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火災保険の事務手続きを学ぶ2【賃貸経営のための保険講座】

賃貸経営/保険 ニュース

2024/01/10 配信

所有する賃貸物件の数が増えていくに従って、それらに掛ける保険の管理も煩雑になっていく。それ故家主は、物件ごとに異なる補償内容などを詳しく把握していないばかりか、郵送された保険証券を開封もしないままどこかへ仕舞い込んでいることもあるという。

火災保険は、一度契約してしまえばそれで終わりではない。様々な環境の変化により、補償内容にも何らかの変化を加えなければならないこともあるだろう。

長期契約が主流の賃貸物件の火災保険の場合、満期までの数年間、補償内容の確認も見直しも行なわれないままでよいのだろうか。

・満期継続のときにこそ、契約内容の見直しを

様々な保険の事務手続きの中でも、その機会が最も多いのは、満期を迎える契約の継続・更新だ。1年契約なら毎年、長期契約でも数年のうちに必ず満期が到来する。

継続契約時によく「前回契約と同じ内容で」との言葉が、契約者と代理店のどちらからともなく聞こえてくることが多いが、本当にそれでよいのだろうか。

保険始期日から満期日までの期間が長ければ長いほど、補償内容と実際のリスクとのあいだには歪みや隙間が生まれる。建築費をはじめとした物価の上昇、消費税率のアップによって実際の再調達価額と保険金額が乖離していたり、気候変動によって周辺環境が変わってしまうなどがその要因だ。

また、入居者の高齢化などもリスク変動には大いに関係がある。よって、長期契約の満期継続時には、現在のリスクに沿った契約内容、補償内容の見直しが必要だ。そこで、比較的最近新設された賃貸物件向けの特約を紹介したい。

【満期継続時に新たに付帯を検討すべき特約】

■特定機械設備水災補償特約

台風や豪雨等による洪水や土砂崩れ等によって、空調・冷暖房設備、給湯設備、充電・発電・蓄電設備等の機械設備に発生した損害を、「水災(*)」による損害の程度にかかわらず保険金を支払う特約。

(*)「水災」とは、保険の対象である建物に再調達価額の30%以上の損害が発生した場合、または保険の対象である建物が床上浸水または地盤面より45cmを超える浸水を被った結果、保険の対象に損害が発生した場合を指す。

■地震火災費用拡張特約

地震、噴火、津波に起因する火災により、建物が半焼以上となった場合支払われる地震火災費用保険金(火災保険金額の5%・上限300万円)を、30%または50%(支払い上限なし)まで引き上げる特約。これにより、地震等を原因とする火災であれば、地震保険金と合わせて最大100%の補償が可能となる。

■家主費用特約

賃貸住宅内での死亡事故(自殺、犯罪死または賃貸住宅の物的損害を伴う孤独死)発生に伴い、賃貸住宅オーナーが被る家賃収入の損失や、清掃・脱臭・改装・遺品整理等にかかる費用を補償する特約。

・新たに保険料が割引になるケースも

火災保険は近年、保険料の値上げに歯止めが掛からない。自然災害の頻発がその原因の一端だが、その一方で建物の耐火性能に応じて保険料が安くなる建物の範囲が拡大している。これにより、H構造→T構造、T構造→M構造のような構造級別のランクアップが可能になる。

構造級別分類

満期を迎える契約の締結時には建物構造級別のランクアップの対象にはならなかった建物が、満期継続のときに確認資料(*)の提出を条件に新たに適用可能になる場合がある。

しかしこれらは自己申告制なので、満期のときに申し出がなければ、継続契約に自動的に適用されるわけではない。継続契約時に最も気を付けなければならない確認事項の一つだといえる。

(*)確認資料の例:

確認済証、設計住宅性能評価書、建設住宅性能評価書、など

・被保険者個人が死亡した場合の手続き

火災保険では、建物の所有者が「被保険者」となる。個人の所有者が死亡した場合、被保険者の権利は相続人に相続される。建物の所有権が複数の相続人の共有になる場合は、持ち分割合に関わりなくすべての共有者を被保険者にする必要がある。

同時に変更しなければならない「保険契約者」は、複数人にすることができない。通常は相続人の任意の代表者1名が保険契約者になるが、実は保険契約者は法人・個人を問わず誰でもなれるので、親族の資産管理会社に変更することもできる。

・火災保険契約は任意で譲渡・譲受が可能

前回の投稿で、所有する賃貸物件を手放したときの火災保険の事務処理について述べた。売却によって、対象となる建物の所有権が譲渡されるので、手続きとしては「解約」ではなく「失効」となる。決済日以降、保険の効力は自動的になくなり、同時に次の所有者が掛ける火災保険に補償が切り替わるのだ。

既存の火災保険契約が長期契約だった場合、これを失効させず、この決済日付けで売主から買主に名義変更してみてはいかがだろうか。

決済日に保険契約者、被保険者を買主に変更し、決済日時点での火災保険契約の解約返戻金相当額(代理店に照会して金額を算出、名義変更手続きを行なう)で金銭譲渡する。

火災保険は近年、毎年のように値上げが続いており、保険期間の最長期間も今やわずか5年だ。かつては最長36年もの長期契約が可能だったので、契約を譲受された買主は、残存期間の長い、過去の安い火災保険料率の火災保険契約を手にできるわけだ。売主にとっても、売却物件の付加価値を上げるオプションとして活用できる。

また逆に、中古の賃貸物件を購入する場合には、売主に火災保険契約の譲受を申し出てみてもいいだろう。火災保険料率は、自然災害の頻発により当分の間引き下げに向かう見通しがたたない。

よって過去の安価な長期契約は、希少価値がきわめて高い「お宝保険契約」なのだ。初期費用を少なく抑えることができるばかりでなく、当分の間保険料負担を先延ばしする効果もある。売主にも買主にもメリットのあるこの手法を、是非心得ておきたいものだ。

執筆:斎藤 慎治(さいとうしんじ)

斎藤 慎治

■ 主な経歴

保険ヴィレッジ株式会社 代表取締役
大家さん専門保険コーディネーター であり、自らが大家でもある(都内を中心にアパート、マンション、戸建て、事務所、店舗などの賃貸物件を所有)。
大手損害保険会社を退社後、保険代理店を創業 。その後、東京都豊島区東池袋に「保険ヴィレッジ」設立、 代表取締役に就任

平成 22 年より「大家さん専門保険コーディネーター」としてのコンサル事業を本格的に開始 。
大家さん向け保険コンサル、セミナー、執筆などを数多く手掛ける。自称「保険約款オタク」。

自らも大家として現在も賃貸事業を拡大中 「大家さん目線の保険研究」をモットーに、大家さん支援の保険分野に特化した活動を展開中 。 東京都北区出身 。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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