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財政破綻危機の京都市が打ち出した「別荘新税」。不動産投資家にとっては追い風?

不動産の税金/その他 ニュース

2021/06/10 配信

2018年の宿泊税に続く新税
空き家や別荘所有者に課税

京都市といえば日本有数の観光地。インバウンドや修学旅行生が押し寄せ、バスをはじめ市内の交通網は常に渋滞、地域住民の日常生活にも不便を及ぼすレベルなのはご存じの通り。一方で観光バブルにより関連ビジネスは大盛況だったことも事実だ。

コロナ禍によりインバウンドが焼失した京都市。昨年に市内主要ホテルを使った外国人は前年比で約9割減の36.5万人。関連事業は苦境に立たされている。
コロナ禍によりインバウンドが焼失した京都市。昨年に市内主要ホテルを使った外国人は前年比で約9割減の36.5万人。関連事業は苦境に立たされている。

ところが、新型コロナで状況は一転した。京都市観光協会によると、京都市内主要ホテルにおける2020年の延べ宿泊客数は前年比61.2%減。約654万人から253万人にまで落ち込み、域内経済は大打撃を受けている。そこで検討が具体化したのが、「別荘新税」だ。

京都市は国際的なブランド力などを背景に観光客を呼び込み、近年は外資系ラグジュアリーホテルの開業ラッシュに沸いてきた。「ザ・リッツ・カールトン京都」(14年)、「フォーシーズンズホテルレジデンス」(16年)、「アマン京都」(19年)、「フォションホテル京都」(21年)などがすでにオープンしていて、「ROKU KYOTO LXRホテルズ&リゾート」(9月)、「シャングリ・ラ京都二条城(仮称)」(24年予定)など、アフターコロナを見越して、今後も開業が相次ぐ見通しだ。

外資系ホテルによる投資に加え、風光明媚な京都は別荘やセカンドハウス、コンドミニアムの需要も高く、国内外の富裕層の投資対象にもなってきた。コロナ禍では、各国中銀の金融緩和で世界的なカネ余りが起き、資金の一部が京都の不動産に流れ込み状況は加速し、投資が投資を呼び込んでいる。

こうした状況は地域住民の住まいにも影響を与えていて、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の「住まいインデックス」によると、京都府の標準的な中古マンション価格は10年4月に約2700万円だったのが、21年4月には約4100万円まで上昇。直近3年間なら府全体で6.40%、市内伏見区は17.70%、北区も13.15%上がった。標準的な賃貸マンションの賃料も直近3年間で3.42%(府全体)上昇している。

京都市内には高級ホテルや富裕層向けのマンション、別荘、コンドミニアムが立ち並ぶ。魅力ある土地は投資を呼び込むと同時に不動産価格の上昇を招いている。
京都市内には高級ホテルや富裕層向けのマンション、別荘、コンドミニアムが立ち並ぶ。魅力ある土地は投資を呼び込むと同時に不動産価格の上昇を招いている。

国内外富裕層による不動産所有は弊害も生んでいる。彼らの住民票は京都市内にないので住民税を徴収できず、ごみ処理や上下水道など公共サービスに見合った負担もしていない。富裕層のマンション購入が増えた結果、物件価格は高止まりし、20~30代の子育て世代の住宅確保は困難に。市外や大阪や奈良、滋賀といった近郊都市への転出が相次いでいるという。

こうした状況を受け、京都市は昨年から新税導入に向けた有識者会議を設置のうえ、制度設計を進めてきた。具体的には、別荘や空き家など居住実態のない住居の所有者に対し課税を強化する方針だ。

保全対象になる京町屋や賃貸・売却予定の住宅地を除き、課税対象は1万7000戸にのぼる。税額の算出は「家屋の床面積1㎡あたりに一定額」「資産価値を表す額に一定税率」「家屋の固定資産評価を階層に分けて累進課税」の3案が提示されていて、次のような具体例も示している。

・市中心部の高僧分譲マンションの最上階を別荘として所有(床面積100平米):6万5000~43万円

・嵯峨、嵐山の戸建て別荘(床面積300平米):12万~43万円

対象となる物件は1万7000戸。所有者にとっては負担増になるが、京都市からすると手堅い税収になる可能性がある。観光地を有する自治体の参考にもなるだろう。
対象となる物件は1万7000戸。所有者にとっては負担増になるが、京都市からすると手堅い税収になる可能性がある。観光地を有する自治体の参考にもなるだろう。

具体的な制度設計はこれからだが、税収の見込み額は年間8億~20億円。これまで、静岡県熱海市では、同市に家屋を所有しているが住民票と税申告のない者に対して課税する、「別荘等所有税」を1976年に始めているが、京都市で導入されると都市部では初めてとなる。

10年以内に財政破綻する可能性を示唆
回避するためにも新税導入は必至

観光資源が豊富にあり、任天堂など大手企業もたくさん。一見すると財政的に豊かに見える京都市だが、実情はまったく反対だ。同市は学生・高齢者が多いので、市民1人あたりの税収は他の政令指定都市より7000円少なく、寺社仏閣・木造建築も多く固定資産税が少ない。

他方、保育料の軽減や医療費の助成、70歳以上の市民には低負担で市バスや地下鉄が乗り放題になる敬老乗車証を配るなど、独自の手厚いサービスを実施。1997年に開業した地下鉄東西線に約5500億円を投入したが利用客は伸びず、経営維持のために市の一般会計から967億円を補填するなど、台所は火の車だという。

その結果、貯金に相当する財政調整基金は20年前に枯渇し、将来の借金返済に備え積み立てている公債償還基金を取り崩す禁じ手も長年続けていて、コロナ禍でさらに追い込まれることに。

今年度はイベントの主催・共催を見直し、職員削減や本給最大6%カットなどの行財政改革で215億円の財源をねん出、公債償還基金を過去最大の181億円を取り崩すとしているが、このままでは数年後に財政は底をつき、10年以内に財政破綻する恐れがあると門川大作市長は6月7日に発表した。同市は18年に宿泊税も導入しているが、別荘新税の導入もやむを得ないのかもしれない。

税制で起死回生を図ろうとする京都市。不動産オーナーからすると、市外へ流出する住民の受け皿として近隣で賃貸物件を持つなど、こうした状況は投資の参考になるだろう。

健美家編集部(協力:大正谷成晴)

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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