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損失相次ぐ『生活保護アパート投資トラブル』、不動産投資家はどう注意すべき?

賃貸経営/トラブル ニュース

2023/07/05 配信

NHKが『首都圏ナビ』や『首都圏情報ネタドリ!』で、「不動産ブームの陰で損失相次ぐ “生活保護アパート投資”」について報じ、不動産投資家の間で話題になった。

今回報じられたトラブルは、まず社団法人が公園などで住宅困窮者に声をかけ、アパートの空室に相場よりも高い家賃で生活保護の「家賃扶助」を利用して入居させる。利回りが高くなったそのアパートを、社団法人とつながるがある不動産会社が投資家に高値で売買。その後、入居者が続々と退去し、赤字になってしまうというものだ。

同じようなトラブルに合わないために、不動産投資をするうえでどう注意すべきか? 仲介業者・管理会社の立場からハウスメイトマネジメントの伊部尚子氏に話を聞いた。

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写真はイメージ

相場から乖離した高い家賃設定に違和感を。
自分の買おうとしている物件の「実力」を知る!

番組では実際に埼玉県川越市で売買されたアパートの例が報じられていた。川越市の生活保護における家賃扶助の上限は単身世帯で4万2000円。不動産会社が8戸中7戸のアパートの家賃を4万2000円に設定し、生活保護受給者を入居させていた。しかし実は、このアパートの1戸は家賃3万5000円で入居者がいた。

別の不動産会社によると、近隣で同程度の単身者向けのアパートの家賃相場は2万8000円ほど。伊部氏はこの時点で「おかしいと気づくべき」と指摘する。

「家賃扶助が4万2000円のエリアなら同程度の家賃の部屋に入居することが一般的です。生活保護を受給していない場合の家賃を調べれば、適正な家賃や正しい利回りがわかるはずです」

さらにおかしな点は投資家が購入後、入居者の退去が同時期に相次いでいる点である。

「生活保護の人が入居しているアパートの管理を多数手がけていますが生活保護の方は、長く同じ場所に住む傾向にあり、同時期に相次いで退去するようなことはまずありません」

この報道を見た不動産投資家のなかには、「購入前にレントロール(賃貸物件の契約の一覧表)をチェックすれば、生活保護受給者を一斉に入居させるなどおかしな点を見抜けたのではないか」「アパートを売却するために、無理やり入居者を埋めたであろうというケースは、昔から目にすることがあった」といった見方もあった。

生活保護の受給者が入居者にいることは問題ではない。

誰にでも生活保護を受ける可能性や権利はあり、購入を検討するアパートに生活保護受給者の入居者が入っている可能性はある。

不動産投資家が生活保護受給者の入っているアパートの購入する場合、どのような点に注意すべきなのか? 伊部氏は下記の点を挙げる。

《生活保護受給者の入居者がいる場合のチェックポイント》

・適正な家賃で住んでいるか? 家賃扶助の額と、相場家賃と乖離がないか?
・住んでいる年数は? 新規で同時期に入居が続いていないか?
・契約書を確認(保証人や緊急連絡先等)
・家賃の振り込みは、役所から直接家主に入るか? 滞納なく家賃が払えるのかを売り主に確認
(共益費は入居者が支払うケースもあるため合わせて確認)

「レントロールまでチェックしなくても、相場と比べて、いくらの家賃で入居しているのか? 自分の買おうとしている物件の実力を把握することが重要です」

生活保護受給者の家賃は直接、家主に入る手続きを。
かつての「二重契約」や「家賃の調整」にも注意

上記のほかにも入居者に生活保護受給者がいる場合、注意したいポイントがある。

★ポイント1:「二重契約」が残っていれば1つの契約に正す

20年程前から5,6年ほど前まで、伊部氏が度々目にしているのが、生活保護受給者の『二重契約』だ。たとえば5万3000円の家賃扶助のエリアで、実際の家賃は6万の部屋を借りている場合、役所には5万3000円で賃貸借契約書を提出し、家賃と家賃扶助の差額である7000円を家主に直接入るような個人契約を結んでいるケースがあるそうだ。

これは違法となるため、家賃を下げて1つの契約に結び直す必要があるが、そうすると利回りが下がるため、購入を見送る判断をしたほうがいい場合もあるだろう。

★ポイント2:役所から直接、家主に家賃扶助が支払われるか?

生活保護の家賃扶助は、役所から入居者に支払われるケースと、家主に直接支払われるケースがある。家賃の滞納がみられる場合は、役所から直接家主に入るように変更をすることで確実に家賃回収できる。この「代理納付」は本人申請のため、本人に理解を求め、役所に同行して手続きをサポートする必要が生じる場合もある。

★ポイント3:保証人など契約書について不安な要素がないか?

生活保護受給者の契約書を見ると保証人がおらず、緊急連絡先が定かではないようなケースがあるため要注意。

★ポイント4:更新料や火災保険、保証会社の費用は家賃扶助対象だが、入居者が申請する必要あり

更新料や火災保険料、保証会社の費用も家賃扶助として支給されるが、本人による手続きが必要。高齢者など本人が自分でできない場合は更新料が滞納になったり、火災保険や保証会社の契約が切れてしまうこともある。生活保護受給者に負担が生じないように手続きを早めに行う。役所に同行するなどの必要が出じることがある。

★ポイント5:相場の家賃に合わせて、生活保護の「家賃扶助」の額に調整が入ることも

2015年に7月1日、全国的に家賃扶助の基準額の見直しが実施されたとの記録がある。たとえば東京都ではこちらの資料に残っている通り、改定が行われた。伊部氏が当時担当していた千葉県・八千代台の物件でも単身者向けの住戸の家賃 4万6000円→4万1000円に、ファミリー向け住戸の家賃5万8000円→4万9000円に家賃扶助額が下がった。

「オーナーに家賃を下げる交渉をしましたが金額が大きいので断られ、入居者は安い物件に転居されました。こうした家賃扶助の調整が今後も起こらないとは限らないため、この点も覚悟が必要です」

上記の項目に注意すれば、「生活保護の人が入っているからといってネガティブに捉える必要はない」と伊部氏はいう。

「生活保護受給者がいるアパートを買う場合は大家さんに、入居者と一緒になって今後のことを考えるような『福祉的な姿勢』が必要です。生活保護受給者が亡くなった場合、家賃扶助は打ち切りになるため、自力で入居者を集められるのかどうかもよく検討すべきです」

今回報じられたような、生活保護受給者の家賃扶助で相場よりも高い利回りが意図的に操作されているような場合は、ぜひとも上記の情報を元に見抜きたいものである。

健美家編集部(協力:高橋洋子(たかはしようこ))

高橋洋子

https://yo-coo.wixsite.com/home

■ 主な経歴

暮らしのジャーナリスト。ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、情報誌などの編集を経てライターに。価値0円と査定された空き家をリノベーションし、安くマイホームを購入した経験から、おトクなマネー情報の研究に目覚め、FP資格を取得。住宅、マネー関連の執筆活動を行う。

■ 主な著書

  • 『家を買う前に考えたい! リノベーション』(すばる舎)
  • 『100万円からの空き家投資術』(WAVE出版)
  • 『最新保険業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム)など

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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