不動産投資を始めて3年目の5月に、築27年のハウスメーカー製の木造築古物件を購入しました。私はこのアパートを、購入した価格にちなんで『700万円アパート』と呼んでいます。
■物件との出会い
私は、当時も今も毎日欠かさずにネットで物件探しをしています。ある時、ローカルな不動産サイトの検索を数日間さぼってしまいました。数日ぶりに検索すると、ハウスメーカーが仲介しているハウスメーカー製の木造アパートを見つけました。
<物件のスペック>
・物件価格700万円
・ハウスメーカーの木造
・築27年の築古
・2K(4.5畳 + 6畳)×6戸
・駐車場6台
・6戸中2戸入居
・募集家賃3.3万円
・表面利回約30%
掲載から数日が過ぎていましたが、「欲しい!ぜひ欲しい!」と強く思いました。価格については、「指値をして600万円くらいになれば妥当かな」と予想しました。
■サイトと電話で問い合わせを入れる
仲介しているハウスメーカーにサイトのフォームから問い合わせをして、すぐに電話をかけました。私は当時も今も、ネットのフォームと電話の両方から問い合わせを入れるようにしています。電話で担当さんから詳しい話を聞いて、ネットから資料を追ってもらうやり方です。
担当さんの話によれば、買付順位は2番でした。はじめて経験する悲しい出来事でした。
ブログや不動産投資本で読んだことがある「買付1番が取れない」いう事実が、自分自身に起こりました。頭から血の気が引いていくのが、はっきりとわかりました。
それまで、買付のスピードで負けたことがなかったため、「買付で負けるってこんな感じなんだ」「サイトのチェックを毎日していれば…」等と複雑な気持ちになりました。しかし、買えないものは仕方ありません。
■買付順位が2番から1番になった
「パスカルさんの買付は2番なので、難しいと思う」と言われた4日後に、ハウスメーカーの担当さんから電話がありました。
担当さん
「先日の物件ですが、まだ興味ありますか?」
パスカル
「もちろんあります」
頭の中は???で一杯です。
担当さん
「1番目に買付を入れた方は、初めてアパートを買う方なんです。経験のない方にあのアパートはどうかと思います。そこで、すでにアパートを持っているパスカルさんに購入していただきたいと思いますが、いかがでしょうか」
パスカル
「売ってください。クレームは言いません。満額の700万円で買います!」
正式に売主さんの了承を得ることもでき、私がこのアパートを買うことになりました。「こんな理由で買付順位が変わるなんて、不動産の裏側を見た感じだな~。不動産って何があるのかわからない世界だな~」と思いました。
■物件のスペック
私は一目見て欲しいと思ったアパートですから、良いところも多いのですが、仲介さんが、「経験のない方にあのアパートはどうかと思います」と言ったように、問題点もありました。
〇 狭いけどファミリータイプの間取り
⇒単身者用の物件と同程度の家賃にすれば勝負できる
〇 築27年にしては、水まわりがきれい
⇒水まわりのリフォーム費用がかからない
〇 金融機関、コンビニ、スーパー、小中学校、大学が近くにある
⇒ゆるい意味で生活が完結している地域
●エアコンがない。標高800mの高地でも夏は暑い
⇒プロパンガス屋さんからの貸与
●ファミリータイプなのに、お風呂の追い焚き機能がない
⇒プロパンガス屋さんからの貸与
●ファミリータイプなのに駐車場が、軽自動車サイズで6台しかない
⇒軽自動車1台の方に入居してもらうしかない
●床の傾きがある
⇒工務店さんに直してもらう
●床全面張り替換え、クロス全面貼り換え等、色々がボロボロ
⇒工務店さんに直してもらう
マイナス点のカバーについては、プロパンガス屋さんからの貸与と、工務店さんへの丸投げで乗り越える計画でした。
(当時の私は、今のようにプロパンガス屋さんとの関係も十分にできていなかったので貸与は少なく、工務店さんを通さずに各業者さんに分離発注することも全くできませんでした)
リフォーム前の物件内部から見た景色です。カブトムシやクワガタが捕れるクヌギ林があります。
■700万円アパートの売却理由
不動産屋さんへの問い合わせから1月ほどして、契約と決済が同時に行われました。700万円アパートは現金買いだったので、不動産屋さんの事務所で契約と決済をして、それで完了です。こうして、無事に700万円アパートのオーナーになれました。
初めてお会いする売主さんは埼玉県の住むご高齢の方でした。
・遠方なので管理会社に任せているけど、空室が埋まらない
・体が不自由になってしまい、長野県に来るのが大変になった
上記なような理由から、売却を決めたということでした。
■リフォーム内容と価格
全6戸中4戸が空室でしたので、購入後すぐに、次の内容のリフォーム内容で工事に取りかかりました。
・天壁のクロスの全面貼り換
・ふすまの交換
・LEDシーリングライトへの交換
中に入ってわかったのは、この700万円アパートのふすまは、すべてダンボールのふすまだったことです。しかも、ふすまの片面にだけ、壁用のクロスが貼ってありました。この片面にだけ貼ったクロスが大問題でした。
通常はダンボールふすまにクロスを貼る時は、両面にクロスを貼るのですが、このふすまは片側にしか貼っていなかったので、ふすまがうまく動かせないくらいダンボール部分がアーチ状に曲がってしまっていました。
おかげで、全戸18枚のふすまを新品に交換することになりました。とても大きな出費でした。
リフォーム工事の見積は、1戸50万円くらいでした。4戸で200万円です。今考えると50万円という金額はリフォーム内容からするとかなり高めですが、当時はわかりませんから仕方がないことでした。
アパートの購入に700万円使っている上に、200万円のリフォーム費用ですから、かなり大変でした。「リフォーム費用に200万円も使ってしまって大丈夫なのだろうか?」という心配で一杯でした。
しかし、幸いなことにリフォームが完成して入居募集を始めると、すぐに満室になりました。最後の一部屋は3人で見学に来ていた学生さん全員が入居を希望したので、ジャンケンをして勝った方が入居したそうです。
なぜ前の持ち主さんの時は埋まらなかったのに、私が買ったらすぐ満室になったのかですが、地方のオーナーさんの入居付けを後回しにする管理会社さんだったのでしょう。
地方では、地元の人と都会に住むオーナーで同じ工事内容でもリフォームの費用に差をつけているところもあります。自分が経験して調べてみたことで、遠方物件を買うリスクについてもわかりました。
■700万円アパートのエピソード
低家賃の700万円アパートは、退去があっても空室期間が短く、購入後はほぼ満室状態が続いています。2Kといっても広くない間取りで、駐車場も1台限定ですが、低家賃でカバーできています。
入居者は1人暮らしの方やシングルマザーの方が中心です。ある時期には、6戸中4戸がシングルマザーの方でした。現在は単身者5世帯、シングルマザーの方1世帯です。今住んでいるシングルマザーの方は個性が強く、いつもどこかの部屋と緊張関係にあるのが少し心配です。
過去に、パチンコ屋さんに勤めている女性で、仕事でストレスがたまるのか私の大切な700万円アパートの外壁をマイルドに何回か破壊しているっぽい方がいました。
「退去して欲しい」と思っていると、その女性が突然いなくなりました。数週間後、この方から「退去」の連絡が入りました。「お金は払うから部屋に置いてある洗濯機、冷蔵庫、電子レンジを処分して欲しい」ということでした。
もちろん、処分はせずに次の入居者さんに家電付で借りていただいきました。室内はマイルドに破壊されていましたが、スムーズに退去していただけたので良かったです。
■現在の700万円アパート
700万円アパートの現在の家賃は、3.3万円です。リフォーム(6室で300万円)費用を入れた表面利回りは約23%になります。ロットは小さいですが、今日もコツコツとお金を稼いでくれています。こんな物件が、お金を残す物件だと思います。
この700万円アパートのリフォームは、当時の私としては大規模リフォームといえるものでした。この物件のリフォームを通して、手入れがされていない空室の多い築古物件でも、思い切ったリフォームを実施すれば満室経営ができるという自信につながりました。
こうして初期の頃に小さな物件で色々な経験ができたことで、少しずつ規模を拡大することができました。今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。皆様の参考になれば幸いです。