28.8平米の狭小地を持て余し
民泊事業を開始
FF@大家さんは、主に都内と横須賀エリアで活動している女性大家である。
出版社で成人向け雑誌や、サブカル誌の編集者を経て、動画サイトを運営するIT企業のモバイルメディア事業にも携わっていた経験がある。
大家歴は、2023年現在で法人4期目、個人7期目。所有物件は、中古のアパート5棟、戸建て7件であり、そこには横須賀のベース賃貸物件や民泊物件が含まれる。年間家賃収入は3000万円を超えているという。
前編のインタビューでは、5階建て新築RCを建てるべく、江戸川区の某駅から徒歩5分、4車線・5車線ある大通りに面した広さ28.8平米の土地を購入したエピソードを紹介した。
RCを建てるために必要な土壌改良に多額の資金を要することが発覚し、FF@大家さんは途方にくれる。土地建物5000万円で組んだ融資を解除して、土地だけ現金1500万円で購入した。
売却も視野に入れ1年以上寝かしたままになっていた土地は、民泊事業で役立てられることになる。
「知人の大家さんが民泊をして成功していたので、自分もやろうと思いました。持て余していた土地は、木造なら建てられるけれどアパートでは狭すぎて家賃がとれないので、そこで最大限の収益を上げるとしたら民泊だと思ったのです」
土地が狭小のため、住宅メーカーに見積もりを取ると割り増し料金にされてしまう。そのような中、センスの良い注文住宅を作る「東京組」は、当初の見積もりは安くなかったが、割増料金も少なく柔軟に応じてくれた。

旅館業の営業許可を取るために
工務店と綿密に打ち合わせ
旅館業の営業許可を得るために設計士と綿密に打ち合わせ、客室面積、ベッドの広さ、トイレや洗面所、共用スペース、消防設備などを整えた。消防署や保健所の届け出は、FF@大家さんが自ら行った。
旅館業の営業許可がない場合、宿泊施設として365日営業することができない。許可なしで行う場合は最長営業日数が1年で180日に限られるなど営業制限が生じる。収益性を高める上で、旅館業の営業許可は必須だった。

完成した貸切一軒家の民泊施設は、3階建のロフト付き、約70平米。最大で8名収容できる施設である。オープンしたのは2021年6月。
差別化のポイントとして「新築1棟貸」「東京ディズニーリゾートまで車で約15分」「秋葉原、東京駅、浅草、上野へのアクセスの良さ」などを訴求している。

ソファダイニングや55インチ大型テレビ (Netflix&Amazonプライム見放題)、オシャレなバーカウンターもそろえた。



キッチンスペースと風呂、洗面も充実。FF@大家さんならではの感性が存分に活かされている。
コロナ禍で多くの大家が民泊事業から撤退
現在はインバウンド需要が復活し加熱気味
こだわりの民泊施設ができたのはいいが、不安だらけのコロナ禍での船出だった。
「コロナの脅威は感じていましたが、もうストップできる状況ではなかったのです。『大丈夫かな?』とずっと思いながら進めていました」
見込んでいた訪日外国人旅行客はまったく来なかった。平日の予約は埋まらない。しかし、金土日の週末は宿泊客があった。
「周辺のお店が20時くらいに閉まるので、飲み足りないパリピ(パーティーや飲み会でワイワイするのが好きな人たち)のみなさんが、毎週利用してくださったんです。おかげで、オープン当初から毎月20万円から30万円の売り上げはありました」
清掃費や光熱費などの経費は売上の約30%であるため、建物分の返済の月6.5万円を引いても、かなり手残りがあった。
コロナの脅威が後退すると、訪日外国人旅行客からも予約が入るようになる。現在は毎月100万円前後の売上があるという。

「さらに民泊事業を拡大しようと思ったのですが、都内の物件は取合いの状態です。転貸・民泊可能となると供給が少ないため、『家賃を釣り上げてでもやりたい』という人が出てきています」
一方で、民泊事業は外部環境の影響が避けられず、浮き沈みの大きいビジネスである。
「コロナ前に大家をしながら民泊をしている仲間は多くいましたが、皆コロナの時期にかなりの割合で撤退しています」
民泊事業は、外部環境の脅威を避けられず、物件価格や家賃も高騰している。しかしながら、転貸物件でやる場合は、初期投資は200万円から300万円程度で足りるので、借入れなしで始められる魅力がある。
「民泊事業を今始められれば儲かる可能性が高いです。旅館業の営業許可や、物件契約にかかる費用、家具などを入れても、普通の会社員の方が、借入なしてスタートできる事業だと思います。不動産賃貸業より手はかかりますが、もし想定より上手くいかなくても大きな痛手にはならないはずです」
100点満点の物件を探していたら
いつまで経っても不動産投資デビューできない
FF@大家さんは、再生アパートやベース賃貸(米軍所属の軍人や基地関係者との賃貸契約を行うこと)など、高い利回りの物件を経営している。家賃年収は3000万円以上で、返済比率は31%と財務も健全だ。
利回りの高い物件を経営しており、失敗する余裕があるから民泊事業にチャレンジできた側面もあるが、これから始める人には今すぐに始めることを勧めるという。
「理想の物件ばかり追いかけていたら、いつまで経っても始められません。大事なのは始めてみることです。ゼロとイチでは全然違います。今なら大きく失敗することはないはずです」
首都圏の不動産の値上がりは止まらない。新規参入が難しい今、これから不動産投資を始めようという人にとって、数百万円で始められる民泊という選択肢はかなり有望かもしれない。

健美家編集部(協力:
(とやまたけし))