
不動産投資を行う上では、新築を建てるにしろ、中古をリフォーム、リノベーションするにしろ、何かと高額な費用を要するものである。国や自治体ごとに住宅関係の様々な補助金があるものの、賃貸物件となると対象外だったり、活用が難しい場合も少なくない。
しかし、先日創設された新たな補助金事業「子育て支援型共同住宅推進事業」は賃貸物件にも活用OKな、むしろ不動産投資家向きの補助金とも言えるものだ。
アパートや区分マンションで活用可能
1戸あたり最大100万円の補助金
国土交通省において令和4年1月に創設された本事業。共同住宅(賃貸住宅及び分譲マンション)を対象に、事故や防犯対策などの子どもの安全・安心に資する住宅の新築・改修の取り組みや、子育て期の親同士の交流機会の創出に資する居住者間のつながりや交流を生み出す取り組みを支援することで、子育てのしやすい住環境整備を進めるというものである。
対象物件は建築基準法上の「長屋」もしくは「共同住宅」とされており、一棟所有はもちろん区分所有も対象となるが、戸建てについては残念ながら活用することはできない。入居者募集の際に一定期間は子育て世帯に限定した募集を行う必要があるほか、居住部分の床面積が40u以上であること、新耐震基準に適合した物件であることなどの条件もある。
本事業は「子どもの安全確保に資する設備の設置に対する補助
」と「居住者等による交流を促す施設の設置に対する補助」のふたつからなり、新築物件、中古物件ともに補助対象となっている。
「子どもの安全確保に資する設備の設置に対する補助」では、1戸あたり最大100万円(新築:1/10補助、改修:1/3補助)で、以下の表に示す補助対象工事の総額から割合に応じた補助を受けることができる。

子どもの事故防止、見守りや不審者侵入防止といった視点から項目が設定されており、新築の場合は表中のすべての項目を満たす必要があるが、改修の場合は黄色の網掛け部分のみ必須項目となっている。
細かい点が多いようにも感じられるが、対面キッチンの設置やリビングの間取り変更といった物件づくりの目玉となるような項目も含まれているので、活用の自由度としてはなかなか高いのではないだろうか。
もうひとつの「居住者等による交流を促す施設の設置に対する補助」は先述の補助に併せて利用可能なもので、一棟ものを対象に、キッズルーム、遊具や家庭菜園といった居住者同士の交流が可能な施設や設備の設置に対して最大500万円(新築1/10、改修1/3)を補助するというもの。新築の場合は本補助による整備が必須となるそうだ。

補助を活用するためには表中の項目の2項目以上を満たすことが必要とされている。敷地面積やコスト面等のハードルはあるが、うまく活用できれば子育て世帯にやさしい物件として、周辺のライバル物件との差別化につながるだろう。
補助金を活用した築古リノベーション事例
放置されていた空室が今の市場で戦える物件に再生
賃貸住宅向けのリノベーションなどのサービスを提供するグッドルーム株式会社では、補助金をいち早く活用し、北九州市の築37年のRCマンションの部屋をリノベーション。

間取りや設備等が古くなり、長期化する空室に頭を悩ませていた物件オーナーに対して補助金を活用した工事を提案。
3LDKから2LDKへの間取り変更、内装一式、建具の入れ替え、キッチンの体面化やその他設備の更新など約450万円分の工事を100万円の補助を受けて実施した。
申請に係る書類作成や事務局からのヒアリング対応などは同社が代行し、はじめの申請相談から事前審査、本審査を経て交付決定にいたるまでの期間は2ヶ月ほど要したという。
本件を担当した同社の山本さんは「補助金によってオーナー様の350万円という予算はそのままに、よりグレードの高いリノベーション提案が可能になり、周辺の築浅物件並みの家賃ですぐに入居が決まる部屋になりました。オーナー様にとってメリットの大きい補助金制度だと感じています」と話す。
安心・安全な子育て環境の提供に資する取り組みを応援する子育て支援型共同住宅推進事業。ファミリー向け物件の新築や改修を検討している方は、うまく活用してみてはいかがだろうか。
健美家編集部(協力:
(たまあらい))