■不動産を始めた頃の到達目標は資産10億円!?
華子
自己紹介をお願いします。
ツナさん
皆さん初めまして、ツナと申します。現在49歳で不動産投資歴16年の専業大家です。富山生まれの富山育ちで、富山の企業に勤めておりました。妻と子どもの3人家族です。
現在13棟62室、家賃年収は2800万くらいです。大体40歳前に会社を辞めたいと思って進めていたんですが、不動産を始めて6年、39歳でFIREできました。
華子
不動産投資を始めたきっかけを教えてください。
ツナさん
33歳の正月休みのことです。正月明けたらサザエさん症候群よろしく、会社に行きたくないな~!って思いがすごく強くなったんです。そこで何か行動しなきゃと思ったので、新聞などを見ていろんなセミナーに参加してみたんです。
そうしてその半年後くらいに、たまたま不動産投資のセミナーに出会ったんです。そこでガン!と雷に打たれたように、これは面白そうだ!って感じたんです。
でも不動産は周りに誰もやっている人がいないし、全く分からない世界。これが運命だと思って、身をゆだねてやってみようと思ったのがきっかけですね。
華子
不動産を始めた頃の目標は?
ツナさん
紙に欲しいものとその値段を書いて、コルクボードにいっぱい貼っていたんです。本当は目標「資産1億円」って書こうと思ったんですけど、ゼロを1個間違えて「10億円」って書いちゃったんですよ(笑)。後からあれ? 10億円だって気づいて。
でも10億円を目指せば1億円は軽くたどり着けるだろうと思って、そのままにしていました。おかげさまで資産1億円は達成したんですけど、目標の10億円はまだ達成していません。
華子
笑い話が功を奏しましたね。
ツナさん
でも10億円以外に書いた「このくらいの規模のアパートが欲しい」とか、「海外旅行に行きたい」とかの目標は全て叶いました。だから、書いて貼ることはすごく大切だと思っています。
■駐車場立地が最悪だった1棟目
華子
そして先ほどのセミナーに出会って不動産投資家を目指すわけですね。
ツナさん
はい。当時はリーマンショック後で、副業でアパートを持っている経営者が、経営破たんを起こして資産を売却することがよくありました。
僕が買った1棟目はそこで売りに出ていた元競売物件で、そのセミナー参加者の中に買う人はいないかって、業者が声をかけていたんです。1,200万円で、築13年の木造アパートです。
華子
すごく安いですね!
ツナさん
4世帯の物件なんですけど、これが僕の中で最も安い一棟ものです。本当はもっと大きい物件が欲しかったんですけど、いかんせん年収300万円くらいの若造でしたからね。
だから融資が通るかわからなくて。でも返済も月々6万5000円だし、家賃が仮に入ってこなくてもギリギリ返せるレベルだと思ったので、えいやっ!と買ってみようと思いました。
今でこそ不動産投資をやりたい人がいっぱいいるし、いろんな情報があるから、すごくみんな恵まれていると思うんです。その当時は健美家さんのけの字も知らない状態で始めたので、何もわからないズブの素人でした。
最初4世帯中3世帯入っていたんですけど、決済が終わったので物件を見に行ったら、今日退去なんですって言って引っ越して行く人がいるんです。だから決済当日に1人退去で2/4室になってしまいました。
これは客付けに全力投球してがんばっても、最後まで1年間満室を続けられなかった唯一の物件です。難易度がすごく高いものを最初に掴んでしまいました。
華子
難しい物件になってしまった原因は何だったんですか?
ツナさん
駐車場の立地ですね。駐車場は4台分あって、2台分はすぐ停められるんですが、残りの2台分は50mある細い路地をバックで進んで停めないといけないという、むちゃくちゃな立地だったんです。
だから入居者さんもこれでは停められない!っていうことになり、駐車場はあってないようなものになってしまいました。駐車場がないと地方では苦労するんで、おかげで難易度が上がってしまいました。
■持ち家率全国ナンバーワンの富山で新築戸建て投資はなぜ成り立つのか
華子
その次はどのような物件を買われたのでしょうか?
ツナさん
不動産投資のセミナーに行くようになると、そこで吉川英一さんをはじめ、波乗りニーノさんとかふん様とか、いろんな方と知り合いになりました。
吉川さんに最初のアパートを買ったことを話すと、この物件はよくないね、ちょっとありえない値段、せいぜい半値だという感じでダメ出しされて、ものすごくショックを受けました。
そこで吉川さんから、前の年にニーノさんが新築戸建て投資を始めていて、それが手堅いからやってみないか、ということを提案されたんです。
当時富山は持ち家率全国ナンバーワンだったんです(現在は全国2位)。だから持ち家が多いところに新築戸建てを建てても、全国一難しいだろうと思ってびっくりしました。新築戸建てなんて家賃が10万以上しますから。
でも、住宅ローンを組めば5~6万円の返済でいけるんです。お金を払っても自分のものにならない、家賃10万円の戸建てに入る人が果たしているのか!?
そこで、ニーノさんに借り手の需要を聞いたんです。そうしたら、転勤族は富山で家を買いたいわけじゃない、でも新築戸建てには住みたい需要は一定数あるんだ、ということを教えてもらって。
その時たまたまある不動産投資家が持っていた土地があって、ちょっと現金が必要になったということで、仲間内で譲ってもらえることになったんです。
ニーノさんのところにも入居者は入っているし、そこからも遠くないんで、じゃあ、やってみようかなとなったんです。
融資をつけた順番で買う人を決めようという話になって、たまたま僕の融資がうまく通ったんです。そこで吉川さんプロデュースで、新築戸建てを2戸建てました。家賃はそれぞれ10万5000円でした。
華子
タイミングと運が良かったんですね!
ツナさん
新築戸建てに住みたいけど、探してもないっていう、そういう新しい需要を、吉川さんやニーノさんが見つけてくださったおかげで、そこに自分もたまたま乗っかることができました。
ここは退居もほとんどなく、安定して長く入居してくれました。アパートだと、草むしりとか退居対応とかで結構忙しいんですけど、戸建てに関しては一切クレームもなく、何もせずにお金が入ってくる。これはすごく楽ですね。
ただアパート投資と違って、面白くないんです。何も起きないんで(笑)。そこがちょっと不満と言えば不満だったんですけども、これからやられる方には非常に優秀な一つの手法かなと思います。
当時はすごく建築費も安くて、700万円くらいで建てられました。今はそんなに安くないんですけど、一戸建てのローコスト住宅ってやつです。たまたまリーマンショック後で安くできました。もちろん手抜き工事ではないですよ(笑)。
華子
どれくらいの間取りですか?
ツナさん
3LDKでした。総2階の、真四角の建物です。ベランダもなく、普通の家みたいに凸凹してない、サイコロみたいな箱型です。そのほうが容積を効率よく目一杯使えるんです。
デザインはカッコ悪いんですけれども、住む人ってそこまでデザインを重視しないんです。広い部屋で会社の社宅規定に合って住めればいいから。
2~3年前に実需で1戸売ったんです。返済がある程度進んでいて、仕入れも安かったので、売った瞬間に借入がゼロになりました。1戸売って1戸をただで手に入れたっていうことになりますよね。
だからもう一つの家は売ってもいいし、貸しても家賃がそのまま入ってくることになりました。
富山は持ち家率が高いから、こんなのはありえないって思っていたところに、まさかの歪みがあったわけなんです。思い込みで物を考えたらいけないと思いましたね。
■なぜ富山には不動産の歪みがあったのか
華子
富山は土地が安くて家賃が高いとよく言われますよね。
ツナさん
はい。ポールさんとかふん様もその辺のことはよく話していますよね。でも実はお隣の金沢と比べると、金沢と富山にはそこまで人口の開きはないんです。そこでなぜ金沢と富山の不動産事情が違うのか考えたんです。
金沢にはバブル期に大手のファンドが物件を大量供給した地域があって、供給が増えたんです。需要と供給で価格が決まるから、供給が多いと家賃も下がってきますよね。
でも富山には大手のファンドが入ってこなかったせいで、取引が少なかったのが一つの理由かと思うんです。株で言うと“板が薄い”みたいな感じです。そのおかげで家賃を高値維持できていたんじゃないかな。
そのおかげで富山は土地が安い割に家賃が高いので利回りがいいって言われているんだと思います。
ただパイは小さいんで、みんながやると、そこもいつか溢れてしまうんです。ポールさんやふん様なんかは、首の締め合いをやっているって言っていますよね(笑)。
■リフォームに明け暮れたあげくに離婚を経験
華子
満室経営に向けて工夫してることはありますか?
ツナさん
リフォームは基本的にはDIYでやっているんですけれども、ものすごく下手なので最初自信がなくて悩んでいました。そこでとある投資家さんから、“汚い部屋”と“綺麗だけど下手なリフォームしてある部屋”、どっちに住みたいかって言われたんです。
そう言われたら下手でも綺麗な方がいいなって思って。そこで、リフォームは下手でもいいんだ、だったら表層だけでも綺麗にしようって、心がけるようになりました。
そうしてリフォームばかりやって順調に拡大していたんですが、それが原因で家庭が崩壊して、離婚しちゃうことになりました。
華子
えっ!どういうことですか・・・?
ツナさん
僕は結婚した後に不動産を始めたんです。やっぱり一般の人って借金が怖いんですよね。妻からは旦那が次々借金をしてくるように見えるんです。しかも1棟目のアパートは妻に連帯保証人になってもらったんです。
そうなってくると、妻方の両親にも伝わり、娘にそんな借金をさせるとはどういうことだ!ってお叱りを受けました。なんせ向こうは普通のサラリーマン家庭。
平日は普通に働いて、土日は夫婦でパチンコ屋に行って過ごすような家庭だったので、借金なんてものは、パチンコをするためにやるもんだと思われているんです。だから僕の融資はギャンプルと同じように見られました。
一般の人だったら300万も借金すれば首が回らなくなるけど、僕はもっとしているわけです。自宅のローンもあるし、当時不動産投資で5000万円ぐらい借金していますからね。
それで、こいつはおかしいぞとご両親にも思われて。なんせ子供の面倒も見ないでリフォームばっかりして家を空けているから、実は浮気をしてるんじゃないかと勘繰られたり。
華子
必死に全力投球していたのが裏目に出てしまいましたね。
ツナさん
家庭をおざなりにしたおかげで、離婚になってしまいました。でも考えてみれば、離婚になる原因を作ったのは自分なんですけれど・・・。
富山ならではの不動産需要の歪みを利用して軌道に乗せていこうとしたら、離婚という残念な結果を招いてしまったのですね・・・。後編は明日配信です。そこからの立ち直りのエピソードを中心に伺ってまいります。お楽しみに!(担当:T)