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LPガスの設備費用上乗せ禁止へ。ここまでの経緯と大家業界への影響

岡元公夫さん_画像 岡元公夫さん 第156話 著者のプロフィールを見る

2023/8/3 掲載

 

経済産業省は7月24日の有識者会議で、賃貸住宅向けのLPガスの料金について、ガスの供給とは関係がない給湯器やエアコンなどの設備費用の上乗せを禁止する方針を示しました。

賃貸マンションやアパートなど集合住宅のLPガス料金をめぐっては、ガス会社が、建物内配管・給湯器やコンロなどを無償で設置し、その費用をガス料金に上乗せして入居者から回収する商習慣が以前からありました。

それが最近は、セミナーや書籍等で学んだ新規参入の大家さんや投資用賃貸物件新築業者が、エアコンやモニター付きインターホン・宅配ボックスまで様々な設備を、さも当然のようにLPガス業者に要求するようになりました。

その要求をLPガス業者が受け入れることによって、都市ガスよりも料金が割高になりやすいことなどが問題視されていました。

ニュース動画を見ていると、経済産業省資源エネルギー庁の定光資源・燃料部長が、「昭和の時代から消費者トラブルが顕在化している。LPガスを消費者に信頼されるエネルギーに位置付けることが重要な課題だ」と気合を見せてました。

消費者団体には、「料金が高い」などLPガスの消費者から寄せられた多くの相談事例が持ち込まれているようです。

早ければ、来年の春までに省令を改正し、罰則規定を設ける方向で、2027年度の施行を目指すということです。違反が発覚した場合には基準に適合するよう命令を出し、従わない場合に登録を取り消したり、罰金を科したりするようです。

■禁止にするまでの経緯

もう6年以上前になりますか。2017年3月の第99話「プロパンガス会社から設備支給してもらうと入居募集が不利になる?」で、経済産業省が賃貸借契約時におけるプロパンガス料金の透明化の徹底を求めていることについて書きました。

この時は結局、賃貸集合住宅におけるLPガスの供給については、消費者が入居前にその物件のLPガス料金を知る機会が与えられず、入居後の消費者との供給契約締結時には、事実上、消費者側にLPガス販売事業者を選択することができないため、その販売事業者のLPガス料金を受け入れざるを得ないという取引適正化の課題が残りました。

その是正のため、2021年6月に経済産業省からLPガス販売事業者の団体に、国土交通省から不動産関係団体にそれぞれ協力依頼を出し、関係業界の連携によって、賃貸集合住宅への入居を検討している消費者に、不動産仲介業者からLPガス料金を入居前に提示する取組を進めました。

図にすると下記のようになります。

*資源エネルギー庁ウェブサイトより引用

この時、国土交通省は下記内容の通達を出しています。

『事 務 連 絡』

令 和 3 年 6 月 1 日

賃貸住宅関係団体 御中

「賃貸集合住宅におけるLPガス料金の情報提供のお願い」の周知について

平素より国土交通行政の推進にご尽力いただきありがとうございます。

標記につきまして、資源エネルギー庁においては、「賃貸集合住宅におけるLPガス料金の情報提供のお願い」を作成し、全国のLPガス販売事業者に対して周知を行っているところですが、この度、資源エネルギー庁より国土交通省に対して別添のとおり周知依頼がありました。

つきましては、貴団体の所属会員企業等の皆様におかれましては、借主の利益保護を図る観点から、借主がLPガス料金に関する情報を適切に入手できるよう、管理する賃貸型集合住宅について、LPガス事業者から募集物件のLPガス料金が記載された資料(「LPガス料金表」等)について情報提供があった場合には、当該物件の仲介を行う宅地建物取引業者に対し、当該物件のLPガス事業者名、連絡先及びLPガス料金が記載された資料について情報提供を行うよう、丁寧な対応をお願いいたします。』

以 上

事務連絡による、あくまでお願いベースの内容です。これでは徹底されません。

経済産業省としては、国土交通省管轄の不動産業界・大家業界への影響力行使には限度があります。そこで今回、自らが所管するLPガス販売事業者への指導・監督とあいなりました。

■大家業界への影響

7月24日の報道以降、チャットやオンラインミーティング等で多くの大家さん達とディスカッションしました。投資エリアやポジション・スタンスによって、捉え方は大きく異なりました。

「エアコンなどはともかく、給湯器・コンロは何故駄目なんだ!」との考え方の大家さんもいました。都市ガス物件だと給湯器・コンロはオーナー負担というのが当然なので、エリアによっては、常識も変わるなと実感しました。

やはり、所有している物件のエリアが大きく影響しますね。
エリアは大きく分けると次のようになります。

◎都市ガスエリア:家賃高単価
◎都市ガス・LPガス混在エリア:家賃中単価
◎都市ガスなしエリア:家賃低単価

私の物件は全て東京23区にあります。不動産投資を始めるまで23区内の住居でLPガスを利用している物件があることを知りませんでした。

第99話の最後のほうに書きましたが、私は東京ガス供給エリアでのプロパンガススキーム導入にはテナントリテンションの点からも元々否定的です。

ただ、都市ガスも地域によって料金に差があります。東京・愛知・福岡の都市ガスの料金を、各社のウェブサイトで確認したところ、次のような違いがありました。

一般契約 1か月のガス使用量 20立米まで

東京ガス:基本料金759円 従量料金単価(145.31円/立米)
東邦ガス(愛知):基本料金759円 従量料金単価(208.82円/立米)
西部ガス(福岡):基本料金1,133円 従量料金単価(232.10円/立米)

私は銀行員時代、名古屋に5年間赴任していましたが、その当時の肌感覚は東京ガスの1.5倍でした。

この体験からも言えるのは、元々LPガスだけのエリアや都市ガスを使っていても他都市から上京した時は、独身であまりガスを使用しない場合、ガス代の差をさほど実感しないかもしれません。

反対に東京ガス利用の物件に住んでいた人がプロパンガススキームの物件に引っ越した場合、ガス代が大幅に高くなったと感じるでしょう。

東京ガス供給エリア、更に東京23区内は、家賃単価も比較的高く、総家賃収入に対する設備費の割合も低めなので、設備費用の上乗せが禁止されても、さほど影響はないでしょう。

対して、影響が大きいのが混在エリアや都市ガスなしエリアです。
家賃単価が低い場合、総家賃収入に対する設備費用の割合が高めになります。新築の場合も、中古の場合も建築費や収益への影響は避けられないでしょう。

また最近は入居者募集のポータルサイトによっては、物件の選択肢の一つとして都市ガスかLPガスかを選べるようになっています。

プロパンガススキームが今後の報道により入居者によく知られるようになると、都市ガス・LPガス混在エリアでは設備費用の上乗せをしていない物件までも敬遠されるようになる可能性もあります。

あと気になることは、経済産業省は、LPガスの料金について、ガスの供給とは関係がない設備費用の上乗せを禁止する方向で省令を改正する準備をしていますが、その内容次第では「スマホ実質0円端末」や「消費税還付」のように当初は抜け道があるかもしれません。

今後の動向を注視したいと思います。

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

岡元公夫さん

岡元公夫さんおかもときみお

亡き父と2代続けての元メガバンカー。
銀行員時代は、東証一部上場の大手不動産会社から個人の大家さんまで、融資主体に幅広く担当。
実家は祖父の代からの小規模ながらの大家さん。

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • □2004年
    実家の跡を継ぎ、東京城北エリアでマンション・アパート・戸建を取得開始。

    □2008年2月
    不動産賃貸業の修行の為、不動産開発・運営会社に転職し、プロパティマネジメントの責任者となる。

    □2009年10月
    不動産収入が年間6千万円ほどになり、デッドクロスもクリアできる目途がついたことから、サラリーマンを卒業。

    □2011年
    東京エステートバンク株式会社(東京房屋®)を設立。国内・台湾・中国の投資家・会社経営者の方にコンサルティングを行っている。
不動産投資歴
  • □築44年RCマンション
    1LDK×4戸、2K×8戸

    □築28年RCマンション
    1R×10戸

    □築21年鉄骨マンション
    2LDK×6戸、2DK×6戸

    □築14年木造アパート
    1R×5戸、2DK×2戸

    □登記上築60年 木造戸建(実態は新築同様)
    2LDK×1戸

    □木造戸建てリノベシェアハウス
    2棟×10室

    □区分所有マンション
    2LDK×1戸

    □駐車場12台
    バイクガレージ26台

    □再開発予定木造戸建
    3棟
保有資格

宅地建物取引主任者
ファイナンシャルプランナー
その他生損保等金融関連諸々
税理士試験科目合格
(簿・財・相・固)

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