薄給で長時間労働、パワハラ・モラハラなんでもござれの劣悪な労働環境の会社、いわゆるブラック企業。最近ではずいぶんと減ってきたかもしれないが、かつては社会問題になるほど横行していたし、現在不動産投資で成功を収めている先人たちでも、かつてはブラック労働に身をやつし、そこから這い上がってきた人というのは多い。
今回紹介する元転勤リーマン大家ユキさん(以下、ユキさん)も、そのうちの1人。福岡県在住の49歳で、転勤を機に自宅を賃貸に出したことから不動産投資をスタートさせ、3年前に勤め人卒業を果たした。
新築アパートをメインに中古アパート、戸建や区分マンションなど6棟計28室を所有するほか、太陽光発電投資も行っており、年間の売上は約2,300万円。
融資を積極活用するスタイルで、これまでに約3億円の借入を行い、返済や経費を引いた最終的な手残りは月に50万円ほどだという。また、中古車買取業を営むビジネスオーナーでもある。
ユキさんは、その名のとおり元サラリーマンであり、大学卒業後に入社した企業で法人相手のルート営業職に就き、そこから23年もの間ブラック労働に身を投じてきた。
そのブラックぶりは苛烈で、 3連休が1年に1回取れるか取れないかというレベルの超長時間労働。それが収入に適正に反映されていればまだ救いもあっただろうが、残業代や手当は当然のように不支給で、おまけに基本給まで安かったという。
考える間も休む間もなく働かされ、わずかな連休での旅行だけが唯一の楽しみという生活を送ってきた。
30歳で手にした「金持ち父さん貧乏父さん」
不動産投資ではなく株の道へ
「せめてもっと収入があればいいのになあ、と思っていた30歳の頃、1冊の本と出会いました。かの有名な『金持ち父さん貧乏父さん』です。この本がきっかけで不動産投資の道へ、という流れがコラムやインタビューでの定番だと思いますが、僕にとってはまったくそうならず(笑)。マイホームさえ持てるか怪しい自分には関係のない話だと思って、むしろ株の話に食いつきました」
少ない元手で株取引を始めると、あっという間に30万円儲かった。これはいけると味を占めて信用取引にも手を出したが、そううまくはいかず。ずるずると続けているうちに、儲けるどころか、累計300万円もの損失を計上していた。
「お金も時間も余裕もなく、欲に目がくらんで、震災の時に株市場の混乱に乗じて儲けようとして逆にお金を失ったこともありました。思い返すと最低で、完全にバチが当たったという感じでした。
それからしばらくは、投資と距離を置きつつ地道に仕事に取り組み、資格取得に励む日々が続いた。結婚し、子どもが生まれ、住宅ローンを組んで中古のマイホームも購入した。
転勤がきっかけで不動産投資をスタート
ヤドカリ投資でステップアップ
転機が訪れたのは2016年。自宅取得から約4年後、転勤の話が舞い込んできたことに始まる。
「転勤族の友人が自宅を買った直後なのに転勤で遠方に飛ばされて、仕方なく賃貸に出したところ、高値で入居がつき利益が出ているという話を聞いて、すごく興味を持っていたんです。
福岡市内の人気校区内に買った割安な戸建だったので、購入時の仲介担当者から返済が終わったら賃貸に出して住み替えても良いんじゃないか、というアドバイスをもらっていたこともあり、転勤の話が出た時は進んで受け入れました」
1,500万円で購入した当時築35年の中古戸建ではあるが、好立地かつ水回り等が刷新されており状態も良く、簡易なリフォームのみで家賃10.8万円で貸し出すことになり、自身は家族と共に大阪府へと移った。
大阪ではしばらく社宅に住んだのちに、2軒目となる自宅を購入。こちらも立地と水回りの綺麗さにこだわって物件を探し、快速停車駅徒歩6分の場所に築25年の戸建を2,200万円(リフォーム費込み)で購入した。
「1軒目の地銀での住宅ローンの金利が高かったので、2軒目ではネット銀行をあたりました。2本目の住宅ローンということでオンライン経由の申込ではあっさり却下されましたが、電話で問い合わせて粘り強く交渉した結果、0.53%という好条件で融資を獲得することができました」
新たな自宅を購入し転居したのも束の間、再び福岡への転勤を命じられ、またしても自宅を賃貸に出すことに。家賃月額13万円(当初は13.8万円)に対して返済が5.2万円、ほかに管理費、固定資産税や火災保険料が年間15万円ほど掛かるものの、手堅く利益を生み出すことができているそうだ。
「約2年ぶりに福岡にUターンし、ここでまさかの3本目、今度は新築戸建の住宅ローンにチャレンジしました。銀行に相談してみるとさすがに話にならないと一蹴されましたが、規格モノを得意とする地元ハウスメーカーの営業担当の頑張りで、フラット35でのローンが通りました。信じられない、奇跡だ、と営業所内でも話題になったそうです(笑)」
完成後ほどなくして、子どもの教育上の理由から転居が望ましい状況が発生。きちんと事情を報告した上で、三度賃貸に出すこととなった。
こちらは2世帯住宅として建築したので、界壁を設けた上で現在は家賃13万円×2世帯のアパートとして運用している。別途ソーラーローンも組み込んでおり、太陽光の売電も含めると約6%の利回りとのこと。
「利回りは低いですが、資産性があり、金利も住宅ローン基準で安いので納得しています。界壁をあらかじめ作っていなくて余計な工事費が100万円以上かかったり駐車場が想定の台数作れなくて月極駐車場の確保に走り回ったりと、失敗もとい、学びの多い物件でもありました」
なおユキさん一家の現在の住まいはといえば、自身の法人で社宅として契約した築古マンションだそう。マイホームをいくつも買った末に賃貸住まいでは家族からの不満が出ないか気になるところだが、そこはきちんと話し合い、価値観のすり合わせができているので問題ないとのことだ。
「住宅ローンの不正利用が問題視され、厳しい処分が下された事例も聞こえてきます。もちろん不正はNGですが、転勤や教育上の都合などまっとうな理由があれば賃貸に出すこと自体は問題になりません。
さすがに住宅ローン3本は難しいかもしれませんが、2本なら今の時代でも可能だと思いますし、自分がこれから不動産投資を始めるとしても、まずはここから始めるだろうと思います」
明日の後編では、1棟アパート投資にシフトしてFIREを達成した話、FIRE後のライフスタイルや新ビジネスの話、そして一部で話題になった「健美家”大家列伝風”自伝ブログ」の話などを紹介する。
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健美家編集部(協力:
(たまあらい))