋50万円でも16部屋なら800万円になります。

地震保険は父の方針で入っていませんでした。会社は事務所も備品も通帳も印鑑も手形もデータもないという状況でした。自社の事だけでも大変なのに、さらにそんな大金を準備できる体力はありません。

■1階がつぶれた建物の入居者さん対応

すぐに入居者さんの次の住まい探しを始めなければと思いました。近所の不動産業者を回ったり電話を掛けたりしましたが、「管理物件の安全性がまだ確認できていないのでお貸しすることは出来ません」と言われました。

不動産業者は機能していない、と思いました。次にオーナーが自主管理している物件にお願いしようと、近所のオーナーにお部屋を貸してくださいと頼みました。すると「水が出ない状況でも良ければ」と了承してくれました。

次は、日割家賃と敷金を返金するために契約内容を調べる事にしました。
たまたま地震の約1週間前に私のPCの調子が悪くなって買い替えたのですが、これが奏功しました。

不動産関係のデータを外付けHDから、「シュガーシンク」というクラウドストレージに預けるように変えたばかりだったのです。「賃貸管理システム」を再ダウンロードすれば契約情報がわかるはず。システム会社に事情を話すと、その日のうちに使えるようにしてくれました。

夫は、入居者さんの為になる情報を集めてきてくれました。
これからの為に「罹災証明」という書類が必要になること、郵便物は倒壊した建物には届かない事などがわかりました。

私は調べた情報を一人ずつ、入居者さんへ伝えました。

―――――
①賃貸借契約は建物が滅失した4月16日で終了したので、敷金と日割家賃の返金があること

②大変なご迷惑をお掛けしたので、補償金を支払いたいが、自社の事で手いっぱいでお金がなく、法的にもお互いに被災者で支払う義務がないため、申し訳ないが当てにしないで欲しいということ

③荷物を建物から出す作業に関しては、手伝ってあげたいけれど、社員に業務命令で危ない真似をさせられないから手伝えないこと。建物の立ち入りは自己責任でお願いしたいこと

④「罹災証明」という書類を役所で発行してもらうために、建物の外観の写真が必要。この写真はうちで準備して配ること

⑤郵便物は届かなくなるから、すぐに「転送届」を出して欲しいということ

⑥賃貸住宅用の火災保険は弊社で加入している人は地震保険の申請を手伝えること

⑦住む家を探したい人は、入居斡旋を出来る物件を対象にしたツアーを行うこと(みなし仮設住宅制度が出来る前でしたが、5名の方がこのツアーで次の住まいを決めました)

⑧建物の解体の時期はまだ決まっていないが、決まったら連絡すること
―――――

ここまで、手探りで1週間近く掛かりました。未熟な私は1週間近く掛けてもこれだけしか出来ませんでした。でも、私の至らない点は、入居者さんたちが補ってくれました。

ご自分の仕事を差し置いて、毎日、入居者さんの荷物の搬出を手伝ってくれる方もいらっしゃいました。ご飯を分けてくれる方もいらっしゃいました。助け合いの心を感じました。本当にありがたかったです。

そして地震から数日後、入居者さんたちはそれぞれの次の住まいへと移っていかれました。一件だけ、何度も補償を求めて訪ねてこられた方がいましたが、街から被災割合に応じて支払われた「生活再建資金」150万円が支払われると、連絡はなくなりました。

■被災した管理物件について

倒壊した建物の入居者対応に目途がついてちょっとほっこりしていると、社員君から、「他の物件も手伝ってください!」と声がかかりました。マジで今まで丸投げしててごめんなさいと、それから他の物件の対応に移りました。

<水が出ない>
水が出なくなった物件は、受水槽が割れていたことが原因でした。修理を依頼すると、「受水槽の搬入路が確保できないため、受水槽交換が出来ない」と言われました。FRP塗装でも受水槽の水漏れが治せるとわかり、その手配を取りました。ようやく水が出るようになったのは、地震から20日後でした。

<エレベーターが動かない>
エレベーターは地震で部品が変形して動かなくました。EV屋さんが板金で部品を再調達してくれて、1週間程で復旧しました。

<電気温水器が倒れた>
電気温水器がある物件は、ほとんどの住戸で温水器が倒れました。設置の際に3箇所止めていたら倒れないらしいのですが、熊本市内の物件は2箇所止めしかされていないものが多く、数多くの物件で被害が生じました。

被害は深刻で、部屋中が水浸しになってカビが生えた部屋や、天井が落ちた部屋もありました。電気温水器を交換して内装工事をしましたが、すべてが完了するのに半年くらいかかったように思います。

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<室内の被害への対応>
入居中の方から、「室内の被害を見て欲しい」という連絡が山ほどありました。クロスのひび割れや、物が倒れた事による床の傷・壁の穴については、退去時に「地震の影響」と言ってくれれば原状回復請求はしませんと伝えました(申し訳ないですが直しませんでした)。

古い戸建では瓦が落ちたり、お風呂のタイルがボロボロと剥がれたり、壁が割れたりしました。これはさすがに危険なので元に戻す修理をしました。

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<地震保険の請求>
オーナーチェンジで購入した物件は保険を引き継いでいたので、地震保険に加入していました。

外壁のひび割れなどが激しかったために、保険請求をしましたが、「RC構造は梁と柱の構造で外壁や設備は構造体ではないから、損傷の点数にならない」という返事で、一部損壊判定にしかなりませんでした。それでもひび割れをコーキング・塗装で治すくらいの費用にはなりました。

■ありがたかった様々な支援

地震後に私が行った対応は、以上のようなものです。
1階が潰れた社屋ビルはその後、解体され、今は「貸土地」になっています。

被災して建物や設備に被害が生じた中小企業は「グループ補助金」を利用したところが多かったようです。うちも利用させていただきました。

あれだけの被害を受けても会社がなくならずに済んだのは、「罹災証明」の被害状況に応じて被災者に支給された国や地方公共団体からの支援金、そして全国の皆様からの寄付や義援金のおかげです。大変ありがたかったです。

<当時の支援内容(主なものの一部)>
・義援金
・被災者生活再建支援金
・仮設住宅
・みなし仮設住宅(民間賃貸住宅借上げ制度)
・補修型みなし応急仮設住宅の補修費(入居時修繕負担金)の支援
・被災民間賃貸住宅復旧事業補助金
・公費解体
・グループ補助金

これらは地震発生から時間が経ってから、徐々に発表されました。
今回、被災された方は、地震発生直後は色々ご不安だと思いますが、今回も同様の支援がある可能性がありますので、情報を追っていかれることをお勧め致します。

うちは夫が調べたり、申請用の書類を準備してくれたりしました。自分一人ではやりきれなかったかもしれません。こういう時は、人を頼ることも大事だと思います。

■「耐震診断」と「補強工事」について

次に、地震に対する備えである「耐震診断」と「補強工事」についても少し言及させていただきます。

木造住宅であれば、安価で耐震診断・住宅劣化診断をして頂ける機関があります。「一般社団法人 木造住宅耐震普及協会」です。

熊本県で10年ほど前に会長の池上さんが発足した団体で、とても良心的に丁寧に建物の診断をして下さるので、耐震性に不安がある物件をお持ちの方は一度相談されてみることをおススメします。九州内は出張費用が掛かりますが、見てもらえます。

他の地域ですと、私は利用したことはないですが、「一般社団法人 日本住宅耐震普及協会」というところがあるそうです。相談してみるのも一案かと思います。

私の熊本地震での経験が何かのお役に立てば幸いです。

■1月26日、東京でチャリティイベントを開催します

最後にお知らせです。
2024年1月26日(金)の19時〜23時に、『SHOT VILLAGE』
(東京都港区赤坂2−4−1 白亜ビルB1F)にて、「出張不動産BAR」を開催させていただく事になりました!(*´꒳`*)

能登地震の発生を受けて、スタッフ全員で私たちに出来ることを話し合いました。そして、何かイベントを開いて利益の全額を義援金に寄付する事を決めました。それがこのBARを開く目的です。

先日、健美家の投スポ記事になった「アンティーク と器のお店」のらがさんも、20時までの限られた時間ですが、エクレアを販売しに来てくれます。
予約フォームからご予約の上、遊びに来てくださいね╰(*´︶`*)╯♡

予約はコチラ⇒出張不動産BAR 予約サイト

皆さんとゆっくり時間を過ごしたいので2時間制でご予約を取っています。
各時間の定員は20名迄なのでアットホームな時間を過ごしましょう(o^^o)

※皆様へのお願い。会場への直接のお問い合わせはご遠慮ください。

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

ガングロ大家さん

ガングロ大家さん

不動産賃貸業
宅建業

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経歴
  • □1984年
    社長令嬢として産まれる

    □2005年
    大学2年生の時に中州のキャバクラでアルバイトを始める

    □2007年
    熊本の父親の会社に月収14万円で経理として雇われる
    姉が同会社に不動産部を設立。姉が営業、自分が経理を担当する

    ホストと付き合ってシャンパンタワー代100万円を借金する⇒半年で破局
    キャバ嬢アルバイトに復活し、昼は経理、夜はキャバ嬢として働く

    □2008年
    会社で競売不動産の再販業を始める

    □2009年
    成り上がり不動産大家の息子とお付き合いを始める⇒破局

    □2010年
    区分マンションの売買仲介を始める

    □2011年
    宅建士合格

    □2013年
    個人で初めて中古区分マンション購入(売却済)

    □2014年
    今の旦那と知り合う
    結婚前に旦那と連帯債務で中古戸建を住宅ローンで購入
    ⇒半年でスピード婚

    □2015年
    1.8億円の築古RCを購入(売却済)

    □2016年
    熊本地震で自社ビル倒壊
    地震被害による入居者の引っ越し斡旋、自社ビル移転を経験

    □2018年
    木造アパート新築(売却済)

    □2020年
    コインパーキング用地取得
    5.4億中古RC物件購入

    □2021年
    父親の会社(製造業)を退社
    不動産部(資産管理会社)を引き継いで独立する

    競売で購入した土地の周辺を2年掛かりで地上げし、売却益5,000万円を叩き出す

    築古RCと無担保土地を売却
    売却後現金3億円を手にし、社長(父親)に1億円退職金支払って社長交代、自分が社長に

    □2022年
    今の所有物件だけではキャッシュフローが赤字になる事に気付き、3億円の築浅RCを購入

    現金が尽きた為、買取再販事業に力を入れる

    □2023年
    一棟マンション 5棟 、貸地 3箇所、事業用物件 3件を所有
    家賃年収1.2億円 返済比率56%

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