6月に入って日経平均は3万3000円超えして、33年ぶりに平成バブル以来の最高値を更新しています(何故か3並び!)。都心を中心に地価(不動産)も高値が続いています。昔から、株価は地価に先行するパイロットともいわれているようです。
私が初めて不動産を購入したのが平成バブルピークの1989年でしたので、超長期的マクロ目線で色々なデータを分析して、改めて自分自身の復習をしてみました。
備忘の意味もありデータを纏めてみました。情報共有させて頂きますので、ご批評賜れば幸いです。
■日経平均と地価は相関しているが、今は株価の独歩高
不動産価格の物差しの一つにJ-REIT指数がありますが、必ずしも地価を表してはいません。更に、地価といっても、場所により異なりますし、更に不動産価格を細分すると、一棟RC、アパート、戸建、区分と様々です。
とはいえ、ここではマクロ的検討なので、データを扱いやすいJ-REIT指数を使うこととします。図1はJ-REIT指数と日経平均、日本10年国債利回をプロットしたチャートです。
- 日経平均と地価はおおむね相関している
- J-REIT MACDは上昇傾向
- 最近のJ-REIT RSIは未だ低い
等の事実をこのチャートは示しています。
日経平均が急騰している割に、J-REIT指数はこれから上昇期に入ろうとしているのが分かります。
■地価と公定歩合、消費者物価の超長期相関
J-REITデータは地価と完全には一致せず、しかも歴史が浅く最近のものしかありません。長期目線検討のため、地価そのもののデータである公示地価の超長期チャートを示したのが図2です。
地価は金利と物価の影響を受けることは衆知ですので、図3に公定歩合と消費者物価の超長期チャートを示します。
- 超長期で地価と日経平均はほぼ相関する(図2と図4を比較)。
- 日銀のゼロ金利導入以降、公定歩合は消費者物価とは相関しなくなった(図3)。
- 図2と図3を比較すると、消費者物価と地価とは、相関関係が認められる。
- 図2の地価と図3の金利を同時に見ると、この20年間は、異例の低金利下で異例の物価安が続いたので、格安の不動産にゼロ金利融資が引ける、世界的にも歴史的にも極めて特異な環境だった。
などが読み取れます。
■米ドル関係指数と日経平均の関係を見てみた
以上は日本国内だけのデータでしたが、次に世界経済を動かす基礎となっている米ドルをベースに見てみました。
図4は、日経平均と米10年債利回、ドル指数を1枚のチャートにプロットしてみました。
図4を眺めると、改めて米国の影響を痛感します。1990年のソ連崩壊を境に、米国の最大のライバルが消滅すると、今まで共産圏への楯にする為に保護してきた日本が、今度は最強の経済的ライバルになったことで、米国の対日政策が急変し、市場も暴落。
2012年には新たに中国が米国の明らかなライバルになったので、米国の対日方針が急転し、再び潮流が大きく変わり、市場の潮目も変わったとも考えられます。
- 米10年債利回りを追ってドル指数(主要通貨に対するドルの相対価値)が動き、それを日経平均が追っている傾向がある。
- 日経平均は超長期的に30年サイクルでオニールのCup with Handle(ウィリアム・J・オニールが提唱した、上昇サイクルが入るシグナル)を描こうとしているようにも見えます(まだカップは完成していない)。
- 1980年以前の日経平均と米10年債利回・ドル指数との関係は図5のようにドル固定相場制の1
- ドル360円からの変化調整期間であるため、参考にはならないと考えられる。
- 日経平均とドル円(ドル指数÷円指数)を中期的に見たのが図6で、最近の相関係数は0.8で相関性が強い。
- 日経平均と日米金利差(米10年国債利回-日本10年国債利回)を中期的に見たのが図7で、最近の相関係数は0.8を超えて1へ近づいており、非常に相関性が強い。
図4、図6、図7からも、日経平均はマクロ的にはドル指数によって動かされており、ドル指数は米国債金利に動かされていることが分かります。
■日本株は外国人に買い支えられている
それでは、今の日本株高は誰が買い支えているのか。図8で見ると外国人投資家だと分かります。
更に、外国の機関投資家は、いわゆる生保・年金と、それらから莫大な資金を預かり運用するヘッジファンドなので、シカゴ・マーカンタイル商品先物取引所のデータで、日経平均先物のNet Positionをみると、意外と低い金額しか積まれていません(図9)。
つまり、今は日経平均指数が買われているのではなく、大型個別株の現物が外国人によって買われていることがこのデータから分かります(東証からPBR>1とする指導が出たり、バフェットさんが日本商社株を買ったりしたのも追い風)。
一方、先ほどの分析で、日経平均はドル指数と米10年債によって動かされることを調べましたので、円売り(図10)と米10年債の先物(図11)のポジションを調べてみました。
円先物ポジションは海外機関投資家によって、巨額の売りが積まれているのが図10で分かります。
・投機筋の目先センチメントは円安
更に、米10年国債は、海外機関投資家によって、巨額の売りが積まれているのが図11で分かります。
・投機筋の米国債への目先センチメントは価格安で、利回上昇
株価は短期ではこのようなセンチメント指数によって動くと言われていますので、米国債は日米金利差に相関している日経平均の先行指数と言えます。
ただし、
- 日銀のYCC=0.5%解除(金利上昇)
- 円安に対する日銀為替介入(円高誘導)
- 貿易収支赤字定着で円安は経済に不利になっている
- FRBのFFR操作(米国の失業率と消費者物価等経済指数次第)
など、当面のリスク要因があります。
日経平均と相関する地価は、今は日経平均より割安という分析結果ですが、果たしてどうなるでしょうか?
■歴史的に超長期での投資トレンドを調べると10年サイクルで主役が交代している
図12は米ドル変動相場制へ移行して以降の投資ローテーション、一定サイクルで最も値上が大きかった投資対象を同じ1枚のチャートに描いてみました。
各投資対象グラフを色分けしており、最大パフォーマンス対象をその色と同じ点線矢印で示しています。その投資対象を同じ色で、各期間毎にグラフ下に書き出してあります。
- 1970年代は金(Gold)
- 1980年代は日本株
- 1990年代は米株、米ドル(日本でも海外投資解禁)
- 2000年代は新興国(BRICS)、コモディティー
- 2010年代は米株
ちなみに債券に注目すると、1980年前半の利回り15%超の米国長期債(元本・利回とも保証!)・オレンジ線に投資していれば凄いように見えますが、図3の通り、当時の日本のインフレ率は10%程度もあり、超長期では図5の通りドル円は1ドル280円から最低80円以下にまで1/4にも下落しましたので、国債満期償還時は大幅に目減りしています。やはり時代毎①~④が有利だったと分かります。
同様に、今は短期的には米国債の買い時ですが、後述する米国債利回り60年周期を考慮すると、ドル円のトレンドが昔と変わったとはいえ、長期的には上記と同様の注意が必要だと思います。
こういったデータを見ていると、インフレに負けない株式で超長期に増配し続ける銘柄に長期間積立配当再投資する戦略は、時代を超えて有効であると気付かされます。
詰まるところ、物価に価格相関してインフレに負けない不動産で、安定家賃を得続けるのも、同様の戦略と言えましょう。
一方、これらと図2の地価(≒物価)と図3の金利を見比べてみると、2000年代の日本の国内不動産+地元融資という局地戦ガラパゴス世界では、上記①~⑤とは隔離された別モードの有利な投資(フルローンでキャッシュフロー、インカムでキャピタルロスを挽回)ができた特殊環境だったことも感じます。
このような主役交代劇をトーレスしてみると、キャピタルゲイン投資の視点では、今後は、今まで絶好調だった米株から、2020年代以降は主役が入れ替わることを示唆しています。それが何になるかは、諸説あるようです。
■米国債利回り60年サイクル超長期的トレンドは次の30年上昇サイクルに入ったか?
全ての基礎となるのがアメリカ国債利回りですので、最後に図13で過去約200年間に渡る米10年国債利回の超長期チャートを調べてみました。
200年間生きる人は居ませんが、これを見ると約60年間を1サイクルとして、約30年間上昇、約30年間下降を繰り返しています。
30年間と言えば、一人の人間が人生をかける経済活動年数に相当しますので、これを見誤ると、順風か逆風かの帆船航海を誤る程、大きな影響が出そうですね!
改めてこれを眺めていると、今は、次の30年間の上昇サイクルに入りかけているように感じられます。
とはいえ、図13はあくまで世界の基軸通貨がドル前提です。
しかし、21世紀は仮想通貨(分散通貨)等も登場して、従来と同じことが繰り返されるのか分かりません。
現在、全世界の貿易決済の実需マネー量は20兆ドル程度である一方、全世界の投資マネー規模は約100兆ドル、うち、約半分が米ドルです。そして、金(Gold)市場は約10兆ドル強、仮想通貨市場は未だ約1兆ドルです。
今後、主役のドルがいつ、どのように変わるのか? あるいはこのままなのか?
最も気になる日本の地価も金利も、ドルがベースになることを改めて確認できましたので、私共、個人投資家は、こういったデータを見て行くのが大切だと再認識しました。
近年は日本の貿易収支の赤字が定着しているため、これによってドル円トレンド潮流が大きく変わっているのも要注意だと思います。
超長期データがあっても、実際に投資する際は、例えば、私の故郷の湘南海岸のビーチから波を見ても、黒潮の潮流がどう流れているのか分らないのと同じで、タイミングは計れず難しい!
専門外の愚生がデータを集めて見ましたら、日本の地価も金利も、今後は上がるように揃ってしまいましたが、将来、何が起こるかは分かりません。
実際に投資する際はくれぐれもご自身でデータ分析なさって、自己責任でお願い申し上げます。
■芦沢ラボ 西東京のアメリカ、米軍横田ベースを見学してきました
上記のような米国の力を見てみようと、6月に西東京にあるアメリカ、米軍横田基地(旧・日本陸軍航空審査部跡地)を見学してきました。
ベトナム戦争当時は、隣接する入間市のジョンソン基地から、いわゆる北爆のB52が出撃していましたので、飛行コースに該当する騒音被害対策で、私が住んでいた会社の独身寮は防衛費補助金で、防音サッシ構造に改築されエアコンまで付けてくれるという、当時としては非常に贅沢な装備でした。
ここ数年は、南シナ海情勢の緊張と台湾有事対応のためか、C130輸送機やオスプレイが小隊単位で、夜間まで頻繁に編隊飛行しています。
人口300万人の東京西部、三多摩地区上空を東京タワーよりも低い高度で長時間、旋回飛行訓練しているのが昼夜見られます。オスプレイのプロペラ・パワーは物凄く、上空通過時はRCマンション全体が空気振動で揺れる凄い迫力です。
人口密集地帯の首都大都市の直上で、軍用機が編隊飛行訓練できるのは、米軍の絶大な権限を痛感します。これが航空自衛隊機なら行政へ大クレームが入るでしょう。
それを裏付けるのが、図18の横田空域です。世界でも、一国の首都に、現役米軍基地が稼働し、首都圏広範囲の直上領空圏を米軍が独占しているのは日本だけです。関東地方の上空は日本領土ではなく、米国領土(領空)なのです。
これらを見ても、軍事的に如何に米国の影響力が強いかが分かります。
政治面でも長年に渡り「年次改善要望書」によって郵政民営化がなされ、郵貯の財政投融資の国家予算にも匹敵する莫大な資金が世界株式市場へ解放されたり、外資持株会社が解禁されたり、大店法改定でシャッター街ができたり、建築基準法改定による在来木造工法から2×4工法への普及など、内政の細部に渡り、最優先国家政策として実行され続けてきました。
身近な米軍横田基地内に身を置いてみて、改めてドラえもんのジャイアンのような米国の力を実感しました。