こんにちは。
リフォーム屋を経営しているらいおんです。
今回のテーマは、「持ち家派」vs「賃貸派」です。
擦りに擦られたこのテーマ。
最終結論はもう出ていて、ズバリ『人による』というところだと思います。
なので議論する余地はほとんどないのですが、リフォーム屋としての目線をこのコラムに残しておきたくて、今回このテーマにしました。
それに、健美家コラムを昔から読まれているベテラン読者の方には、あまり参考にならないかもしれませんが、近頃は20代の若い方も不動産投資に興味を持ち、健美家コラムを読んでいる方も増えていると聞きましたので。
今回は、よく言われているメリットやデメリットはサラッと紹介するだけにして、リフォーム屋の視点から見たリスクと見落としやすいポイントをご紹介します。
その上で、おそらく「その提案は新しいかもしれない」という、リフォーム屋としての僕なりの最適解を提案したいと思います。
ちなみに賃貸併用住宅ではありませんので、最後まで読んでやって頂けると嬉しいです。
■メリット&デメリットと見落としがちなポイント
まずは、巷でよく言われている持ち家派と賃貸派、それぞれのメリットとデメリットを確認してみましょう。
よく言われる「持ち家」と「賃貸」のメリットとデメリットは、上の表のように裏表のような関係になっています。
「夢のマイホーム」という満足感を重視する場合は、その時点でマイホーム一択になるので、それが正解だと思います。
しかし、今回はリフォーム屋の視点を加えたポイントをお伝えしたく。
■メンテナンス費用(修繕費)を想定していない「持ち家派」のリスク
住宅のチラシや広告で、こんな感じの謳い文句をみたことありませんか?
月々のローン返済額◯万円!今の家賃と比べてください!
「持ち家」vs「賃貸」を、毎月かかるコストで比較するタイプの住宅広告ですね。
ここで多くの人が見落としがちなポイントがあります。
それは「住宅ローンの返済額にメンテナンス費用(修繕費)を加算して考えていますか?」という点です。
家賃に毎月10万円払うなら、月々返済額10万円で返済期間35年の住宅ローンを組めば、今の低金利なら3,800万円くらいのマイホームを手に入れることができます(金利0.475%で試算)。
これだけ聞くと「絶対持ち家の方がいいよね」と思ってしまいますよね。
しかし、当然ですが、住宅というものは時間の経過とともに劣化していきます。
劣化が進んでしまうと、生活に支障が出るような状態になったり、将来的な市場価値も下がったりしてしまいます。
そのため、定期的なメンテナンスを欠かさないことがとても重要です。
まず、家を守る外壁の塗装や屋根のメンテナンスは10年ごとに行った方がいいのですが、1回で約100万円かかります。
次に、内装や水回り設備の一新は15年ぐらいが妥当と言われていますが、これには1回で約300万円くらいかかります。
これらの費用を考えると、35年間で建物の存続のために約1,050万円、月あたりに換算すると大体2.5万円くらいのメンテナンス費用がかかることになります。
本来はこれを新築当初から毎月積み立てておかなければいけないのですが、この費用を考えないままの資金計画で購入してしまうと、必要なタイミングになっても費用が捻出できず、放置してしまうということも珍しくありません。
すると、ようやく住宅ローン返済が終わった頃には、ボロボロで市場価値のない、かわいそうな家が残ってしまうことになります。
そのため、「今の家賃と比較してください」という広告で比較する場合は、月々の返済額だけでなく、将来的なメンテナンス費用を別途計算して上乗せした金額と比較するのがマスト。
特に価値の付きにくい郊外エリアであれば、土地値もなければ建物もボロボロなんて状態だと、かなり負債になりやすいと思いますので、せめて建物だけでもしっかり機能性を保つのが大事だと思っています。
例えば雨漏りをしたり、配管から水漏れしたり、シロアリの被害に遭ったりなど。
そうなると、将来的に売ろうとしても市場価値がなく、売れない・貸せないということもあります。
田舎には、そんな感じで放置されているボロボロな空き家がたくさんあるんです・・・。
■高齢になった時の「賃貸派」のリスク
全体を俯瞰してみると、最近では賃貸派の声が若干増えているように見えるのですが、賃貸派にも1つ見落としがちなポイントがあるのでご紹介します。
それは、老後の住居がなくなってしまうリスクがあるということです。
大家の方ならよくご存知かと思いますが、高齢になると賃貸物件を借りるのが難しくなるのですよね・・・。
非常にシビアな話ですが、大家さんの目線に立って考えると、自分の所有物件に高齢者が住むことをリスクと捉えます。
なぜかというと、入居者の方が自宅で亡くなってしまうと、事故物件になってしまう可能性があるからです。
ちょっと生々しいお話で申し訳ないですが、亡くなってからすぐに遺体が発見されれば問題ありません。
しかし、万が一遺体が発見されるまで時間がかかってしまうと、特殊清掃という特別な清掃が必要になります。
たとえただの病死であっても、特殊清掃が必要になった物件は事故物件というレッテルが貼られてしまうのです。
ここについてもう少し詳しく説明すると、2021年に発表された国土交通省のガイドラインによって、人の死をどこまで告知するかという基準の統一見解が出されました。
賃貸契約の場合事故の発生から3年間の告知義務があり、売買の場合は期限の定めがありません。
参考URL:宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン
今の日本の市場では、事故物件に該当してしまうと、売る時も貸す時も大幅に値下げをせざるを得なくなってしまいます。
そうなると、大家さんにとっては投資した資金の回収が難しくなったり、負債物件になったりしてしまう恐れもあります。
肌感覚では、スムーズに借りられるのは60代くらいが限度で、70代80代になるとリスクがあると判断されて、お断りされるケースもあるようです。
賃貸派はいつでも身軽に引っ越すことができるというメリットがありますが、このようなリスクを考えると、ずっと賃貸物件に住み続けることができるという保証はありません。
将来自分が高齢になった時に、賃貸で住んでいた物件で「この建物は老朽化したので取り壊します。立ち退いてください」と言われてしまうかもしれません。
もしくは、病気で収入が途絶えてしまって、家賃の安いところに引っ越す必要が出てくるかもしれません。
その時に、年齢を理由に入居を断られてしまって借りられる物件がなければ、突然住む家がなくなってしまう可能性もあるんですね・・・。
賃貸派でいることは、そのようなリスクがあるということをお忘れなく・・・。
老人ホームに入ることを想定して費用を貯めておくこともできますが、非常に高額な費用がかかります。
コストの問題で持家派よりも賃貸派になったという場合、蓋を開ければ持家派と比較しても最終的に大差ないなんて事もあるかもです。
■らいおんが考えた「最適解」とは!?
「持ち家派」と「賃貸派」にはそれぞれリスクがありますが、両方のリスクを考慮した上で、僕なりに最適解を見つけました。
ただ、あらかじめご了承いただきたいのですが、これは誰でも簡単に実現できるものではないと思います。
再現性は高くないです。
しかし、それ以外にデメリットが少ないと思います。
僕が思った最適解とは、「別荘を持ちながら自分自身は賃貸に住む」というものです。
これによって、持ち家と賃貸の両方のリスクを打ち消すことができます。
「別荘を持つ」と聞くと、「それもう大富豪の戯れじゃん!」と思う方もいるかもしれませんが、お金が余っている人が自宅の他に別荘を購入するというイメージではありません。
実際には、購入した物件を第三者に貸し出すことで、収益物件にします。
具体的には、戸建てを旅館や宿泊施設、レンタルスペースにすることで、収益を上げることができます。
そして、自分が利用するときはその別荘を手軽に利用することができますし、賃貸に住むことで、家族構成が変化したり、近隣トラブルが起こった時に身軽に引っ越しできるというメリットを得ることもできます。
また、たとえ老後に賃貸物件が借りられなくなって住む場所がなくなったとしても、最終的に自分の別荘に住むことができます。
ここでのポイントは「住居としての賃貸ではない」というところが肝です。
最終的に、自分が住もうとなった時に注意しないといけないのが借地借家法の存在です。
借地借家法は、基本的に借主(入居者)さんが不利益を被ることを避けるために作られています。
賃貸物件を一般的な住宅として貸し出す場合、自分がその物件に住みたいと思ったタイミングで入居者に立ち退いてもらうということができません。
まず、建物が老朽化して耐震性が不足しているというような「正当な事由」が必要になります。その上で、入居者に対する立ち退きの交渉は更新の6ヶ月前からが基本。
入居者の転居先の初期費用に相当するくらいの額の立退料を支払って、退去してもらうことに交渉で同意してもらわないといけません。かなりハードルが高いですよね。
さらに、入居者が高齢の方だったりすると、その方も転居先がなかなか見つからないということも起こり得るわけです。
建物の賃貸人による賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
で、今回の「別荘を持ちながら自分自身は賃貸に住む」というパターンだとそうした問題は発生しないのですな。
自分がその物件に住みたいと思ったときに予約をとらなければ、すぐに引っ越すことができるというわけです。
さらにそこでうまく収益を上げることができれば、老後までのCFも手に入れて豊かになったり、老後のための住まいを別で手に入れたり、または最終的に建物を解体して更地にすることもできます。
まぁただ、ビジネスにおいて収益を上げることは簡単ではありませんし、きちんと稼げるかというのは別のお話です。
その見極めがいわゆる投資ですから、ある程度リスクのある行為です。
最後にここまでこんなこと言っておいてなんですが、僕古民家を買って自邸にしようと思っているので、今回の最適解を有言実行しようとしていないんですけどね!!
なぜかというとその方が楽しそうだからですね。
やっぱり結論は『人それぞれ』という事になりました。