メーカー勤務の30代ビジネスパーソン、サタさんの投資手法を紹介する。
今でこそアパート2棟と一戸建てを3棟所有し、家賃年収も総額1000万円目前になったサタさんだが、そこに至るまで数々の失敗も経験している。
会社勤めをしながら、不動産投資を始めたい人のお手本にぴったりの投資家なので、ぜひ最後までお読みいただきたい。
サタさんは東海地方から上京し、月10万円の奨学金を使いながら大学生活を送っていた。卒業後にメーカーに入社。同時に月々2万4000円の奨学金の返済がスタートした。
メーカーは福利厚生が充実し、給与も安定しているものの、急激な昇給は見込めない。若手時代のサタさんにとって、奨学金の返済の負担は大きく、貯蓄や投資と縁がない生活を送っていた。
転機が訪れたのは30歳になったころ。とにかく上司と反りが合わなかったという。
「会社を本気で辞めたいと思いました。けれど良い環境に転職する自信も、貯金もなかったのです」とサタさんは振り返る。環境を変える準備をするために、まずは節約を始めた。
タバコを辞めて、自炊を心がけ、家賃を3万円節約できるところに引っ越した。少しずつ昇給することもでき、手元にお金が残るように。
最初の種銭で挑戦したのは、株のデイトレだった。ところが「全く勉強せずに100万円でスタートし、すぐに20万円溶かしました」というありがちな失敗をしてしまう。
その後、爆発的な値上がりが期待される仮想通貨を謳うネットワークビジネスにも引っかかってしまう。幸いにも投資金額が50万円であり、月々の配当を現金化していたため、大きな被害は被らなかった。まわりには、再投資を重ねて500万円以上の損をした人もいたという。
一方で別口座で買っていた仮想通貨は大きく値上がりし、数百万円の利確ができた。ところが、Coincheck事件(2018年国内大手取引所のCoincheckから顧客資産が大量に流失してしまった事件)によって仮想通貨が暴落。含み益を減らしたものの、損切りが早かったため利益を残すことができた。
金融商品に関しては、ドルコスト平均(価格が変動する商品に対して「常に一定金額を、定期的」に購入する方法)でインデックスファンド(市場全体の動きを表す代表的な指数に連動した成果を目指す投資信託)を積み立てることとし、必要に応じて引き出すようにした。
こうした経験を踏まえて出会ったのが不動産投資だった。「音声メディアVoicyで、投資家の加藤ひろゆきさんや、サウザーさんの話を聞き、不動産投資に興味を持ちました。ただ、ボロ戸建を自分でリフォームして高利回りに変えるという手法は、会社勤めをしている自分には難しいと思ったんです」
自宅のある都内で投資するとなると、ワンルームという選択肢もあるが、それもピンとこなかったという。
物件価格とリフォームコストを抑えられる手法を考えた末、たどり着いたのが、平成築で大幅な修繕が必要ない戸建を現金で購入し、築古戸建より高い家賃で貸す手法である。
サタさんは仕事柄、埼玉県熊谷市エリアの土地勘があり、生活事情を知っていたため、JR高崎線の某駅近くで見つけた4LDK駐車場付き2階建て戸建を480万円で購入。リフォーム費用は40万円程度だった。それを月6万8000円で賃貸している。
「全国地価マップで土地値を調べたりして、もし失敗して売ることになっても400万円で売れると思ったので踏み出せました」とサタさんは振り返る。なお物件の探し方は、SUUMOやat homeを毎晩見て探すという一般的な手法だった。
2号物件は、東京都下の3000万円の2LDKメゾネット3部屋のアパートを満室状態で購入。1号物件の営業マンの紹介だった。初めて融資を使った物件である。
当時は某地方銀行が融資に積極的だった。年利2%台で期間は32年あるため、返済のプレッシャーもあまりなかったという。
「土地値で2500万円くらい見込めますし、賃貸需要もあるエリアなので、もし失敗しても許容できると思いました」。
勢いに乗ったサタさんは、川崎市内でも業者の紹介で一棟アパートを約3000万円で購入。1Kとファミリー向けの間取りがあり、1K部分の出入りがあるのが悩みだが、毎月の手残りは14万円。こちらも稼いでくれている。
直近では、平成築の戸建を松戸市1200万円と千葉市1600万円で購入している。どちらも3LDK90平米程度で、駐車場付き。戸建投資にしては価格帯が高い気がするが、これには理由がある。
「手軽な物件は競争相手が多いので、あえて平成築の物件を選びました。購入価格は高いですが、修繕費があまりかかりませんし、入居後のトラブルも少ないです」
家賃は松戸が10.5万円、千葉が13万円。自主管理で運営している。
2020年から不動産投資をスタートし、2023年6月現在、サタさんの家賃年収は1000万円弱あり、生活していく上で十分足りるだけの手残りもある。FIREは考えていないが、会社に依存しない人生が近づいてきている。
サタさんのように忙しいサラリーマンは、手間がかからない新しめの物件を狙う作戦が合うかもしれない。ただし、土地に価値があるなど、手放すことになっても損失を最小限に抑えられる物件が望ましい。
最後に、4年前のサタさんのように、これから不動産投資を始めるサラリーマンに向けてアドバイスをいただいた。
「不動産投資はリスクをコントロールしやすいと思います。客付けが上手く行かなかったら家賃を下げられますし、最悪の場合は損切りすることができます。リスクを最小限にできるのでいきなり退場にはなりません。
ただし、リスクをコントロールするための知識や経験は必要。徹底的に不動産にコミットする時間が必要だと思います。そうすれば自分にあったやり方が、きっと見つかるはずです」
株式投資や仮想通貨で苦い経験を積んだ後、不動産投資に辿りついたサタさんの言葉だからこそ説得力がある。
健美家編集部(協力:
(とやまたけし))