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所有者損害賠償1億円、逗子斜面崩落事故などにみる大家の責任

岡元公夫さん_画像 岡元公夫さん 第161話 著者のプロフィールを見る

2024/1/10 掲載

昨年に、注目している二つの事故に進捗がありました。
一件は、2020年2月に神奈川県逗子市で分譲マンションの敷地の擁壁の上の斜面の土砂が崩落し、下を通行中の女子高校生が巻き込まれ亡くなるという事故。

もう一件は、2021年7月に熱海市で発生した大規模な土石流で、地区を流れる川の上流部に違法に造成された盛り土が崩れ、災害関連死も含めて28人が犠牲となった事故。

事故発生時の状況などについては、当時のコラムにも書いてますので参照願います。

121話:その不動産は買ってはいけない。擁壁のリスクを知っていますか?

131話:その不動産は買ってはいけない!熱海土石流・西成区崩壊にもみられる盛り土や急傾斜地

■逗子斜面崩落事故の裁判進捗

この事件で遺族は、管理会社側が事故前日に斜面の亀裂を発見した管理員から連絡を受けたのに安全対策を怠り、マンション所有者の住人らにも危険な斜面に関する責任があるなどとして損害賠償を求めて提訴していました。

また、別にマンション所有者は、適切な管理や措置を怠ったとして管理会社などに賠償を求めていました。

結果は、マンション所有者と遺族は、マンション所有者が遺族に1億円支払うことで和解。管理会社と管理会社の元担当者は、横浜地裁から計約107万円の賠償を命じられました。

そして管理会社は横浜地裁から所有者に対し約4,193万円の賠償を命じられました。

■熱海土石流災害進捗

熱海土石流災害では、遺族らが前の所有者や現在の所有者らに約58億円の損害賠償を求める訴訟を起こしており、2024年7月に公開の法廷で審理が行われることが決まっています。

また崩落の起点に残った不安定な土砂を撤去した行政代執行の費用について、静岡県が前の土地所有者に納付を命じました。その額は、4億6千万円とのこと。

新たに表面に植えられた植物や、排水路も、業者の代わりに行政が整えました。代執行の総事業費は11億円になるそうです。さらに汚染のあった土壌の処理に掛かった費用などは追って請求する予定だそうです。

■賠償のための保険に注意

それぞれの立場での責任の重さを感じさせられます。
人の命は、お金に代えられるものではありませんが、起きてしまったことには責任を取らなくてはなりません。

では、この賠償金は、どのように用意するのか。

たいていの大家さんは、賃貸物件を取得するときに火災保険に入ると思います。火災保険では、大雨などが原因の土砂崩れによる建物などの損害は水災として補償されます。また地震が原因の場合は、地震保険にて補償されます。

しかし、これらはあくまで水災や地震による建物の損害が補償対象で、土砂崩落に巻き込まれた人に対する損害賠償は対象外です。

土砂崩落の被害者に対する賠償は、火災保険の「施設賠償責任保険特約」「建物管理賠償責任補償特約」など(保険会社により名称が異なる)に加入していないと補償されません。

「施設賠償責任補償特約」、「建物管理賠償責任補償特約」とは、マンション共用部分の施設の瑕疵に起因する偶然な事故やマンション共用部分の賃貸または管理およびこれに付随する業務上の過失によって生じた起因する偶然な事故により、他人の身体に障害を与えたり、他人の財物を損壊したりしたことにより法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われる特約です。

この保険に入っていたら絶対安心というわけでもありません。

1事故あたりの補償額には限度があります。それでも賃貸物件のオーナーは、できるだけ限度額一杯でつけておいたほうが良いでしょう。

土砂崩落の規模としては、アパート・マンションなどの法面や擁壁もさることながら、太陽光発電施設も気になります。

山間部をドライブしていると、山の急斜面で樹木を伐採した後に太陽光発電施設を設置されている場所を見かけます。経済産業省によると、実際に崩落などの事故は起きており、小規模な事故も含めると17年度以降の5年間で450件あったそうです。

太陽光発電でも施設賠償責任保険はあります。どこまで第三者に対する損害賠償責任がカバーできるか、今一度確認し、リスクが高い立地なら、保険の内容を見直したほうが良いでしょう。

逗子の斜面崩落では、国土交通省が事故後に現地を調査し、崩落の原因を「乾湿や低温による斜面の風化」と指摘していますので、水災・地震にも該当せず、建物の損害すら火災保険で補償されません。

保険は最後の拠り所であり、大家は常日頃自ら、そして管理会社と連携して物件の保全に努めなければなりません。

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

岡元公夫さん

岡元公夫さんおかもときみお

亡き父と2代続けての元メガバンカー。
銀行員時代は、東証一部上場の大手不動産会社から個人の大家さんまで、融資主体に幅広く担当。
実家は祖父の代からの小規模ながらの大家さん。

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • □2004年
    実家の跡を継ぎ、東京城北エリアでマンション・アパート・戸建を取得開始。

    □2008年2月
    不動産賃貸業の修行の為、不動産開発・運営会社に転職し、プロパティマネジメントの責任者となる。

    □2009年10月
    不動産収入が年間6千万円ほどになり、デッドクロスもクリアできる目途がついたことから、サラリーマンを卒業。

    □2011年
    東京エステートバンク株式会社(東京房屋®)を設立。国内・台湾・中国の投資家・会社経営者の方にコンサルティングを行っている。
不動産投資歴
  • □築44年RCマンション
    1LDK×4戸、2K×8戸

    □築28年RCマンション
    1R×10戸

    □築21年鉄骨マンション
    2LDK×6戸、2DK×6戸

    □築14年木造アパート
    1R×5戸、2DK×2戸

    □登記上築60年 木造戸建(実態は新築同様)
    2LDK×1戸

    □木造戸建てリノベシェアハウス
    2棟×10室

    □区分所有マンション
    2LDK×1戸

    □駐車場12台
    バイクガレージ26台

    □再開発予定木造戸建
    3棟
保有資格

宅地建物取引主任者
ファイナンシャルプランナー
その他生損保等金融関連諸々
税理士試験科目合格
(簿・財・相・固)

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