• 完全無料の健美家の売却査定で、できるだけ速く・高く売却

×

  • 収益物件掲載募集
  • 不動産投資セミナー掲載募集

迷走するJ-REITへの投資。金利情勢、機関投資家の動静踏まえて資産形成を

不動産投資全般/Jリート・小口化商品 ニュース

2023/11/21 配信

個人が保有する預金や株式、保険などの金融資産は、日銀の資金循環統計では2115兆円に上っている。だが、その半数超が現金・預金が占めており、欧米社会に比べて預金の比率が圧倒的に高い。この元・預金をいかに投資に向かわせることができるか。貯蓄から投資へ。資源高と円安によるインフレと低金利という状況下で元・預金の価値は目減りする。

不動産はインフレに強い商品として注目されるが、今では現物不動産だけではなく、さまざま不動産関連の投資商品が開発されている。

なかでもマーケットに定着し、不動産市場の先行指標としても注目されるのがJ-REITだ。賃貸住宅やオフィスビル、商業施設、物流施設、ヘルスケア施設、データセンターなど多様なプロパティを対象に運用する不動産投資信託。東京証券取引所に58銘柄が上場されている。

今年10月末時点での時価総額は15兆円で、年間の予想分配金利回りは4.28%となっており、10月の売買代金トップ5は、KDX不動産投資法人、ジャパンリアルエステイト投資法人、日本ビルファンド投資法人、大和ハウスリート投資法人、日本プロロジスリート投資法人の順番だった。

三菱地所系のジャパンリアルエステイトと三井不動産系の日本ビルファンドはオフィスに特化し、KDXと大和ハウスは総合型で運用する。総合型とオフィスに加えて物流施設が人気となった。

意識調査イメージ写真 052

金融政策の変更は想定内

ゼロ金利政策が続く中で、4~5%の分配金利回りは魅力的に映る。ただ、足元では日銀の金融政策の変更で国内の長期金利が上昇していくとの観測から東証REIT指数は1800ポイント台にとどまっている。金利の上昇は有利子負債の多い住宅・不動産業界を直撃するだけにJリート全体の上値を抑えている感じになっている。

資源価格の高騰と円安を背景として物価高が続き、賃上げが想定以上に引き上げられればマイナス金利が想定以上の速さで解除される可能性も指摘されている。

金利が上昇すれば、運用資産を増やすために物件を購入することがしづらくなる。安定した分配金を支給するために、資産規模の拡大はJ-REITの宿命である。

結局、J-REITは長期金利がどうなるかということと、増配がどれだけ期待できるか、という簡単に言えばこの2つで決まってしまう。J-REIT各社による物件の購入は、昨年に比べて増加している。取得額は毎年1兆円超で推移してきたが、2022年は1兆円を下回ったが、今年は1兆円の大台に再び戻す可能性がありそうだ。

また、証券会社などの専門家に話を聞けば、金利が上昇局面を迎えたとしても、すでにREIT各社はその対策を講じており、現状のキャッシュフローに対する金利負担は小さいとみている。

物件購入のために調達するローンについても、一般的には3~5年であるが、マイナス金利など銀行の都合も相まって長期化されてきたという。ただ、マイナス金利が導入された2016年2月以降に上場したREITにとっては金利の発射台が低く、金利上昇リスクへの耐性を持っておらず、金利上昇局面では新銘柄ほどしんどい状況になると指摘する専門家も少なくない。

もっとも、日銀の利上げは米国を横目に見ながらだが、その米国の消費に減速感が強まっている。景気後退懸念を踏まえて、米国は従来の金融引き締めから一転する兆しが見られ、日銀の今後の金融政策に影響する公算も小さくはない。過去20年余り幾度と「金利上昇に備えよ」との声を巷で聞き続けてきたが、またオオカミ少年になる可能性もある。

パンデミックを機に総合型に向かう

では、J-REITの将来性はどうなのか。冒頭で上場銘柄数は58銘柄あるとしたが、以前は60銘柄を超えていた。銘柄間での合併が進んだことにより、銘柄数が減少したことになる。

今年3月1日付で森トラスト総合リート投資法人と森トラスト・ホテルリート投資法人が合併したのに続き、ケネディクス傘下のREITが11月1日にオフィス・賃貸住宅・商業施設を個々に運用する特化型を合併して統合型REITに衣替えした。

J-REITの歴史を振り返れば、幾度と合併が繰り返されてきた。スポンサーが同じ銘柄同士の合併や救済型の合併にほぼ二分される。2020年8月1日にはスターアジア不動産を存続会社とし、さくら総合リートが消滅法人となる非友好的なTOBによる合併もみられた。思惑の違う合併があったとはいえ、こうしたマーケット再編がREIT市場を活性化してきたとも言える。

最近の傾向としては、新型コロナウイルスのパンデミックの影響を映し出している。コロナ禍では、人の動きが制限され、ステイホームが推奨される3年あまりを過ごした。

それに伴い在宅勤務が定着したことで企業が借りているオフィスの床面積を減らし、空室率も高まった。ホテルや商業施設は国内外の観光客が激減してオフィス以上に打撃を受けた。この状況を踏まえて特化型のリートでは有事の際に被るダメージが大きすぎるため、タイプの違うプロパティを組み込んで総合型としてリスク分散をする動きに舵を切った。

大口投資家が求めていること

これに対しての反応はさまざまだが、特に投資口価格を動かす主体である海外投資家からの評価が今ひとつとされる。米国REIT市場で総合型は稀なケースで、ほとんどが特化型である。海外勢が今ひとつとする評価は、総合型にするとどのREITも同じになってしまい特色を見いだしづらいとするためだ。

総合型で安定的な分配金を目指したいJ-REITサイドと投資家との間で思惑が異なっている。投資家サイドとしては、特化型を複数銘柄持つことでリスク分散できると考えており、個々の銘柄にダイナミズムが失われることに危機感がある。国内外の機関投資家は、数千億円以上の資産規模のREITに資金を投入する。

ちなみにJ-REITのETF(上場投資信託)の投資家層を見ると、地銀を中心とした地域金融機関が占めている。市場関係者は『ETF=地域金融機関』という構図で見ている。資金の流出入の動きからは、安定した運用先として売り買いを繰り返している。

よく言われるように毎年3月頃には決算対策として地銀が益出しするため、春先に投資口価格が軟調になる。

個人投資家としては、個別株の投資法人に投資するのも、ETFに投資する場合も、マーケットの趨勢、機関投資家の趨勢を見定めながら、資産形成先としてJ-REITを活用していけばよいかもしれない。

健美家編集部(協力:若松信利(わかまつのぶとし))

■ 主な経歴

学生時代から不動産に興味を持ち個人的に不動産関連の記事を多数執筆。大学卒業後、不動産関係情報誌に20年以上勤務。現在は都内のIT会社に勤め、副業でいくつか投資関連の記事を担当・執筆する40代サラリーマン。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

アクセスランキング

  • 今日
  • 週間
  • 月間

不動産投資ニュースのライターさんを募集します。詳しくはこちら


ニュースリリースについて

編集部宛てのニュースリリースは、以下のメールアドレスで受け付けています。
press@kenbiya.com
※ 送付いただいたニュースリリースに関しては、取材や掲載を保証するものではございません。あらかじめご了承ください。

最新の不動産投資ニュース

ページの
トップへ