みなさん確定申告が終わってホッとしているところかと思います。
確定申告が終わったら絶対にやって欲しいこと。
それはキャッシュフロー計算です。
確定申告は税金計算だけで終わらせないようにしてください。
確定申告は利益の計算です。
キャッシュフロー計算とは違うのです。
1.確定申告から簡単にできるキャッシュフロー計算
そもそも、確定申告での所得とキャッシュフローでは数字が異なります。
確定申告の所得とは、賃貸経営をしたことによる儲けです。
これを不動産所得として計算していきます。
儲けですので、いくら売り上げたかという収入金額から、その売り上げを得るためにかかった費用(必要経費)を控除したものになります。
しかし、キャッシュフローは、実際の収支です。
いくら収入が入ってきて、いくら支出したかで計算をします。
不動産取得の収入金額・必要経費とキャッシュフローの収入・支出にはズレが生じているのです。
賃貸経営の場合、必ず生じるズレがあります。
◯減価償却費
減価償却とは、10万円以上の資産について、法定耐用年数で分割して経費にする制度です。
減価償却費は、減価償却資産(建物など)の購入時にはお金が出ていきますが、それ以後お金は出ていきません。
しかし、不動産所得の計算では、毎年減価償却として経費に計上される金額が出てきます。
◯元本返済額
借入金の元本返済額は、必要経費にはなりません。
あくまでも借りたお金を返しているだけです。借入金の利息は、必要経費になります。
不動産所得の計算では、借入金の元本返済金額は出てこないのです。
◯所得税(復興所得税)・住民税
確定申告で計算された所得税(復興所得税)と、確定申告を基に市役所で計算される住民税は、大きな支出です。
しかし、経費になりませんので、不動産所得の計算では出てきません。
この3つのズレを解消すれば、確定申告から簡便的にキャッシュフローが計算されるのです。
キャッシュフロー
=(青色控除前)所得 + 減価償却費- 借入金の元本返済 -税金(所得税・住民税)
2.キャッシュフローが悪い原因を3つのズレから検証する
この3つのズレがわかると、なぜキャッシュフローが悪いかの原因がわかります。
そして、それは購入時に決まってしまっていることが多いのです。
大家さんの確定申告を見てみると、次の3つの原因で資金繰りに窮している方をよく見ます。
(1)減価償却の計上方法
新築で建築した場合などに、建築費を全て建物として計上していることがあります。
実際には、建物本体、附属設備、構築物に区分できることがあります。
この区分をすることで減価償却費が計上される金額が異なります。
例えば、RCマンションの場合、建物本体は47年で償却。附属設備や構築物は15年で償却することになります。
償却期間が短い方が1年あたりの減価償却の金額が大きくなるのです。
■1億円の建築費を全て建物にした場合と、7,000万円の建物と3,000万円の附属設備に区分した場合の年間の減価償却費の比較(単位:円)
区分されていないまま何年も確定申告されている方をよく見ます。
(2)借り入れの返済方法
借り入れを早く返済したいという思いからか、短い返済期間になっていることがあります。
下記の表を見てください。
■借入金2億円の返済条件を金利1.5%、2%と返済期間25年、30年で組み合わせた場合の月々の返済額の比較(単位:円)
期間が5年異なるだけで月々の返済額が大きく異なります。
金利の差は月々の返済額からすると大きな差にはならないことがわかります。
また、返済方法を元金均等返済にしている場合にも資金繰りに大きく影響します。
元金均等返済とは、元金の返済額を一定額にする返済方法です。利息は元金の残高に応じて課されていくことになります。
当初の元金の残高が多いときは、利息も大きいですが、返済が進み元本の残高が少なくなれば、利息も小さくなります。
元金と利息の合計を一定額にする元利均等返済と比べると、支払う利息の総額は、元金均等返済の方が少なくなるメリットがあります。
さらに、年々返済額が減っていくため、将来に向けて経営が楽になります。
しかし、無理して元金均等返済にしてキャッシュフローが回らなくなっている方もいらっしゃいます。
■借入金2億円の返済条件(返済期間30年、金利2%)を元利均等返済にした場合と元金均等返済にした場合の月々の返済額と返済総額の比較(単位:円)
返済方法はキャッシュフローとのバランスを見て決める必要があるのです。
(3)不動産所得に係る税金
所得税は、超過累進税率という仕組みになっています。
超過累進税率とは、所得が大きくなれば大きくなるほど、高い税率で課税される制度です。
ただし、全体に対して、高い税率が課税されるということではなく、一定の金額を超えると、超えた部分にだけ高い税率がかかるというものになります。
給与所得や雑所得(年金所得)などと合算されて税率が決まることになります。
年収が高いサラリーマンが不動産所得があると、高い税率で課税されることになるのです。
■不動産所得が100万円出た場合。年収600万円の方と年収1,200万円の方の税金(所得税・住民税・復興所得税の合計)の比較(所得控除150万円で計算。単位:円)
購入当初は不動産所得が赤字になり、税金が還付されていたものが、年数を経過することで黒字になり高い税率で課税されることになることがあります。
購入当初から法人でやるべきか、先々まで考えて検討した方がよいでしょう。
3.まとめ
今回紹介したキャッシュフローが悪くなる原因は、いずれも当初どのように購入し、どのように確定申告を作成するかによって決まってしまうものです。
購入時が一番大事なのです。後から、「失敗した」とならないように気をつけましょう。
私のYoutubeチャンネル「大家さんの知恵袋」でも、確定申告後にやるべきこと、について動画で解説していますので、こちらもあわせてご覧ください。
https://youtu.be/UmhcjbHkL3g
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