神奈川県横須賀市で収益を上げたいのであれば、狙いはベース契約物件。同市に駐留する米海軍に借りてもらえるようにすることである。
と聞くと、かつてテレビで見たようなアメリカ風の、広い物件を想像する人もいるかもしれないが、実は普通の日本家屋でも、ちょっと手を入れれば十分に借りてもらえる。
前回の「穴場横須賀市賃貸事情」編にに引き続き、今回は改修後にベース基準を満たした、投資家・富沢ウメ男氏の物件を参考に、どういう要件が必要かなどを地元情報に詳しいウスイホーム武山店の柴橋巧季氏に聞きながら具体的に見ていこう。
■専有面積50u以上、階段はあっても50段以下

建物の規模としては意外かもしれないが、専有面積は登記簿上で50u以上と比較的コンパクトでも可能。ごく普通の3DKクラスの一戸建てでも十分なのである。
もちろん、士官以上などで高額な物件を借りられる人相手にそれ以上に広い物件のニーズもあるが、そうなると安く買って改修で借りてもらうというレベルではなくなるので、最低限のサイズを狙うのが現実的である。

横須賀では階段のある物件が多いが、それも50段以下であれば可。その代わり、階段部分にはすべて手すりがいる。これは外部だけではなく、住戸内も同様。すべての階段には手すりを用意!である。
設備の要件はけっこう細かい。ここを落とすと借りてもらえないので注意が必要だ。列記しよう。
■キッチン・水回りで必要なもの
・風呂場・キッチンなどに給湯器(容量の指定はない)
・トイレは水洗
・乾燥機付き洗濯機(容量の指定はない)
・オーブンを置くスペース→各人に軍から支給されるため、オーナー側で用意する必要はなく、入るだけのスペースと設置に必要な設備を用意しておけばよい

■住戸全体に渡って必要なもの
・防虫網戸→各窓、ドアに常備されていること
・照明器具→全室に必要
・エアコン→居室に各1台ずつ
・落下の危険がある窓には手すり

■契約期間はおおよそ3年、原状回復は原則無し

契約で特徴的なのは期間が3年であるという点。実際のところ、2〜3年で転勤になることが多く、最長でも7年くらいまで。契約書は米軍指定の仕様があり、基本的には米海軍のルールに従って契約することになる。
原状回復は通常の日本人相手の賃貸より賃料が2〜3割以上高いことから、そこに含むという考え方だろう。
ただ、実際には「契約以前に軍のほうで土足で上がらないこと、地域のゴミ捨てルールに従うことなど、日本に住む時のマナーなどを教育していますし、艦船に乗っている時間が長い人の場合には家にいる時間が少ないことなどから、きれいに部屋を使う人が多いですよ」とのこと。原状回復でトラブルになる可能性は少ないのである。
■230万円で購入、改修に600万円かけて家賃18万9000円
さて、事例として写真で紹介した富沢氏の物件は横須賀市でも高台にある住宅地の一画にある一戸建てで価格は230万円。
購入時には床が抜けており、根太をやりかえる必要があったが、幸い傾きはなかった。建物の傷みを修復、キッチンなどに水回りを新しくした上で2階に洗面所、シャワーブースなどを設置、外壁塗装などで改修には600万円かかった。
改修後、ベース契約物件を扱う不動産会社に要件を満たしているかの査定をしてもらい、無事ベース契約可となり、賃料は18万9000円となる予定。

ベース契約で決まらなかった場合は部屋の仕切りを作り、2階を2室に、1階をDK+1室にして一戸建てとして売却も視野に入れているそうで、その場合でも利回りは15%くらいは見込めるとのこと。

この物件の場合、高架線下で、かつ背後に崖があるという立地から安く出ていたが、ベース契約であればそうした条件は気にされることはない。
逆に建物前面、背面に庭があることがポイントという。「庭いじりを趣味とする人は少なくありませんし、バーベキューができるスペースがあることは喜ばれます」。
最近は人気が出てきているため、数千万円を出して購入、ベース契約に回している人もいるそうだが、できればもう少し低価格で手に入るものでトライしてみたいところ。
改修までやるにはハードルが高いと思う人なら、すでにベース契約の条件を満たしている転売物件という手もあるが、数は多くない。
「物件価格1400万円で賃料18万9000円、利回り16%という物件が出たことがありましたが、ここまで好条件の物件は希少。地道に条件にあった物件を探すほうが実は早道かもしれません」。
健美家編集部(協力:中川寛子)