30代でワンルームを都内に買ったことを機に不動産投資を始め、ワンルーム、1棟アパートなど計112戸を所有し、約半数を自主管理する小川貞夫さん。どのようにして物件を買い進めたかは前回記事<前編><後編>をお読みいただきたい。そんな小川さんが実践する、カッターとドライバーがあればできる、コストを抑えた空室対策術を3回にわけてご紹介する。
第一弾の今回は、内見時に入居希望者に最も大きくアピールできる「家電付き」にするうえでのポイントをご紹介する。
空室対策術「その1」:新生活がすぐにスタートできる「家電セット」付に。家電量販店でまとめて購入。10年は使える!
まず大前提として覚えておきたいのが小川さんの不動産投資のスタイルだ。北関東エリアの「郊外・地方の高利回り」物件を中心に買い進め、バブル期建築のものをできるだけ安く入手してきた。所有する112戸のうち約半数を小川さんは自主管理しているが、物件によっていい管理会社が付いていればそのまま管理を任せ、そうでなければ、家賃の入金チェックや物件の管理など、入居者募集以外は小川さん自ら行うこともある。だいたい3パターンぐらい管理方法をわけている。
小川さんが所有している物件のなかには、家賃3万円前後の1Kなどの単身者向け物件が多い。そうした物件が長く空室になっているケースは、世間一般でも少なくないだろう。いかにして満室にしてきたのだろう?
「空室対策に有効な方法はいろいろあります。たとえば『家賃を下げる』『ペット可にする』『高齢者や生活保護の人を受け入れる』『シェアハウス、グループホームにする』などですが、私が選んだ方法は、『家電付き』にすることと、あとは室内の設備の交換などを自分で行うことや、入居者や仲介業者といい関係を築くことです」
小川さんの所有する物件の入居者のターゲットは、初めて賃貸住宅に住む大学生や新社会人、または配属先で初めて賃貸を経験する「賃貸デビュー」をする人である。彼らにとって、「家電付き」であることは、家電を新たに揃える手間やコストを省くことができ、とても魅力的である。
「私の娘と息子も一人暮らしを経験しております。賃貸住宅に家電が付いていることで、すぐに新生活をスタートできます。一緒に内見にいらっしゃる、入居者の母親にとても喜ばれます。年末になると、大手家電量販店が『大学生向け新生活応援セット』として、必要な家電をまとめて売り出し、5~6万で揃えることができます」
小川さんが家電を購入しているのは埼や群馬など、所有物件の近隣で店舗が充実している「ヤマダ電機」である。家電の修理や配送なども考えると、ヤマダ電機に限らず、物件の近くの「家電量販店」で探すのがいい。
家電は設備として貸し出し、壊れたら大家負担で電気店に依頼し交換する。小川さんの経験上、新品で購入したものは、だいたい10年ぐらいは故障せず、使うことができるそうだ。退去があれば、そのままその家電を置いて退去してもらい、こびりついた汚れなどは清掃して、また次の入居者に貸し出す。
最初に初期費用はかかるものの、5~6万円かけて設置したら10年は使えると考えると、なかなか有能な空室対策術といえるだろう。
小川さんが揃える家電は次の6点で、どれも新品を買う。中古品は、安く入手できることもあるが、壊れることも多く、引き取りや修理の手間がかかることから新品を揃える。デザインにはこわだわりはないが、内装に合わせやすいように白や黒など「無難」な色やデザインの家電を選択する。
<入居者に喜ばれる家電6点セット>
1:冷蔵庫 2ドアで冷凍庫に霜がつかないもの
2:洗濯機 5キロ、洗濯槽がステンレス
3:電子レンジ 以前は価格優先だったが、今は回らないフラットタイプを重視
4:トースター 朝食時を想定し、食パンが2枚焼けるもの
5:炊飯器 窯が厚いもので、価格優先
6:掃除機 パワーを重視、価格優先
空室対策術「その2」:ウォシュレット(温水洗浄便座)
入居者層の20代、Z世代には喜ばれる
家電に関連して、空室対策として有効なのが「ウォシュレット(温水洗浄便座)」である。入居者層である「Z世代」と呼ばれる今の20代は、生まれたときから自宅のトイレにはウォシュレットが付いていることが当たり前のようになっている。
「ウォシュレットは非常に入居者受けがいいですよ。たとえば内見時に入居希望者が同じようなレベルの賃貸住宅を見て、迷っている場合、ウォシュレットがある方を選ぶことがあるほど、差別化要素になります。
私の所有している単身者向け物件は家賃が安く、ウォシュレットが付いているような賃貸は珍しいので印象アップにつながります」
予算はだいたい6万円くらい。購入先は「ヤマダ電機」。1度新品を取り付ければ、20年は故障せずに、使うことができている。
取り付けは購入した「ヤマダ電機」に依頼し、取り付け費に1万5000円程。ウォシュレットの取り付けには、電気工事士などの資格は必要ではなく、DIYが得意であれば、自分で取り付けることもできる。
「ウォシュレットの取り付けは、20年程前に自宅で挑戦しましたが、苦労しました。それに懲りてから業者に依頼しています。多くの場合、専用コンセント増設の必要があるため、電気屋に依頼するのが一般的です」
ちなみに小川さんが実際に購入しているのは、写真の「パナソニック 温水洗浄便座 ビューティ・トワレ」だ。省エネ性がトップラスであるが、基本的には価格重視で、温水が出て便座が温まれば十分だ。
今回は、ライバル物件に大きく差を付けられる「家電付き」にする際にどんな家電を採り入れるべきかをご紹介した。空室対策を考えている方は、ぜひ参考にしていただきたい。~明日の次回は室内編をお届けする~
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健美家編集部(協力:
(たかはしようこ))