今回の大家列伝は、九州地方で大家業を営むガングロ大家さんにご登場いただきます。5代続く家業で働く中で不動産ビジネスに出会い、ご自身でも物件を買いながら、資産を守るために奮闘されています。お嬢様として育ちながらも、ホストにはまり水商売を経験するなど、波乱万丈な人生を送るガングロ大家さんの大家列伝、前後編でお届けします。
■ 老舗企業の社長令嬢として育つ
華子
自己紹介をお願いします。
ガングロ大家さん
福岡と熊本で不動産業をやっている、ガングロ大家と申します。私は元々ギャルで、Twitterのアイコンにしているようなガングロギャルに憧れているということもあり、ガングロ大家と名乗っています。
( Twitterアイコン )
保有物件は一棟マンション5棟、貸地3箇所、事業用物件が3つで、この中には祖父から父、父から私へと引き継がれた物件も含まれます。家賃年収は約1.2億円で返済比率は56%です。宅建業者でもあるので、この他に売買での売り上げあります。
大学を卒業してから5代続く家業の会社で働いていましたが、途中で社内にできた不動産部門に移りました。その後、自分でも不動産投資を始めて、2021年に家業の不動産部門を引き継ぐ形で独立しました。今は夫と二人で自由に働いており、いわゆるFIREのような状態です。
華子
5代続く家業ということは、裕福な家庭の出身なのでしょうか?
ガングロ大家さん
熊本の老舗企業の社長令嬢( 次女 )として産まれたのでそのはずですが、両親が厳しく、高校生まで1日50円のお小遣い生活をしていた為、お金に執着する人間になってしまいました。大学生の時に「 無料でお酒が飲み放題で、お金ももらえる 」という理由で、福岡の中州でキャバクラのアルバイトを始めたくらいです。
大学卒業後は、父親の会社に経理として入社しました。不動産業ではなく、製造業です。70代のおばあちゃん社員の後釜として配属されたのですが、その人がなぜか全然辞めない上に仕事も振ってくれなかったので、出社しても毎日、暇でつらかったです。
そんな折、先に入社していたお姉ちゃんが不動産部門を立ち上げたので、暇つぶしでそちらの仕事にも携わるようになりました。お姉ちゃんが持ち前のコミュニケーション能力で、不動産オーナーさんから管理契約を取ってきたので、賃貸管理を手伝ったのが不動産との関わりのスタートでした。
華子
最初は経理として、キャリアをスタートさせたのですね。社会人生活は順調でしたか?
ガングロ大家さん
全然です。大学生の頃はキャバクラのバイトで平均月収40万円程稼いでいましたが、入社してからは月収14万円になって、カツカツでした。それなのに夜はお酒を飲みに出かけていたら、キャッチのホストに引っかかり、色恋営業を仕掛けられて見事にハマってしまいました(笑)。
お嬢様として育てられた歪みか、「 一度、どん底まで落ちてみたい 」という願望があったんです。それを叶えてくれるいい人を見つけた!と思いました(笑)。ホストに通うために夜の仕事も復活しましたが、彼が夜職の人間が嫌いで私に対して罵声を浴びせたり、殴ってきたり、夜中に呼び出してきたりと、豹変してしまいました。
華子
そんなご苦労が。。。
ガングロ大家さん
ある時、「 オレ、No.1になりたいから、100万円のシャンパンタワーいれてくれよな。No.1になれたら、ホストを辞めて真面目に働くから 」とお願いされ、これは人助けだ!と意気込み、アコムとアイフルから50万円ずつお金を借りてシャンパンタワーを注文しました。
シャンパンタワーは大量のグラスにお酒を注いだ後、店の人たちに一杯ずつ配るのですが、それでも余るので結局、最後は処分することになります。私はお酒が好きなので、その光景を見て「 うわ、お酒がもったいない…。私、一体何をやっているのだろう 」と虚しくなってしまいました。
華子
なかなか強烈なエピソードですね(笑)。
ガングロ大家さん
それで目が覚めたというか、もうこの人とは関わらないと決心して、ホスト沼から抜け出すことができました。ただ、借金の100万円を返済するために、しばらく夜の商売は続けざるを得ませんでした。
■ 紆余曲折を経て、出会った人がその後の人生に影響を与える
華子
その後はどんな形で不動産賃貸業の世界に入っていったのですか?
ガングロ大家さん
店のお客さんで、バブル期に2億円稼いでそのお金で福岡に区分マンションを6戸買ったエイちゃんという人がいました。私は夜の仕事のお客さんに、「 昼は不動産の仕事をしている 」と話していたんですが、そのうちエイちゃんの物件も管理するようになり、一部売却もしたいということだったので、そのお手伝いもしました。
エイちゃんは、「 これから福岡の不動産は値上がりするぞ~ 」と言っていましたが、私は親からバブル崩壊の話を聞いたり、リーマンショックの影響で家賃と入居率の下落を目の当たりにしたりしていたので、本当か?とにわかに信じられずにいました。
別の日には、「 不動産はな、借金するだけで買えて、毎月家賃も入ってくるんだぞ~。お前でも買えるぞ 」と教えてくれました。ある時、エイちゃんに次の物件候補として福岡や熊本の物件を紹介したところ、「 熊本の物件なんか買わねえよ~ 」と言われてしまいました。
そこで父と同僚に相談したところ、「 その物件、自分で買えば?」とアドバイスされたので思い切って購入することにしました。オーナーチェンジ物件だったのですが、保有期間中は一度も入退去がなく、エイちゃんが言っていた通り、借金するだけでお金が入ってきました。この物件で成功体験を掴み、不動産賃貸業をスタートさせました。
所有物件の一つ
華子
借金返済をする為に始めた夜のお仕事のおかげで巡り合えたご縁というわけですね。その後、ガングロ大家さんの不動産活動に影響を与えた人とは出会いましたか?
ガングロ大家さん
たくさんいますが、その中でも特徴的な人をご紹介しますね(笑)。やはり、ブローカーのTですかね。この人とは昼の仕事で知り合いました。管理物件の入居者だったのですが、頻繁に滞納する人で、支払いの為によく事務所に来ていたんです。
いつの間にか仲良くなり、彼も不動産の仕事をしていると言っていたので、「 いい物件を紹介して 」とお願いしたところ、実際に幾つか紹介してくれました。「 物件を紹介したんだから、オレの家賃は払っておいて 」と言われ、その通りにしていました(笑)。どう考えても、家賃より仲介手数料の方が高いので、私の方が得していたと思います(笑)
華子
入居者の家賃を払う管理担当の人に、初めて出会いました(笑)。
ガングロ大家さん
Tとの取引で上手くいったのは2件くらいでした。でも彼のおかげで不動産投資は不動産ビジネスの中でも、比較的スムーズに利益を出しやすいと理解できましたし、不動産のイロハも学べたので結果的にはよかったと思います(笑)。
詳細については割愛しますが、その後も成り上がり系不動産大家の息子さんとお付き合いをしたことで、地主じゃなくても大家になれることを学びましたし、熊本の有名ハウスメーカーの跡取りとお付き合いした時は、不動産売買のことを詳しく教えてもらえました。
皆さんには感謝しかありません。人生において、無駄なことは一切ないですよね。
■ 地主、最高!?
華子
ガングロ大家さんが不動産投資を始めた時の目標はありましたか?
ガングロ大家さん
最初は区分マンションを買ったんですが、購入した時は28歳で独身だったので、将来の不安の解消や貯蓄が目的でした。それと、すでにお話ししたとおり、親が経営する会社の不動産業部門で働いていたので、自分が大家になれば、本業にも役立つだろうと思いました。
華子
ご自身の不動産投資の特徴はどのようなものですか?
ガングロ大家さん
値上がりが期待できるエリアに物件を購入して、最後は売却してキャピタルを得る事だと思います。もちろん、すべて売却するわけではありません。初代から引き継いだ不動産もあって、そういう物件は保有前提です。ちなみに、引き継いだ物件は借金が無いのでキャッシュフローマシーンと化しています。
実は以前は現金を大量に投入して、博多区等の立地が良い場所の物件ばかりを購入していました。でも、セミナーに出たり、周りの大家さんの話を聞いたりしているうちに、現金を大量投入する方法はちょっと違うなと気づいたんです。
今はその頃に買った物件は売却して、自己資金を抑えながら地価の上昇が見込めるエリアで物件を買っています。ここまで言っておいて矛盾するようですが、私の不動産投資はキャッシュフロー重視でも、キャピタルゲイン目的でもなく、ベースにあるのは引き継いだ資産を保有していくことです。
華子
会社では買取再販などもされているそうですね。
ガングロ大家さん
はい、でもそれはメインではないんですよ。以前は家業である製造業と不動産業を並行してやっていましたが、2021年から家業の方は叔父に全て託しました。それ以来、私と旦那は不動産だけで生活しているんですが、実はその会社で母とおばあちゃんも雇っているので、賃料収入だけでは全員を養えなくて、売買もやっているという感じです。
華子
短期での売却前提で購入するケースも多いのでしょうか?
ガングロ大家さん
自分が買った物件にはあまり愛着がないので、すぐに手放してもいいかなというスタンスです。私は物件を購入したら、「 この値段じゃ売れないだろ 」という値付けをして、売れたらラッキーくらいの感覚で市場に出しちゃうんですが、それが案外、売れていきます。
ただ、全部じゃありません。先ほども言いましたが、親から受け継いだ資産は残しています。それを減らさない為に、私が事業をやっているという感じです。資産を食いつぶさないようにして、更に次の世代に引き継がせていきたいと思っています。
華子
引き継がれた物件はどんなものが多いのでしょうか?
ガングロ大家さん
最初におじいちゃんが不動産業を始めたのですが、どれも立地が最高です。例えば、ある物件では資産価値が購入時の100倍以上になったりしています。周りに畑しかないような場所で、やっと道路が通った段階で土地を買い、マンションを建てていました。
そのうちの一つは熊本地震の時に倒壊してしまい、その後の対応に苦労しました。現在、建物は解体して土地として貸していますが、建物があった時と同じくらいの賃料を得ているので、やはり立地は重要だと思います。
( 熊本地震で被害に遭った物件の様子 )
華子
土地代だけでそんなにいただけることがあるんですね。
ガングロ大家さん
建物がない方が、維持管理に費用が掛からないので楽です。「 地主最高!」という感じですね(笑)。私は子供が3人いるんですが、子どもたちに残すのであれば、ロードサイト物件の土地や街中の駐車場みたいな持っていて手がかからないところがいいと思っています。
ただ、ロードサイド物件は賃料が大きい分、借主が撤退してしまった際のリスクがあるので、こういった物件の他にもちょこちょこ小さい物件を買ったりしていかないと、安定的に続けていくのは難しいですね。
編集後記
社長令嬢として育つも、「 どん底まで落ちてみたい 」という願望を持ち、様々な経験をされているガングロ大家さんのエピソード、興味深いですね。コラムには書ききれない逸話もありますので、是非、ご本人に直接聞いてみてください(笑)。続きの後編は明日の16時公開予定です。