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投資用マンション、建替えでキャピタルゲイン狙いは可能?築古物件の賢明な出口を考える

不動産投資全般/区分マンション建替え ニュース

2023/11/20 配信

築古物件を所有している人にとってはこの先をどうするかは今後の大きな課題。区分所有物件を持っている場合には建替え、更地にしての売却などマンションの終活にどう対処するかが気になるだろうし、1棟所有している場合には建替え、更地売却などの出口に向けてどう退去してもらうかが問題だろう。

どのように取り組めばよいか、建替え問題を含め、高経年マンションに詳しい旭化成建替え研究所の特任研究員である大木佑悟氏に聞いた。

写真イメージ
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建替え狙い購入の成否

世の中には建替えは儲かるという都市伝説をいまだに信じている人が少なくないようだが、それは株で儲けるよりはるかに難しいと大木氏。

「かつては建築工事費が安く、都心でも面積に余剰があり、建替えると従前より大きな建物になるという物件が少なくありませんでした。その場合であれば中古価格よりも建替えを前提とした評価額が高くなるので、建替えたら高くなるから持っておこうという考えもあり得ました。

ただ、その場合も建替えて価格がよほどアップするのでなければ建て替え期間中は家賃が入らなくなりますから、そこに大きなマイナスが生じます。入居者がいた場合にはその人に退去してもらわなくてはいけないので、そこで費用が発生する可能性もある。

そのため、投資家としては建替え後を期待するよりも建替え前に売却してしまおうという考え方をする人が多いのが現実です。一方で旭化成で建替えした宮益坂ビルディングのように今後、二度と物件が出ないような立地なら建替えで2年間家賃が入らなくても所有し続けておこうという人もいらっしゃいます。

ですが、新宿、渋谷あたりでも周囲にマンションがたくさんあるような場所なら、それほど大きく価値が上昇することは考えにくい。だったら、建替えを機に売ってしまおうと思うわけです。

ただ、建替え予定の築古物件を購入、建替え後の評価額が高くなったところでそれをタイミング良く売却することで多額の収益を上げている例があり、だったら建替え予定の築古を買おうと追随する人もいらっしゃるようです」。

市場価格より建替え前提の評価額が安い現状

だが、建替えが予定している物件がすべて高値になるわけではない。逆に今は現在の価格より、建替えを前提とした評価額のほうが安いのが実態だ。

「建替えを前提とした評価額は建替えた場合にどのくらいの建物が建設できるか、それを再取得する人がいないとして全部を売却した場合にいくらで売れるかを算出。そこから総事業費を引きます。総事業費には建築費、土地の整備費(解体費用など)、設計費、営業経費その他がありますが、現在はそのうちの建築費が爆上がりしている状況です。

その引き算をして残った額を戸数で按分したものが建替えを前提とした評価額になるのですが、新築だけでなく、中古物件価格も上がっているので、現在ではほとんどの物件が中古価格のほうが建替えを前提とした評価よりも高くなるという計算になっています。

となると、建替えに加わらず、売却したほうがお得ということになります。今は100%還元、つまり持ち出しをせずに建替えという例はほぼありませんから、出資して建替えても今よりも安くなるのだったら売却しようと考えるわけです。

実際、それが理由で建替えの合意形成ができないケースもあります。お金を出して建替えても今よりも評価が下がるなら建替えないほうが良いと判断されるのです。

この20年ほどマンションの建替えに関わっていますが、最初の10軒、20軒の頃から比べると建替え後に従前の所有者が戻ってくる割合が減っています。かつては65%ほどの人が戻ってきていましたが、今は60%ほど。建替えても価値が上がるわけではないので、建替えに費用を出して新しくなった物件に戻るのではなく、建替えを機に売却する人が増えているのです」。

建替えて得する物件の要件

もちろん、建替えて価値が上がる物件もある。ひとつは従前の建物の容積率に余剰があり、建替えて従前よりも大きな建物になるケース。総販売額が増えるので、一戸あたりの価値も上がることになるからだ。

「たとえば港区で建物の規模が従前の3倍になるとかであれば大きな収益が期待できるかもしれません。3倍は無理としても一等地立地で目安としては従前の1.5倍、2倍くらい。

規模の大きな物件の場合、総合設計制度で敷地内に一般に公開された空地を確保するなどした場合に得られる容積率の緩和が最大で1.5倍程度。それ以上に建替え後の建物が大きくなるなら期待できます」。

もうひとつは土地自体の価格が大きく上がっている、上がる可能性が高い場所での建替えである。これも建替え後のマンションの総販売価格を押し上げることになるため、評価が上がることになる。

「これも弊社で建替えをした渋谷の宇田川町住宅は建替え時点と比較すると新築分譲価格は2倍近くにまで上がっていると思います。同じ場所でもその時々の不動産市況次第でしばらく保有した後に売却しても収益を上げることが可能になることもあります」。

ただ、いずれの場合も都心一等地であることが前提。工事費は地域が変わっても変らないが、販売価格は地域で異なる。高く売れるところでなければ収支は合わないのである。

土地価格の上昇、保有年数もポイント

特に従前と今で周辺の状況が変わり、地域の価値が大きく上昇しているケースでは収益が見込める。好例が浜松町での敷地売却だ。これは1973年築の地上9階建て、総戸数154戸の物件を2020年に敷地として売却したもので、そこに地上18階建て、102戸の分譲マンションが建てられる。

従前建物が建てられた当時の当該地周辺は倉庫街で、交通利便性は高いものの閑散とした土地だったはず。しかも、12㎡ほどのコンパクトな住宅だったことを考えると、購入額は今に比べ、はるかに安価だっただろう。

それが周囲の変化で人気エリアに変化。となればその差益はかなり大きくなったのではなかろうか。

「投資目的で販売された物件の場合、最初から容積率一杯に建てられていることが多く、管理組合が機能していない上に管理費、修繕積立金などが安く設定されているので、建替えができるケースはほとんどないと思われます。ですが、この物件では建てられた時期が非常に古かったことなどから更地売却が可能になりました」。

この例では購入したタイミングがポイントでもあったわけである。価格が上がり始めてからの購入では遅いのだ。

「2008年のリーマンショック直後くらいに買ったのなら評価は上がっているはず」と大木氏。10数年前に買ったのであればかなり上がっているわけだ。リーマンショック前の平成不況の最中も購入していればさらに大きく上昇しているだろう。

ここまでお読みいただいてお分かりいただけたと思うが、建替えで価格アップが可能になるケースはないわけではないが、非常に希少である。建替えを期待して所有し続けても、それほど得になるケースはなく、であれば高く売れる時期に売却してしまうほうが賢明かもしれない。

また、建替え狙いで築古を購入しようと考えているなら、もう一度、じっくり考え直したほうが良い。

単に築古で建替えの予定があるだけではなく、建替えた場合にどのくらいの規模の物件になるか、建替え前提での評価がいくらになりそうかを把握するのは当然として、建替えなくてもきちんと収益が取れる、万一建替えが伸びて売却しようと思った時に売れる物件でなければ手を出さないほうが賢明と大木氏。

収益を上げるためにはそれなりに綿密なリサーチが事前に必要なのである。

1棟所有の場合は立ち退きか、放置か

続いては賃貸マンション、賃貸アパートを1棟単位で所有している場合について考えていこう。

「建替え、あるいは更地にして売却などオーナーが自分で計画できるのがメリットですが、問題は現在の入居者。全員一度に出てもらえればベストですが、そうしたラッキーな展開はほぼあり得ません。一般に建替えを検討するような築古物件では長く住み続けている人が多く、そこでの考え方としては2つあります。

ひとつは立ち退きの検討。これについては立ち退き交渉が必要になりますし、費用が発生する可能性も高い。物件と同様に入居者も高齢化している場合には道義的に悩んでしまうこともあるでしょう。

もうひとつは現在の入居者が出ていくまで待つという考え。まだローンが残っている場合には取れない手ですが、すでに借入がなければ税金に充てられる程度の家賃が入るのであればそれでも構わないでしょう。

実際、建物が傷まないように観察しつつも時間をかけて退去を待つ、ある意味放置するというやり方を取る人が一定数いらっしゃいます」。

期間限定で貸すなら定借の理解が必要

そうはいっても空室をそのままにしておくのはもったいない、劣化が促進されると考えるのであれば定期借家契約(以下定借)を利用、ある一定の時期で契約を終わらせることを前提に貸すやり方を考えても良い。

「定借で貸す場合には期間に期限があることから賃料を下げて貸すことになります。また、この契約特有のルールがありますが、それを理解していない不動産会社も少なくないので、注意が必要です」。

一般の賃貸借契約とは異なる書面が必要であることは知られているが、加えて期間満了で契約は終了することを説明する書面、さらにその書面をきちんと説明されたということを証する書面も必要で、それを知らない不動産会社もいるという。

「もうひとつ、多くの不動産会社が知らないのは定借であることの説明は貸主が借主にしなくてはいけないという点です。つまり、不動産会社が貸主に代わって説明する場合には委任状が必要になります。

また、借主が法人である場合には代表取締役が説明を聞く必要がありますが、それは現実的ではなく、こちらも委任状が要ります。このあたりをきちんと知っている不動産会社を組まないと後々、面倒が起きる可能性もあります」。

所有者が意図するところをくみ取り、法を理解してそれに応じた契約書類を用意、契約手続きができる不動産会社でなければうまくいかないわけだ。所有者としても知識が必要になるだろう。

また、定借で期間限定で貸す場合には賃料を下げる以外にも差別化が必要である。何かしら特色のある物件であることをアピール、それで借りてもらうようにするというのだ。

「ひとつ、アイディアとしては福祉的な住宅として貸すという手があります。若年で住宅に困っている人たちを支援している団体などと連携、期間限定で使ってもらうのです。その家賃が入らなければ困るということでないのであれば、社会的に意義のある使い方はあり得ると思います」。

どんな貸し方にするにせよ、大事なことは終わりにする時期をきちんと決めて取り組むこと。あまり短期でも貸しにくいので3年なり、5年と決め、それまでに退去して欲しい方々が出ていなければ、再度仕切り直し、終期を揃えるようにする。

そうでなければいつまでも誰かが残ることになる。その点はきちんと意識しておきたいものだ。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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